「shit……、」 幾つもの大粒の雨粒が地面に着地し、びしゃびしゃと荒々しく濡らした。今日の1日天気は曇り、夜頃から雨が降ります。と、お天気お姉さんが可愛らしい笑顔で言っていたのを思い出す。夜から雨は降るし持ってくの面倒だからと油断して傘は持ってこなかったのがそもそも間違いだった。もう朝から雨が降りそうな気配があったが、降らずになんとか放課後まで耐えてくれるだろうと甘く考えていたが、この通り、土砂降り。傘を貸してくれるやつもいねえし、もう暗いし此処は仕方がないから濡れて帰るしかないかと思った矢先、隣で俺と同じようなになっている奴を見つけた。向こうも俺に気付いたのかぎょっとしたと同時にげんなりした表情になった。 「で、出た……。」 「なんだよ出たって。」 妖怪か何かを見てしまったようなリアクションをされてイラッとした。 「名前も傘持ってねえのかよ、」 「うん」 「使えねー。」 「黙れ変態サディスト。………いてててててて。」 「口には気を付けた方がいいぜ?」 にこやかな笑みを浮かべながら名前のふっくらとした餅のような頬を思いきりつねった。すると名前は涙目になって許しを請うてきたので仕方がなくつねっていた手を離してやった。 「そういうことするからサディスト呼ばわりされるんだよ。」 「そういう真似させるような馬鹿野郎がいるから俺はSになんだよ。」 「病むわー。」 「病め。」 きっぱりとそう言ってやると名前はあーとかうーとか奇妙な声を上げた。気が付けばもう辺りはさっきよりも暗くて、校舎にも人が疎らになっていた。こいつとこんなことしてる場合ではなかったことを思い出し、溜め息を吐いた。 「帰りてぇ」 「でもどうやって帰るの?政宗傘持ってないんでしょ?」 「持ってねえから困ってんだよ。」 「じゃあどうするの?」 「ずぶ濡れで帰るしかねえな。」 「えー、私か弱いから風邪ひいちゃうかもしれないじゃーん」 「安心しろ、馬鹿はひかねえからな。」 「それどういう意味ぃ?」 「そのまんまの意味だ。」 不満げな表情を浮かべた名前を見て小さく笑った。そして名前の手を握ると、未だ降り頻る雨の中に向かって歩き出した。 見えない傘をさすように title 花洩. |