Title:スイパラコスに焚き付けられた妄想6
16th March,2020 Mon 07:52
ヒロインさん固定名→桔梗

「我妻くん、大丈夫?」
「お、俺より、き、桔梗さ…う、いだだだだ」
「私は大丈夫よ、とっさに避けたからかすっただけ」

そっと濡らしたハンカチを頬に当ててくれる桔梗さんが女神に見えた。なんて神々しい、後光が見える、眩しくて見えない、いや見るけども!なんで俺が怪我してるかって?そんなのはお察ししてくださいよ。

あの時、確かに腹パンをキめた。ホントに見事に決まった。善逸のスピードに体重を乗せた拳は相手の不意を突き
男はぶっ飛んだ。いや、ウソごめんなさい。尻餅着かせただけでした。なにせ男は服の下に筋肉をつけていて善逸の渾身のパンチでも吹っ飛ぶことはなく、少しばかり呻いたが、善逸を視界に入れると自分よりも年若い子供に攻撃を受けたことに血が上った男は、「てめえ!何しやがんだ!」と、いたいけな男子高校生に右ストレートをキめてきたのだ。口の中が切れて頭がぐわんぐわんする。アスファルトに倒れた俺に更に追い討ちの拳を振り上げた男だったが、遅れてきた炭治郎と伊之助が男にタックルをかましたお陰でその難から逃れられた。
そのうち周りから警察を呼べ、110に連絡、なんて声が聞こえて男は慌てて走り去って行ったのだ。そして自分たちはと言えばこちらも警察沙汰は御免被るとすたこらさっさとその場を後にしたのだった。

それで、どうしたかというと

「よくやったな!我妻少年!」
「…いや、あの、俺やられたんですけど、」
「女性を守るとはいい心掛けだ!」

店に戻ったわけ。炭治郎が「無いと思うけど追ってこられてはまずい」からと、桔梗さんとそのお友達と俺たちはそのまま、近いし頼れる(?)大人がいると言う事で店にUターンした。事情を話したらすぐに事務所に通してくれ、炭治郎達は宇随さんが送ってくれることになり、桔梗さんの友人は彼氏が迎えに来てくれる事になって、ついさっき俺に何度も何度もお礼を言い帰って行った。

「明日は腫れるかもしれません。善逸君、家に湿布はありますか?」
「あ、はい、じいちゃんが道場してるからそう言ったのは一揃いあります。」

しのぶさんから「そうですか、なら安心ですね」と女神の微笑みをいただいた。そんな俺に桔梗さんが「ごめんね」と謝る。

「き、桔梗さんが謝ることない、ですから!俺が勝手にでしゃばったことであって!これも」

と頬に手を当てて自業自得だし、なんてちょっと情けなくて尻窄みになっていく声に桔梗さんが被せ気味で「我妻くん」と俺を呼んだ。

「守ってくれて、ありがとう。すごく嬉しかった」

へにゃ、と年上に見えないような顔で笑ってくれる。
その手が俺のほっぺたに触れた途端、心臓がすっごい音を鳴らしてて、顔から湯気が出そうなぐらい熱くなった。

「あ、あああ!あの!あの、」
「あ、ごめん、痛いよね?」
「ち、違うくてっ!そ、その、その、」

これはチャンスだと思うんだよ俺は!でもここで、連絡先とか望んだら怪我させたから仕方なく…なんて桔梗さんに負担とさせてしまうなら嫌だ。で、でもせっかく、お近づきになったのにこのままじゃ、ただの年下の店員と女子大生のお客様で終わってしまう。

「我妻くん、」
「は、はいいい!」
「怪我、気になるし、良かったら連絡先交換しない?」
「へぇあ!?」
「お礼もしたいし、どうかな?」

神様ありがとうございます!ようやく俺にも春かな?春が来るのかなっ!?震える手で携帯の連絡アプリを起動する。登録された花のイラストとアイコンと名前。

「…タンポポ?」
「なぜか昔から好きなの」

ふわりと笑った彼女にまたしても胸が高鳴った。