「ふん、ふふん〜♪」
食堂に置かれた大きなツリーに飾り付けをする。
クリスマス特有のわくわく感に鼻歌なんか歌ってみたりして。
普段はホラーじみたこの船も、今日明日にかけては暖かい空気が流れている。
まぁ、暖かいっていってもドアを開けて一歩甲板へ出ればチューリップも凍るほど寒いんだけどね。
クリスマスシーズンに冬島の気候に入るなんて、グッジョブ航海士さん!
天使の飾りやキラキラもふもふしたアレなんかを飾って、残すは1番上の星だけだ。
「…とどかないかも。」
誰かを呼びに行こうと振り向いたとき、ちょうどキッドが入ってきた。
「ちょうどいい所に!これ飾って!」
キッドに恐ろしく似合わない可愛らしい星を手渡すと、チッ、とか舌打ちしながらも飾ってくれる。
なんだかんだ言って優しい。
「ありがとう。」
「いや…。」
なぜかその場を立ち去らずにもぞもぞしているキッド。
なんだかこちらも立ち去り難い空気になってしまった。
キッドが何も言わないために、わたしも何も言えないままだ。
ふと手元の柊を見る。
いいこと思い付いた。
―――ぶすっ
「っ!いってェ!!」
あ、やっぱり?
キッドの頭を見上げてケラケラ笑う。
「てめェ!何しやがる!!」
「いや、飾り余ったから。」
「は?」
イマイチ状況が飲み込めていないらしいキッドに、鏡を差し出してあげる。
赤い頭に可愛らしい緑の柊がちょこんとのっている。
のっているってゆうか刺さってるんだけど。
「!」
キッドの表情が固まった。
「クリスマスっぽくていいでしょ?」
にっこり笑って言うと、その柊はキッドの乱暴な手によって取られてしまった。
残念。
「ふざけんな!」
床に投げ捨てられた柊が悲しそうに足元に転がる。
「そうか、お前はそうゆうことをするんだな。じゃあ俺がせっかく用意してやったプレゼントもいらないんだな?」
「え、なにそれプレゼント!?いる!ごめんね、キッド」
まさかの発言に手の平を返したように謝るわたしって、都合よすぎる?
「ダメだ。」
どうやらまだ機嫌は直してくれないようで、キッドはそっぽを向いてしまう。
こうなったら仕方ない。
愛する彼の機嫌を直す必殺技!
ぴょんとキッドのお腹に飛び付いて、遥か上のキッドの顔を見上げる。
もちろん上目遣いも忘れずに。
「キッド、ごめんね?」
ちょっとびっくりした後、みるみる赤く染まる頬。
効果アリのようだ。
「………ダメ、だ。」
え、ダメなの?
失敗?
くそぅ…、もう一押しか。
キッドの顔に手を伸ばし、ゆっくり引き寄せる。
唇が触れるか触れないかのギリギリの距離に来て囁く。
「許して、もうしないから。」
しばしの沈黙。
「………。」
「………。」
「………だぁっ!許すに決まってんだろ!ってかもともとそんなに怒ってねぇよ。」
怒鳴りながらわたしを胸に抱きしめる。
やった、必殺技成功。
「わーい!キッド大好き!!」
「あぁ、ちょっと後ろ向け。」
まだ少し照れているのを隠すようにわたしをくるりと回転させる。
暫くすると首にひやりとした何かが触れた。
「ネックレス……?」
先程の鏡を覗き込むと、わたしの首にはピンクゴールドの綺麗なネックレスが下がっていた。
「少し早いが、な。」
そういってキッドはまたそっぽを向いてしまった。
あぁ、なんて可愛いんだろう、わたしのキッドは。
あんなに恐い顔で、あんなに強くて、なのにすぐに照れるし、こんなにも優しい。
そんなキッドにわたしは溺れている。
「……ありがとう、キッド。本当に本当に、大好きよりももっともっと愛してる。」
今度は本心からキッドに抱き着いた。
きっとわたしの40cmほど上で、キッドは耳まで赤くしているのだろう。
真っ赤な花弁
(クリスマスローズじゃなくて
可愛い貴方の赤い髪と頬。)
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2011.11.13
企画サイト:
わたしのすべて(旧:冬)様提出
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