神威


神威の考えてることを理解出来る奴なんてこの宇宙中に一人でもいるのだろうか。
そんなことを考えてしまうくらいあたしにはアイツの考えてることが昔から全くわからない。
例えば神威のお父さんの腕を奪ったとき。確かに夜兎族には昔そんな風習があったらしいけどそれを風習が廃れた今の時代に実行するなんて何故そんなことをするのかあたしには全く理解出来ない。…むしろ理解なんてしたくないけど。

それから、弱い奴に興味はないとか言いながらもあたしを連れてきてくれたことだって理解できない。自分が弱いとは思ってはいないけど、神威からみたらあたしは十分に弱い部類に入るはずだ。…それなのに、神威は何故あたしを連れてきてくれたのかがとても不思議だ。
幼いながらに神威と一緒にいたい、と思っていた小さい頃のあたしにとっては嬉しいことではあったけど、あの頃のあたしにもやっぱり神威が何を考えてるのかはわからなかった。


だけど、一番理解出来ないのは…。


「彼氏をほったらかしにして何物思いに耽ってるのさ」


こいつとあたしがこの間、世間で言う彼氏と彼女という関係になった事だ。
阿伏兎に神威のことで相談してるときにそれをたまたま聞いてしまった神威に長い間燻らせていた想いがばれたのがついこの間。
それから何故か神威と付き合うことになり、片想いが実ったのは嬉しいけど正直言って素直に喜べないのが現実。
だって、そもそもあの神威に人を好きになるなんて感情があるのだろうか。
家族さえ簡単に捨ててしまえるあの神威に愛情なんて感情があるとは思えない。
…それに、まず神威はそんな感情を求めてない。神威が求めるものなんて今も昔も強さだけ。


「まさか他の男のことを考えてるんじゃないだろうね」

「…そんなわけないでしょ。大体神威こそ彼女ほったらかしにして何してたのよ」


ため息を吐きながら言うもその答えなんて神威の服に返り血がついてることでわかりきってる。
どうせ春雨に逆らおうとした馬鹿な奴らを仕事で殺してきたところなのだろう。


「一人で片付けたの?」

「うん。強い奴が一人でもいるかなって思ってたけど弱い奴ばっかだったよ」


…ほら、やっぱり神威は強さしか求めてない。仕事なのに誰も連れていかないどころかあたしすら連れていかなかったのは誰にも邪魔されちゃ嫌だからでしょ?

あたしは、神威のために戦いたいのに

貴方の瞳に、あたしは写っていない。


「…神威、」


だけど、それでもね、



「愛してる」






理解出来るものはただ一つ



「俺も愛してるよ」

例え神威のその言葉が嘘だとしてもあたしが神威を愛していていることには変わりがないんだから考えるだけ時間の無駄なのかもしれない。




2014/07/08

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