BASARA/現代/佐助


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「えっと…これ、なに?」

仕事から帰ってお疲れモードな佐助さん。上司の面倒もさることながら(真田さんね!)ここ最近は年度末の決算も重なり、家での持ち帰りも少なくない。

ご飯とお風呂を済ませたらパソコン画面とにらめっこ。2人っきりの甘くて優しい表情も好きだけど仕事モードの佐助さんも凛々しくてかっこよい。いつもなら邪魔にならないように眼福眼福とチラ目で拝んでいたけど今日はお休み。だって大事なお話があるからね。

昨日買ったPC用の眼鏡をかけた佐助さん、やっべーやっべー!かっこよいなーホント!ついつい目の保養だ癒やしだとみとれてしまう。

ニヤニヤする私に佐助さんが「そんなに見ないの」と、人差し指で私のおでこを押し返す。ほっぺがほんのり赤いから照れてるんだね!可愛いぞ!佐助さん!

「もー!俺様はいいから!そんなことより!」

『あ!そうそう!これね、エコー。』

「エコー…って、名前ちゃん…」

プリントアウトされた写真を凝視する佐助さん。見る見る顔面蒼白。え、なんで。しかもなんか写真持つ手震えてるし。なんで。

も、もしかしてあれか?まだ結婚して一年も経ってないのに子供とか早いよ!とか?
はたまた実は子供嫌いなんだよねー!言ってなかったっけ?とかー!?

いや、でもそれならピーピーな時避妊するよね!そうだよね!あれな時、そんなんしてなかったよ佐助さん!て事はさ、出来てもいいってことよね!はっ!もしかして…、男の人って直接がが気持ちいいからゴムしないだけ…とか!?

「名前ちゃんっ!」

『ぎゃっ!?』

てっきり喜んでくれるかと思い込んでたのに想定外な佐助さんの表情に私の上がっていた気分は急下降。自分でも気づかないうちにしょぼーんと俯いてらしい。そんな私の両肩を掴んだ佐助さんにびっくり。そしてあまりに顔色悪すぎる佐助さんに更にびっくり。

「す、すすすすぐ病院行こう!ねっ、そうしよう!」

『へ?いや、病院行って来たんだけど…、』

「お、俺様毎日お見舞いに行くし!い、いい、家の事なら心配ないよ!だから治療に専念しよう?」

『はい?』

「お金のことなら心配しないで!貯金も少なからずあるし、ほら!保険とかも利用すれば、さ!」

な、なんか佐助さんの様子がおかしい!動揺甚だしい!治療?入院?なんの話デスカ?私なにか深刻な話シマシタカ?それから佐助さん何故に涙目なんですか?

「絶対…絶対治るから!だから俺様を置いて死なないで!」

『なんでやねんッ!!』

「あだーッ!?」

思わず裏拳で佐助さんの顔面にツッコミを入れてしまいました。しまった!麗しいお顔に私ったらなんてことを!佐助さんはと言えば私のあまりの裏拳の強さに床でうつ伏せて悶絶中。しかしこれは致し方ないよね!

「名前ちゃん…痛い、」

相変わらず涙目な佐助さん。それでも悶絶から立ち直り赤くなった鼻のまま再びガシリと両肩を掴んだ旦那様は「名前ちゃんが居なきゃ生きてけない!」と真面目顔。

『いやいや、なぜに私が死ぬ前提なんですか?』

「だって、だってさ、エコーって名前ちゃんの体のどっかに異物があるってことでしょ?」

『…あー、異物ちゃあ異物?だよね。』

「や‥やっぱり!でもそれ取ったら治るんでしょ!?」

『いや、取ると言うかー出す?感じ?』

「出すって…!やっぱり摘出手術!?」

『出来たら自力で、』

「自力で出せるのッ!?」

『気力と体力があれば!』

「や…やっぱり大変なんじゃんッ!今すぐ入院しよう!なに用意すんのッ!?パジャマと寝間着と歯ブラシと歯ブラシと歯ブラシと…」

『よし!佐助さんちょっと落ち着こう!そうしよう!』

歯ブラシ歯ブラシ言いながら箪笥を漁る佐助さんを押し止め、ソファに無理やり座らせる。キッチンに立って彼の好きな銘柄のコーヒーをわざとゆっくりゆっくり淹れマグに注いでミルクを一つ。

