異性の幼馴染み、と聞くとたいていの人は恋人の一歩手前ってぐらいに仲が良くて、小さい頃からずっと一緒にいたようなそんなイメージを抱くけど、あたしは幼馴染みという関係にそんなイメージを抱けない。
なぜなら、そういう幼馴染みだってきっといるんだろうけど、あたしは残念ながらそんな幼馴染みを見たことはないからだ。

それに、幼馴染みということは小さい頃からずっと一緒にいる存在であって、所謂兄弟みたいな存在。だけど、だからと言って同じ血が通っているわけではないから本物の家族ではない。つまりあたしからすればそれは友達以上家族未満の関係。
小さい頃から兄弟みたいに育ったのだからもちろん一緒にお風呂に入ったり結婚を約束したり一枚の布団で一緒に寝たりキスをしたり手を繋いだりしても幼いということもありなんとも思わない。
だけど、それは成長とともに変わる。
心身共に成長してくると誰しもが段々と異性を意識しだす、そんな中で先程挙げた行為を行うのには抵抗を感じてくるはずだ。…もし、抵抗を感じなかったとしても、同じく異性を意識しだし恋愛への関心が高まってきた周りからすればそれはからかいの的である。
お前達付き合ってんじゃねーの?等とからかわれる事でようやくそれらの行為に恥ずかしさが生まれ、お互いになんとなく距離を置きだし、同性の友達の輪に入っていく。
その影響で家は近隣なはずなのに長い間関わりを持たなかったり、距離を置いてたが故に大きくなった今、どう接したらいいかがわからずしゃべれない。そんな幼馴染みだってきっといるはずだ。

…現に一組はいる。あたしとあたしの幼馴染みが。
だからこそ、具体的に幼馴染みについて語れるし、長年一緒にいる幼馴染みというのがいまいちピンと来ないのだ。


「てことで、これ返品」
「いや、意味わかんないから」


時刻は昼休み。ミルクティーを飲んでいたあたしはズズッ、と音を立てながら紙パックの中身を全て飲み切るとパラパラとめくっただけの漫画を持ち主へと押し付けた。


「だーかーら。あたしこういう長年一緒にいた幼馴染みがどうのこうのって話あんまり好きじゃないの」


はー、と一つため息を吐きながら空になった紙パックをぐしゃりと潰す。


「はっはーん。さては、読んでると自分はこんな風になれなかったからっていう醜き嫉妬心が疼くの?」


何が楽しいのかニヤニヤと笑いながら頬杖を付き、こちらを見ている先程の漫画の持ち主であり、親友の結菜を見てんなわけないでしょ、と返すとじゃーなんで嫌いなのよ、と結菜は唇を尖らせた。

昔から幼馴染みが関わってくる話はあまり好きになれない。それをなんで、と聞かれても答えれるはずがない。だって、好きになれない物は好きになれないんだから。


「…ていうかさ、小さい頃ってもしかしてその幼馴染みのこと好きだったの?」


探るように聞いてくる結菜に曖昧に笑いながら頷く。
昔の話をするのはなんだか恥ずかしい。
それが恋愛の話だったら尚更だ。
だけど、何か話題を変えようと、あたしが話題を探している間にも結菜は次の質問をしてきた。


「それじゃあ、今は?」


話題を探していたせいもあり少し返答に詰まる。

…好きか嫌いか、と言えば好きだ。だけど、それは結菜が聞いているような恋愛感情ではない。
どう答えるべきかわからなく、結菜をちらりと見ると早く言えとばかりにこちらを見ていて、思わずため息を吐くと、あたしは重い口を開いた。


「…昔は確かに好きだったけど、今はしゃべってすらいないんだから好きかどうかなんてわかるわけないでしょ」


ま、そうだよね。と笑いながらそれ以上幼馴染みについて聞くのをやめた結菜に少し安堵する。
これ以上昔の話をするのはごめんだ。だって、やっぱり恥ずかしいし。

…それに、これ以上話してたら昔に戻りたいと思ってしまいそうだから。








昔みたいにまた仲良くしゃべったりしたいって思うのはきっと幼馴染みが今でもあたしにとって特別な存在だから。

醜き嫉妬心、結菜が言ってたことはあながち間違いじゃないのかもしれない。

100103

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