「エルヴィンよ。」
「なんだリヴァイ。」
「ナマエを俺の班に入れたいんだが。」
「却下だ、職権乱用はいけない。」
「職権乱用じゃない。あいつは最近実力を上げている。妥当だ。」
「ならば言い換えようリヴァイ。公私混同はよくない。」
「チッ、」
人類最強と謳われる我が調査兵団の兵士長が恋に落ちた。それはいい、構わない。むしろ私としては喜ばしい限りだ。守るものがあると人は強くなるだろう。
若干潔癖症をこじらせているがリヴァイとて人間である。誰かを恋することで心が豊かになり、兵士長ではなく一人の男として相手を慈しむ気持ちを持てば一回りも二回りも大きくなる。
だからぜひとも応援もしたかったし、お膳立てだとてしてやるつもりでいたのだが…。
「エルヴィンよ、あいつの部屋の鍵を寄越せ。ちょっと今夜あたり夜這いをかけてくる。」
「ちょっと買い物に行ってくるみたいに言うんじゃないリヴァイ。それと相手の合意が無ければそれは犯罪だ。私は犯罪の片棒を担ぐつもりはない。」
「合意に決まっている。」
「合意じゃないから鍵を掛けられてるんだろう。少し頭を冷やせ。」
「俺は冷静だエルヴィン。股間は滾って仕方ねぇがな。」
何を考えてたかは理解したくないが見知った男の膨らんだ股間を視界に入れる日が来るとは…。
どうしてこうなった。
ハンジが事ある毎に(面白おかしく)報告をしてくるのだが、リヴァイのアプローチの仕方が常軌を逸していて頭が痛い。毎日のつきまといは言わずもがな、結婚誓約書を常に持ち歩き隙あらばサインさせようとする。
他の兵士への牽制のつもりか彼女と語らった男は対人訓練でリヴァイによりボロ雑巾になり果てているようだ。
先日は彼女の私物がリヴァイの執務室にあったそうだ。本人曰わく
「捨ててあったからひろっただけだが。」
そうしれっとした顔でのたまったらしい。
おそらくナマエに「捨てた」つもりはなく「落とした」のではと私はみている。
ちなみにそれはハンカチでハンジに寄ると、リヴァイはハンカチに頬ずりしてたという。(もちろん盗み見たのだろう)
……頭が痛い
人類最強のこの事実を兵士達が知った日には兵団の存続が危ぶまれ…
いや…もう遅いのだ。すでにリヴァイが彼女にプロポーズをしその返事(イエスのみ)を取ろうとつきまといをしていることを。それでもまだ皆がリヴァイに着いてくるのは「人類最強」の呼び名と変態の比率がまだまだ前者に大きく傾いてるからに他ない。
しかし今後この比率が後者に傾けは………調査兵団は終わりだ。
いま、もともと「変人の集まり」とは呼ばれているのだ。多少は…いや、リヴァイのは変人ではなく変態だ、意味合いが違う。
調査兵団が終われば巨人への反撃など絶望的だ。
それだけは何としても回避、阻止しなければいけない!私が今まで何の為、策を巡らせ貴族達に諂い頭の固い上層部に頭を垂れてきたのか。それは全て私の悲願、そして人類の為だ!
その未来の為、リヴァイは不可欠な人間だ。要はリヴァイが変態でなくなればいいのだ。
ならば私の取るべき行動など決まっている。
◆◆◆
「と、言う訳だ。君には我が兵団の為、是非ともリヴァイと夫婦になってもらいたい。」
『いきなり部屋に押しかけて何を言いだすんですかエルヴィン団長!』
上司もおかしくなりました
ハンジさん笑い転げてないでなんとかしてください!!
初出2015.12.09 吾妻