政宗様といっしょ | ナノ
\南蛮語について/
『政宗様、政宗様。政宗様はどうして南蛮語を使われるんですか?』
夏が過ぎ短い秋も駆け抜けようとする奥州の仙台城。その奥御殿の一室で寛ぐご城主に問いかける許嫁の名前様。
「Ah?んなの決まってる。coolだからだ。」
南蛮語を駆使するご城主には悪いけれど理解してる人なんてこの城にはほとんどいないに等しい。
現にこの「くうる」と言う言葉の意味さえ分からない。小首を傾げる許嫁の仕種が何やら可愛らしくその頬を摘むご城主様。
『いひゃいんれすけろ…。』
「cuteなcheekだと思ってな。」
『ちーく?』
「cheek。頬のことだ。」
フニフニと頬を摘まみながら嬉しそうに微笑まれるご城主の表情。軍議や戦場に出ていく時のようなキツい顔ではない。三日月のように優しく孤を描く口元に図らずも心の臓が高鳴ってしまいます。
「Hey、どうしたhoney?」
『なななな何でもございません!そ、それより政宗様!いつもご出陣前に家臣の方々に仰ってる南蛮語は何という意味ですか?』
「Are you ready guys?か?野郎共、準備はいいか、だ。」
『じゃあ最後のれっつぱありーは…』
「パーリィじゃねェな。partyだ。」
『だって、おっきな声で政宗様仰ってますよ。"ぱありー"って。』
「この俺がそんなmissをする訳がねェだろ。」
いや、でも確かに出陣を見送っていると「れっつぱありー!やーはー」と興奮していの一番に駆け出してゆかれてる。
私は間違っていない!はず…。と許嫁様。
『仰ってました、ぱありーって、』
「言ってねェっつってんだろ、俺のpronunciationを馬鹿にすんのか?」
『…』
「…」
自分の耳を疑わない許嫁様
自分の発音を疑わないご城主
二人が正解を求めた先は…
『小十郎様ぁあああ!政宗様仰ってますよね!叫んでますよね!れっつぱありー!って!!やーはー!って!!』
「俺がそんなとぼけた発音するわけねェ!そうだろ?小十郎!」
そこには困った顔をした竜の右目がおりました。
あちらを立てればこちらが立たず。苦笑いを浮かべながらも「なんとも似合いのお二人であることか」と心中で笑った小十郎様でした。
再録 2015.2.19 吾妻
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