政宗様といっしょ | ナノ




\戦う理由について答えたい/
アニバサ第六話を妄想捏造してます



天下獲りってのは、みんなが恋して喧嘩して、笑って泣いて、楽しく暮らせる、そんな世のためにーー


奥州に現れた前田の傾奇者の科白。奥州の民の為、自分の為に再び魔王に刃を突きつけるべく心を決めた時、あいつの、名前の笑顔が過ぎった。

あいつの笑顔を守りたい。

前田の野郎に乗せられた感は否めねーが魔王を倒すべく尾張を目指す。出陣間際に泣きたいのをこらえながら俺に愛の告白をした名前を抱き締めた。

俺より細く小さく柔らかく
それでいて俺の腕の中で確かに存在。


愛おしい


俺は必ず生きて帰る。
国の為、民の為、何よりこの女の為に
何かを、誰かを守りたいと思う気持ちはどれだけ人を強くするのだろうか。漲る力、張り詰めていく緊張、体の奥底から湧き上がる歓喜。

俺は魔王を倒し天下を取る



尾張を目指す中、設楽原で魔王の義兄弟だという浅井が俺達を阻んだ。
堅苦しいがなかなかの使い手と見えた。

partyの始まりだ。

だが、そこで繰り広げられたのは魔王の盾となった浅井諸共俺達を倒そうとした明智の謀略。

背後から味方で在るはずの明智の軍勢から種子島の一斉掃射に倒れていく浅井の軍勢。

その血風舞う中で命奪われた浅井当主と、それを看取り泣き崩れる魔王の妹がいた。


「愛し合う者たちの断ち難い絆を踏みにじるほど、愉しいことはありません。」


気狂いじみた笑い方に虫酸が走り舌を打つ。

もしかして俺もいつか戦場で命を落とすかもしれない。畳の上で穏やかに死ねるなんて思っちゃいねえ。戦国の中で好敵手と刃を交えて本望だ。

だが自軍の盾になった兵を、妻の目の前で夫を殺した悪趣味な野郎の謀略に怒りが込み上げた。


こんなcrazyな野郎に俺や、俺の軍兵、奥州の民、
そして
名前を死なせてたまるか。

奥歯を軋むまで噛み締めて刀を構える。
だがそれも―――




明智と戦ってる間に魔王の先鋒の徳川軍と上杉、武田連合軍のいる長篠からとんでもねえ爆風と爆音。こっちは戦国最強と謳われた本多忠勝を亡き者にせんが為、魔王の嫁が徳川の背後を衝いた。

兵の命を何とも思わない第六天魔王の所業に腸が煮えくり返る。


何としてでも魔王の軍である明智を撃破したかった。だが野郎の背後から俺達を威嚇する鉄砲の数に不利を悟った。


「これで、東国も満身創痍。いつでも、どこからでも滅ぼせますね。」

「そろそろ踊ってもらいましょうか。」


「政宗様、撤退のご指示を!」

「…」

「あれだけの数の飛び道具、まともに相対せば全滅は必定!屈辱は、この小十郎が分かち合いまする!」


ここで退くつもりはなかった。だがあの種子島の前に自軍を浅井の兵の二の舞には出来ねえ。




「撤退だ、小十郎…!」


激しい怒りと悔しさに体が震えた。




設楽原からの無念の撤退。何の成果も上げられないままの帰路は酷く体が重い。いつもは気にならない馬の揺れが腹に響く、

ああ、
そう言えば
あの時…


「政宗殿!奥州は遠うござる!我らと共に甲斐に参られよ!」

「政宗様、ここは武田の申し出を受けましょう。傷ついた者も多くおります。」



一発の弾が俺の腹をぶち抜いていた、よな…
「政宗様…?」






『政宗様、政宗様。政宗様はどうして戦に行かれるのですか?』



天下をとるためだ
平和な世にするためだ
そして名前、
お前と幸せになるためだ
だがこんな俺じゃあ
待ってると泣き笑いで見送ったあいつに顔向け出来ない。


「coolじゃ…ねぇよな…。」

「政宗様っ!?」


馬から落ちて倒れいく刹那に見えた空
その昏い空にあいつの悲しげな顔が見えた





そんな顔
するんじゃねぇよ




再録2015.7.18 吾妻

[*prev] [next#]