女々しい及川で軽い狂愛?



体が、肺が、脳が、心臓が、必要なものを手に入れようとわたしの意識とは関係なく手が動く。だけど、徹の手に自身の手を伸ばしたところで今のわたしにはそれをどうこうする力なんてなく、なんの意味もなさない。この状況から抜け出す方法がわからないまま頭がボーッとしてきて意識が遠のきそうになったとき、圧迫されていた首がようやく解放された。



「ゲホッ、ごほごほ……っはぁ、はぁっ、」
「…………ごめ、ん」



求めていた酸素を急には受け入れきれなくて咳き込む。そんなわたしを呆然と見つめている徹はきっと、わたしの首を絞めることなんて全く考えていなかったのだろう。わたしの息が整ってきたとき、徹に思い切り抱き締められてまたごめん、と呟かれた。力一杯の抱擁は痛くて苦しくて、でもそれは多分徹の気持ちと一緒だ。



「好きだよ、徹」



徹は、愛に飢えているんだとわたしは思う。捨てられることを恐れている。不安になって、でもそれを吐き出さずに一人で溜め込んで、そしてこうしてたまに爆発させるのだ。自分を、自分だけを見てほしい。その気持ちは、わたしにもよくわかるからこそわたしには徹を責めることなんてできない。徹からの痛い抱擁に、好きだと言って抱きしめ返すことしかできないのだ。



「…俺を一人にしないで」



耳元で小さく呟かれたその言葉は、わたしの心に重りとなって沈む。徹がわたしを求める限りわたしは徹から離れられないし、徹だってきっとわたしが傍にいる限り離そうとはしないだろう。例え首を絞められようと殺されかけようと、徹がわたしを必要とする限りわたしは彼の傍にいたい。この関係が世間から依存だなんだと言われようと、どうでもいい。徹から引き離されるのが救いだと言うのなら、救われたいなんて思わない。周りからの救いの手なんて、いらない。



「嫌いにならないで」



もっと、もっととまるで底の抜けたバケツに水を注ぐように愛を求め続けるわたし達は、このままじゃ多分一生満たされることはないのだろう。
それでもわたしはいつまでも決して満たされない徹の望みに応えていたいのだ。

もう一度好きだよ、と呟くことしかできないわたしをどうか捨てないで。





不幸に依存





2014/08/27

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