まだ少し濡れていた髪の毛の毛先からはひたひたと一定の間隔をおいてポツリポツリと雫が滴り落ちていた。床には数滴の水の粒で濡れていて、その粒を踏んだら少しばかり冷たかった。気付かれぬように静かに後を追い、背後に近づいてゆっくり名前のまだ生乾きの首筋に唇をくっつけたら、彼女は吃驚したのか、肩を微かに震わせてた。だが俺様と目を合わせると、溜め息を一つしてそのままソファに掛けた。彼女はソファの上にあったテレビのリモコンを手に取り電源を点けた。彼女が座るのを見て、俺様も同じように隣に座り、名前の肩に凭れた。

「石鹸のにおいするね。」
「お風呂入ったからね。」

名前はそう言ってチャンネルを変えた。お昼だからちょうどいいともやってた。名前はそれを見て笑っている。その横顔を見ながらまだ濡れている髪の毛を触ろうと手を伸ばした。

「つるつるしてるね。」
「髪濡れてるからね。」

またさらりと視線をテレビに向けたまま言葉を返した。今度は名前の唇に手を伸ばし、人差し指で唇をなぞった。

「唇ぷっくりしてるね。」
「リップ塗ったからね。」
そしてそのまま軽いリップ音をたてて、自分の唇をくっ付けた。

「愛してる?」

そう言うと彼女は少し驚いたように目をまあるくさせた。そしてふっと笑った。


愛していいよと君がわらう


「愛してる。」