黒いコーヒーに落とした白いミルクがスプーンで混ぜられて渦を巻き焦げ茶色になったそれを佐助さんの隣に座って差し出した。

「…俺様ブラック派だよ?」

『もちろん知ってる。でも今の佐助さんにはほんのり甘いのがいいの!』

マグを受け取った彼がコーヒーを一口飲んで、ほぅと息をもらす。あ、ちょっとは落ち着いたみたい。一口、もう一口、飲む毎に佐助さんの強張った空気が緩んでいく。

「…美味しい。」

『でしょ?』

「…ごめん、ね?名前ちゃんのが辛いのに俺様、うろたえちゃってさ。」

「はー」とマグをにぎにぎしながら私を見つめる瞳が不安げに揺れてる。うーん、私の言い方が悪かったのだろうか?てか、色々敏い佐助さんだからエコーで察してもらえるんじゃないかと思ったんだけどなぁ。

でも、なんかちょっと嬉しいかもとか思った私は不謹慎かな。だって佐助さんがさ、私居なきゃ生きてけない、なんて!彼の大事な存在になれているんだって、嬉しくてしあわせで、ちょっとくすぐったい。湧き上がるじんわりとした愛しさに頬が緩んでしまう。

「…名前ちゃん、なんでそんな、ニコニコなのさ…。病気、大変なんだろ?」

『佐助さん!私も愛してる!』

「は?や、嬉しい、けど、え?俺様の話、聞いてた?」

『もうね、佐助さん私を選んでくれてありがとー!』

「えーと…どういたしまして?って言えばいいの、これ?て、どこに向けて叫んでんのさ!じゃなくて!俺様の話聞いて!」

『だからいっぱい幸せになろうねー!』


ニコニコニコニコ。満面の笑顔で佐助さんに抱きついて。そんな私に佐助は「もー、会話がつながらないじゃない…」言いながらもぎゅっと抱き返してくれる。


佐助さんの体温、佐助さんの匂い、佐助さんの鼓動。あー私、幸せだー。

「あのね、名前ちゃん。俺様、ずっとずーっと名前ちゃんと幸せでいたい。」

『うんうん。』

「だから、さ。ちゃんと…病気治そ?」


きゅっと抱く腕に力がこもった。あのね、佐助さん。


『私ね、佐助さんが大好きだから…佐助さんを幸せにしてあげたい!』

「うん、それには名前ちゃんが治療を…」

『佐助さん、ここ、触って!』

「へ…?」


二人の間に隙間を作って、佐助さんの手をお腹に導いた。小さな小さな命。けど確かに息づいている私と佐助さんの赤ちゃん。


『ここにいる、赤ちゃんと一緒に、幸せになろ?』


やっぱりちょっと照れくさい。俯けば私のお腹に触れている佐助さんの手。その手がそおっと、そおっと、上下に動いた。


「ここに…赤ちゃん、いるんだ、」

『うん』

「そっか…」

『うん』

「…赤ちゃん、なんだぁ、」

『うん…』


すごく、すごく愛しそうに撫でてくれるから、なんだか嬉しくて、その優しい手が愛しくて目の奥がじんわり熱い。

ああ、泣いちゃいそう。赤ちゃん赤ちゃん、佐助さんが、お父さんがあなたを歓迎してくれてるよ。


「…体、気をつけなきゃね。」

『うん、』

「元気な子、産んでください。」

『う、ん…』

「…ありがと、俺様、もう、すっげー幸せ。」

『…うん!』



明日は愛をあげたい


お題<確かに恋だった>様

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
佐助に「元気な子産んでください」と言わせたかったんです。

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