※夢主が不憫です



私は彼を心から愛しています。ですが彼は私を心から愛してはくれません。彼には綺麗で美しい恋人がいます。けれども彼は恋人ではない私を幾度も抱きました。ですが私は罪悪感など沸きません。何故なら私は罪悪感よりも彼のくれる偽物の大きな愛に私の心は十分満たされていたからです。本当は私のことなんて何とも思っていないことなどはじめから分かっていました。けれども目の前で嘘の愛を並べて囁く彼が堪らなくいとおしく感じていたので、彼から離れることなど到底出来ませんでした。私は彼の鋭く冷たい瞳が好きでした。その目で見つめられるだけで息ができない程胸が苦しくなります。毎日毎日、365日24時間彼と一緒に居たかったのですが、彼は白昼には私と会おうとはしませんでした。「どうして?」と、私が問えば彼はいつも黙ってしまいます。でも言わなくても私には分かっています。恋人や友人に私を会わせることを酷く嫌がっていたのです。勿論それを私は悲しく思いましたが、彼が困ったり嫌がるようなことは絶対したくなかったので、私は微笑して、それ以上は何も言いませんでした。彼は私を楽しませるのが得意でした。私の殺風景な部屋にある小さなシングルベッドの上が私と彼を繋ぐ唯一の場所でした。私は彼と一緒にベッドで過ごす一時が唯一の幸せでした。彼はいつも優しく私の全てを包み込みます。私は彼の愛撫が好きで好きで仕方がありませんでした。一緒にいるこの時だけ、彼は私だけのものになります。彼は私を抱きしめるといつも優しく微笑んで「愛している」と耳元で囁きます。それだけで私は涙が出るほど嬉しくて救われます。たとえその笑顔が上辺だけの飾りだとしても、愛してると囁く声が偽りだとしても、私は彼を信じています。だから今夜も私は心の中で泣きながら、笑顔で彼を抱き締めます。白い古びたシーツの敷かれた、小さな小さなシングルベッドの上。彼は嘘の愛を囁いて、私の身体を使って自分の欲求を満たします。

「名前、」
「なに?」



(愛してる)

Ms.ダッチワイフ


私は彼を心から愛しています







ダッチワイフ:
模造の性器を有する等身大の女性代用人形のこと



title kokkyu.