Title:スイパラコスに焚き付けられた妄想4
30th December,2019 Mon 20:45
「あ"ーーーーー!!」

叫んだ瞬間、腹に重いボディーブローが決められた。
一瞬店がざわついたけど煉獄さんの「失礼した!」や宇髄さんの「大変失礼しました」とイケメンオーラで女性客からのほぉ、なんてため息がそこそこから漏れて(これだからイケメンは!)俺の叫び声の一連は無かったことになった。

「ぜーんーいーつ、お前は何しにここに来てんだ、あ?」
「すみませんでした…」

バックヤードに連れられてお説教中である。宇髄さんはパイプ椅子に座っているのに見下ろされてる感が半端ない。
確かに今日は俺が悪い。先輩達にもお客様にも迷惑かけて、あまつ宇髄さんの時間をこんなことで使わせている。

「本当にすみませんでした。」

身体を90度曲げて頭を下げると「反省してんならいい」と大きな手が髪をわしゃわしゃと撫でてくる。これだからこの人は憎めない。

「んで、」
「はい」
「なんであんな大声だした?」
「………あ"ーー!!ふぎぃっ!!?」
「お前反省したんじゃねーのか!」

さっき撫でられた頭に特大の拳骨が降ってきた。

□□□□

「と、いうわけなんです」

経緯を話す間、宇髄さんは依然パイプ椅子だが俺は床に正座です、見下ろされてる感半端ないどころかとんでもない。圧がすごいのなんの…自業自得なんだけども!

「はぁー、ったく。しょーもねーことでいちいち騒ぐなよガキ」
「しょーもなくないんですけど!だ、だって「あーん」だよ!?こ、こここ恋人同士がするやつじゃん!ちくしょー!羨ましい!」
「お前、妬むか羨むかどっちかにしろ」
「どっちもだよ!」
「あいつらがカレカノだろうとお前に関係ねーだろ」
「そ、そうだけど!そうだけどさぁ!」

あの後腹パン喰らって床に沈んだから桔梗さんからの「あーん」をあの男が口にいれたかどうかは分からなかった。桔梗さんがどんな男と歩こうが付き合おうがデートしようが関係ない俺に喚く資格なんてないよ、むしろお門違いだよ。だけど、どうしたって気になるんだ、だってさ、一目惚れってやつ。他の女の子とは違う、心臓を射抜かれるってこんな感じなんだろう。本当に雷が体に落ちたような衝撃だったんだ。

「だいたい、お前が女子見りゃへらへらしてんのあっちだって知ってんだろ。そんな奴から好意向けられても不信感しかねーわ。」
「ぐはっ!」
「よって桔梗に彼氏が居ようが居まいが、まずお前は同じスタートラインにすら立ってねーわけよ、わかる?」
「…グハっ!」
「だいたい男の癖に見てるだけーな立場なお前って地味すぎだわ、地味過ぎて視界にすら入ってねーんじゃねぇ?」
「……す、すごい切れ味の言葉、吐きそう、おえ、」

宇髄さんの言葉が派手にグサグサ刺さって痛い、もう俺のHP0だよ。

「そんなお前に優しい宇髄様がアドバイスしてやろう」

え、と思わず顔を上げて宇髄さんをまじまじと見る。この人なんつった?え?アドバイス?まじで?
確かにこれまで割りと的確な事言ってくれたし、スタッフの中で面倒見もいいと思う(俺に対する態度は置いといて)炭治郎や伊之助も一目置いてるし。わずかばかりの光明が見えた気がして、「ぜひ!」と返事して神様仏様宇髄様お願いします!と手を合わせて拝んだのだが。

「とりあえず派手に告って振られてこい!」
「あんたも煉獄さんと一緒かよ!」

伊之助の猪突猛進猪突猛進が聞こえた気がした