×しあいたい
2011/05/15 11:02



「この人はサイゴまで×して欲しそうな目をしていたのです」

彼女の腕から、彼女に×された男がどさっと鈍い音をたてて落ちた。病院は大嫌いだ。消毒のにおいも、彼女が身にまとう白い布も、点滴の落ちるスピードも、カルテが重なるのも、天井の隅も、しわのないシーツも、全部。始まりと終わりをどうして同じ空間内で済ませてしまうのか僕には理解出来そうにない。
骨と皮とほんの少しの筋肉と、それから血と。体をつくるものの正体を僕はよく知らないけれど、同じ人間なのだからきっと彼女と僕に対した変わりなどないはずだ。なんて喜ばしいことなのだろう。まして僕たちは双子なのだ。DNAのレベルで限りなくそっくりに違いないよ。知らないけれど。

「あたしはちゃんと希望通りに×したのに」

僕は彼女に×されたあいつが憎い。僕とほぼ同時に始まりを迎えた彼女なのに、どうしてあいつのサイゴに立ち会わないといけないのだろうか。ずるい、ずるい。

「ねえ、お兄ちゃん」
「どうした」
「わたしもう誰でもいいから×してもらいたい、×すばかりは疲れました」
「お前が望むなら喜んで×してあげる」
「まあ気持ち悪いこと。嘘ですよ、お馬鹿さん」

お願いだから僕を×して。










殺、愛



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