少し強気な研磨でSSS





「……好き」


その言葉は、意図せずして零れだしたかのようだった。
研磨の猫目が驚きから見開かれて、そしてその目線はついに逸らされてしまった。

研磨があたしのことをそういう風に想ってくれてるのには、薄々気付いてはいた。あたしだって研磨のことは嫌いじゃない。むしろ好きだ。だけど、あたしのそれは恋愛感情ではないし、幼い頃からずっと一緒にいた研磨はあたしにとって弟のような存在で、昔からいつだってクロと一緒に研磨に世話を焼いては面倒を見てきた。そんな研磨とあたしが恋人になるというのは、いまいちあたしには想像のしにくいことで、これから先もきっと幼馴染みという関係を続けていくのだろうと思っていたし、告白された今でもその考えは変わらない。研磨だってきっと、今のこの関係が嫌なわけではないだろうし、壊したいとも思っていないはずだ。だから、すぐに、ごめんやっぱり今の言葉忘れてと言ってくれるに違いない、そう思って口を閉ざしていた。


「おれのこと弟みたいって思ってるみたいだけど、おれは今まで女の子としてしか見たことないよ」


ずっと好きだった、再びそう言いはなった研磨の鋭い猫のような目があたしを貫く。あたしの予想とは反して、だめ押しのようにもう一度そんな風に告げられてしまえばあたしにもう逃げ場はない。研磨の気持ちをきちんと正面から受け止めて答えをだすしかないのだろう。せめて研磨の鋭い視線からだけでも逃げたくて、そろりと研磨から視線を外して口を開いた。


「……ごめん。あたしは、研磨のことそういう風には見れない。研磨のことは好きだけど、研磨とキスしたりとかっていうのは考えられな、」
「じゃあ試してみる?」
「……え?」


珍しくあたしの言葉を遮った研磨に反射的に視線を向ければ、手首をゆるく掴まれた。依然として研磨の視線は鋭くて、いつもとは違う様子の研磨に動揺してしまう。研磨とあたしを纏う雰囲気が、明らかにいつもとは異なるものになっている。この空気はだめだと直感で感じるのにどうすればいいのかわからなくて視線をさ迷わせることしかできない。おかしい。今までこんな風に能動的な研磨の姿をあたしは見たことがあっただろうか。こんな研磨、あたしは知らない。段々と近付いていく研磨との距離に、やめてとも離してとも言えずに緊張で震える喉で研磨の名を呼んだ。


「…本当に嫌なら逃げて」


その言葉はまるで、逃げないで、と言ってるように聞こえた。そんな風に聞こえてしまったあたしにはもう拒否することなんてできなくて、ただ研磨の顔が近付いてくるのを黙って受け止めることしかできなかった。


「これでおれのこと、少しは男として見れそう?」


離れた後に囁かれたその台詞に、そのうち研磨に流されるまま付き合ってしまうことも遠くない未来であり得るかもしれないと、思ってしまったあたしは研磨に絆されているのだろうか。





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強気な研磨くんが書きたくて勢いで書きました。
主人公にとって自分がどういう存在なのかよくわかってて、逆にそこを利用して拒否されないようにうまいこと付け入ってくる研磨くんを書きたかったんですが伝わらなさそう……(笑)
久しぶりにはなしを書きましたけどやっぱり何か書くのは楽しいですね!文章書くのがさらに下手くそになってる気もしますが!とりあえずはやくもっと時間が欲しいです。




2016/02/02

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