朝七時を過ぎた頃のコンビニの中にはサラリーマンや私とおんなじくらいの制服姿の人たちで結構賑やかだった。ほとんどの人は昼食とか電車の中で読むのか、雑誌か何かを買ってく。私もその中の一人に過ぎない。今日は寝坊してお弁当など作る暇などなかったから、仕方なく今日はコンビニでお握りとジュースを適当に買って学校に持ってこうと思う。見ないうちにお握りの世界も進化を遂げていると思う。お握りひとつに沢山の具たちが揃ってるんだから。ここはとりあえず冒険せずに、スタンダードに鮭と昆布を選び、そそくさと少し先にいったところにあったパックのジュースコーナーへと急いだ。

「どれにしようかな。」

パックのジュースの世界も進化したと思う。こんな沢山種類あったけ?(あまりコンビニ来ない方だから解らんけど。)どうしようと迷ったものの、結局ここもスタンダードに緑茶を選び、手にとろうと手を伸ばした。その瞬間、突然私の手よりも先に白くて大きな手が我先にと言わんばかりに、後方からにょっと手を出し、取ろうとした緑茶を取った。驚いて後ろを振り向くと、見慣れた制服の模様が視界を奪った。

「あ、」

その主はどうやら背が高いらしく、顔が見えない。その視線をそのまま上に引き上げると、またしても見慣れた顔が見えた。それは私の顔を見るなりにっと口角を上げて私を見下ろした。

「あ、政宗君。」
「Good morning。」
「はよ。何で居んの。」
「俺が居たらダメなのか?」
「…別に。」

少し怒ったような表情を見せて、さっき取ろうとしたお茶を手に取り、レジへと歩いた。すると政宗君はその足を止めるように前に立った。

「珍しいな、いつも弁当なのに。」
「今日寝坊して作る時間なかったの。」
「寝坊?」
「うんまあね。政宗君こそ何時もお弁当なのに。珍しいね。」

私がそう言うと、政宗君はまあな、と言うような顔をして、私がチョイスしたのと同じ鮭と昆布を取った。私はそのまま政宗君の横をスーッと通りそのままレジへと並んだ。レジは思いの外混んでいて、反対側のレジも数人の人間が並んでいた。後から政宗君も私の後ろに並んだ。ポケットに入れて置いたお金を取ろうと、ブレザーのポケットに手を突っ込み確かめる。手の感触に、違和感を覚え、ポケットを今一度探ってみる。

(あれ、おかしいな……。)

お金の代わりに親指の関節ぐらいの大きさをした穴が一個。

「はあ、」

私は小さく溜め息を吐くと、レジを離れようと列から外れた。

「並ばねえのかよ。」
「え?…ああ、うん。いいよ、政宗君前に行って。」
「そうか、thanx。」
「うん、」

仕方なくお茶とお握りをまたさっきの場所に戻した。一日ぐらいお昼ぬいても多分大丈夫だろう、多分。結局、そのまま私は何も買わずに店から出た。政宗君はもう既に先に学校に向かって歩いていた。政宗君の後ろ姿が十数メートル先に見える。私はそのまま止めて置いた自転車へと向かって歩いた。自転車に鍵を差し、荷物をカゴに入れようと、カゴを覗いた。

「あれ?」

カゴの中にはないはずのお握り二つとパックのお茶が入ったコンビニの袋がひとつ、どさりと置かれていた。はっとして政宗君の方を見たが、彼の姿はもうなかった。



少女融解事件




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