ぐちゃぐちゃにしてやりたい。酷くそう思った。名前のその白く肌触りのいい柔肌が俺以外の他人に触れられぬように抱き締められて、美しい曲線のぷっくりとした唇が他人に見られぬようにずっと指で愛撫して、鈴の音のように心地好いその声を他人に聞かせぬために自分の唇で彼女の唇を塞ぎたい。この部屋に閉じ込めて、名前の全てを俺のものにしたかった。名前には俺さえ居ればいい。俺以外の物は必要ない。名前は俺だけに視線を送り、俺だけに触れて、俺だけに耳元で囁いて、俺だけに口付けをすればいい。

「…政宗?」

恋しい声が、ドアの微かな隙間から聞こえてきてきた。扉の隙間からは一筋の光が差し込み、電気を点けていない薄暗い廊下を照らした。ドアを隔てた向こう側には愛しい名前がいる。ドアノブに手を置いてゆっくりと回す。暗がりから突然明るい部屋に入ったせいか、目が眩んで名前がぼんやりと見えた。

「やっぱり政宗だった。」

頬をほんのり朱色に染めて名前は俺に微笑みかけた。その名前の様子を目にした瞬間、ふいにまたあの衝動が俺の心の中で悲鳴を上げる。今にもこの手が勝手に動き出して名前をどうにかしてしまいそうだった。

「そんな所で何してるの」
「…いや。」

ドアを開くことは出来ても、なかなか中へと入ることが出来ない。脚を踏み入れてしまえば本当に何かしそうで自分自身が恐ろしかった。そして自分自身が怖いのと同じくらい名前に恐れられるのが恐かった。そんなことなど知るよしもなく、名前は俺に優しさを帯びた言葉をかける。

「そんなとこにいないで此方に来て。」

その一言を聞いた途端、ぷつんと何かが切れたような感覚になり、理性が一気に崩れ落ちていく音が遠くから聞こえてきて、不思議と解放されたような気分になった。

「今いく。」

傍にあった電気のスイッチをかちりと消したと同時に名前のいるベッドの上に歩みを進めた。灯かりを消したと同時に名前の驚いたような声がよく聞こえた。電気の消えた黒々たる部屋で、名前の肌が月光に照らされてぼんやり青白く光っていた。



誰かが電気を点けるまで


それまではお前の全てを俺のために。


title guilty.