スッと腕をまわされたので私はそのまましゃがんでその腕から逃れた。スカッと気持ちがいいくらい彼は私の代わりに空気を抱き締めた。

「ねえ、何で逃げんの。」
「恥ずかしいから。」
「可愛いー。」

彼はクスクスと笑って言った。周りにいた通行人もふふ、と笑っている。こんな白昼堂々、しかも溢れんばかりの人間がいるこの道のど真ん中で何やらかすんだ、こやつは。

「人が見てんじゃん。止めて。」
「人目なんて気にしない。」
「気にします。」
「ラブラブなのを見せつけちゃえ。」
「どうぞ、お一人で。」

つれないなあ、と言いながらまた彼は笑った。私にこれだけ言われて凹まない所は、本当に尊敬する。

「もう帰るね、遅いし。」
「えー、今夜は帰らせないよーっ。…って、ちょっ、痛あッ!!」

また何か可笑しなことを口走ろうとした佐助の脇腹に思い切り持っていたショルダーバッグで攻撃した。

「思い知ったか、変態めっ」
「…………っ、」
「ねえ、」
「…………っ。」
「聞いてるの?」
「…………。」

彼は踞ったまま、動かず何も話さない。打ち所が悪かったのだろうか。でもこんなことぐらいでダウンするようにやわな体じゃないはずなのだが…。

「ねえ、大丈夫?」
「…………。」
「…ごめんね、痛かった?…っ!!」

突然ガシッと両肩を捕まれ、引っ張られたかと思ったらそのまま唇を奪われた。


好きとキスの間