じめじめとした梅雨は何処へやら運が良いのか悪いのか今日はからりと晴れている。そんな今日は体育祭本番で、今からあたしの出る競技である借り物競争が始まろうとしていた。
時間帯はもうお昼時。この借り物競争が終わればお昼休憩に入る。そのためかお腹は空いてるし太陽も真上に昇っていて暑い。しかも先程順番を決めるじゃんけんをクラスメート達としたところ見事に負けてしまい順番は一番目。これで一、二年生もいれば一年生からの順番だから実質的には一番じゃなかったのに生憎借り物競争は三年生だけの種目なので正真正銘一番だ。…憂鬱すぎる。
そんな憂鬱な気持ちなんて気にせずに時間は進んでいき、借り物競争の説明が始まった。

まず、今年は借りるのは物ではなく人。25m程先にある机には丸い穴の開いた箱があり、そこから取り出した紙に書かれている条件に当て嵌まる人を最初に本部まで連れて来た人の勝ち。そして時間の都合上誰かが一人でもゴールした時点で他の人達の負けが決定して終了。また、借りられた人にもボーナスとしてその人のクラスに点が入るらしい。つまり、自分のクラスメートを連れて来れば結構な点数が入るということになる。……これはもしかしてもしかしなくても責任重大なのではないだろうか。

学校によって様々なルールがあるのだろうけど、うちの学校の体育祭はクラス対抗で学年ごとに一位のクラスを決めるなんとも有り触れたルール。特に一位のクラスに賞品があるわけでもなく、賞状が貰えるだけ。…だけど、それでも負けるのは嫌だというのが人間の心情。やるからには勝つ、どこのクラスもそんな意気込みで望んでいるのか応援席からはたくさんの応援の声が聞こえていてかなりのプレッシャーだ。


「第一走者用意!」


その声により応援の声が一時消え、その場が一瞬にしてしん、と静まり返る。緊張に負けそうになりながらも一度深呼吸をしてから前を見据える。

パンッとピストルが開始の合図を告げ、皆が一斉に走り出す。距離が短いこともありそこまで差が出ることもなく机に着き、各自近くにある箱から紙を取り出している。そんな中、あたしも同じように近くにあった箱の中に手を入れて一番最初に触れた紙を一枚取り出した。そして、開き、中を見た途端閉じたくなってしまった。


3年Z組で貴方が一番イケメンだと思う人


…これを考えた人は一体何を考えているのだろう。確かに3年Z組にイケメンが多いのはこの学校の生徒なら誰でも知っていることだ。だけど、それと同時に3年Z組は問題児が集められたクラスであることもまた周知の事実。かっこいいと遠巻きに騒ぎはしても、めったに近付きはしない。近付こうなんて考えるのは本の一握りの子達ぐらいだ。それくらい3年Z組には普通とは違う少し異色な雰囲気が流れていて、あたしからするとあんまり関わりたくない。
しかも、3年Z組には土方くんもいる。……本気で近付きたくない。
けど、だからといってZ組に行かなければ当然あたしは負け、クラスに点数は入らない。そんなことをしたらクラスの皆に怒られる。特に結菜。
他の人達もクラスが指定されていたのか既に各自自分の目当ての人を探しに散らばり始めているのを見てあたしも腹を括ってクラスごとにテントが張っている中の一番端っこに位置する3年Z組が集まっているであろうその場所を目指して駆け出した。

…早く行かなければいけないのはわかってるけど3年Z組のテントに近付けば近付く程足が重くなってくる。……いや、だってなんかゴリラっぽいものが倒れてるんだけど。なにあれ。人?人なの?え、あれ死んでない?生きてるの?


「いい加減あの女のことは諦めろよ近藤さん」
「…あ」


呆れた声を出しながらゴリラっぽい人のところに近付いていた人物が思わず出してしまったあたしの声にこちらを向いた。そしてお互いに数秒無言。

………あたしこれ死んだんじゃない?







果たしてこれは運命

他の走者達もまだ苦戦してるみたいで、終了の合図であるピストルがなる様子はまだなかった。

20110205

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