タクミ@食戟





あーもう腹立つ腹立つ腹立つー!!!!


ガンガンガンガンガン


イライラを料理にぶつけちゃだめなことはわかってるけど、それでも今まで料理しかしてこなかったあたしにとって料理以外のストレス解消法なんて思いつかない。抑えられない怒りでまな板と包丁のぶつかる音はどんどんひどくなるばかりだ。幸い今この場所にいるのはあたしだけだから誰に遠慮することもない。包丁にもまな板にも悪いことではあるけれど。きっとあの男にこの光景を見られたら料理人なら道具を大事に扱えと怒られるのだろう、と事の元凶である男の存在が頭を過ぎった。


ガンッ


最後に一際大きな音を立てて野菜を切り終わる。むしゃくしゃをどうにかしたくてとりあえず野菜を切ってみたけど何を作ろう。ごはんもあるし適当にチャーハンでも作ろうかな。


「…ひどい音がすると思ったらキミか」


中華鍋を用意してるとガラリ、調理室の扉の開く音の後に聞こえた声は聞き間違えるはずがないあの男の声で、まだ怒りが収まっていないあたしはとてもイラッとした。


「料理人なら道具を大事に扱え」


しかも想像した通りのお言葉を頂戴した。
カチンときたので無視して野菜を炒める。野菜が炒められる音を聞いていると少し落ち着いてきて表情が緩むのが自分でもわかった。


「……何を作ってるんだ?」


折角楽しい気持ちになってきたのにこの男の声で台無しだ。またイライラしてくる。はやく帰ってくんないかな。あたしは今あんたの顔なんて見たくないのよばーか。


「…なにか怒ってるのか?」


そうよあたしはあんたにすっごく怒ってんのよ。わかったなら帰れ。話すのもいやだから声には出さないけど。


「……オレが何か悪いことをしたなら、謝る。すまな」
「なんで謝んのよ」


ああもう本当に腹立つ。


「あんた別に何も悪いことしてないでしょ。あたしが勝手に苛立ってるだけなんだから謝らないでよ」


謝られると、余計に惨めになるじゃない。
いつもいつも幸平幸平ってうるさいあんたに、まるであたしは眼中に無いみたいなその態度に勝手に腹立って怒ってるあたしが、あんたに必死に追いつこうとしてるあたしが、…ひどく惨めだ。


「…ねぇ、タクミ。あたしはどうしたらあんたに追いつけるの」


コンロの火を止めてタクミを振り返る。けど、なんだか目の前がぼやけてタクミの表情は見えなかった。

だから今は会いたくなかったのに。

ねぇ、タクミ。凡人なあたしはあんたに嫉妬してるだけなんだよ。あたしはあんたの才能が、羨ましくて仕方ないの。どうせなら口だけの男だったら馬鹿にできたのにあんたは口にするだけの実力がある。それがとても腹立たしくて、羨ましい。必死になって追いつかないと卒業したらあんたは一気に遠い人になっちゃうんでしょ。ただでさえ今だってこんなに遠いのに。家族でもなんでもない赤の他人のあたしなんて、置いていかれる。はやく、はやく追いつかないと。


「…オレは信じてるよ。キミならきっとオレに追いつけるって」


…そんなこと言われたら、もっと頑張るしかないじゃないの馬鹿。




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食戟ではタクミが一番好きです。残念なイケメン可愛い。

にしても、ノートだとなんだか気楽に更新できるからついつい好きなキャラにどんどん挑戦しちゃってるけど、キャラ崩壊してないか心配です…。




2014/07/18

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