総悟と酔った勢いでやらかしちゃった話





目が覚めると、とても綺麗な寝顔が目の前にあった。


「わー、朝から目の保養ー。……って、え!?なんで沖田くんがあたしと一緒に寝てんの!?」


朝に弱いあたしはいつもなら眠さからしばらくはぼんやりとしたままなのに、あたしの中の大学一かっこいい男ランキング一位なイケメン沖田くんが何故か隣に寝ていた今日は一気に眠気が飛んでいって勢いよく上半身を起こす。そしてその途端襲ってくる頭痛。


「いったぁ…。頭割れそう…」
「そりゃ、あんだけ飲んだらそうならァ」


あたしの先程の声で目が覚めたのか隣から眠そうな声が聞こえてそちらを見る。…うん、間違いなくあの沖田くんだ。何度まばたきをしても沖田くんは消えることなくそこにいる。見間違いではなかったみたいだ。いや、でももしかしたら幻で今の声も幻聴かしれないと思い、とりあえずつんつんとほっぺたをつついてみた。やばいなにこれぷにぷにしてる上に肌はすべすべですごい気持ちいいんだけど…!


「……何してんでィ」
「いや、すごく気持ちのいいほっぺをお持ちで羨ましいなーと思って」
「あんたのほっぺだってこんなに伸びて気持ち良さそうじゃねーか」


…まさか幻か何かだと思って、なんて言えるわけがなくうまく誤魔化したつもりが容赦なくほっぺを引っ張られた。


「いたいいたい!!ほっぺもあたまもいたいー!!」
「おー、のびるのびる」
「ぎゃああああ!!いたいはなしてええええ!!」


しばらくほっぺを好き放題引っ張られてからようやく解放してもらえた。ほっぺたがじんじんする。これ絶対赤くなってるよね。ドSだとは聞いてたけどこんなにもほっぺを容赦なく引っ張られるとは思っていなかった。まぁ、お陰様で?これが夢でも幻でもないということは痛いほどわかった。というよりも本当にすごく痛かった。ていうか、普通に話してたけどあたしと沖田くんはゼミが同じでたまに話したりはしてたけど、ここまで仲良くなかったはずだ。多分。それなのにいつほっぺを引っ張られる仲にまで発展したんだろうか。もしかして、そう思っていたのはあたしだけで沖田くんの中ではいつの間にかあたしは友達と認定されていたのか。そうだったらすごく嬉しいけどでもやっぱり違う気がしなくもない。


「さっきから何難しい顔してんでィ」


寝そべりながら頬杖をつく沖田くんの方へ目をやる。そして、その途端ようやくあたしはあることに気付いて、今さら慌てて布団で体を隠した。


「つかぬことをお伺いしますが沖田くん」
「んー?」
「ここどこ?」
「俺ん家」
「……気のせいかあたしと沖田くん服着てない気がするんだけどこれ気のせいだよね?」
「気のせいじゃねーな」
「………ということは、つまり…」
「あんたから誘ってきたくせに忘れてるたァ、つれないねィ」


……とりあえず布団に潜った。

いやいや、だってあたしと沖田くんだよ!?あのイケメン沖田くんだよ!!!イケメン沖田くんがあたしみたいな可愛さもスタイルもなにもかも普通レベルな女相手にする?しかもあたしから誘ったってどういうこと!?あたし何したの!!ていうか、あたしなんかの誘いに沖田くんよくのったな…。沖田くんならあたしなんか相手にしなくても可愛い子よりどりみどりだろうに。いや、それよりも、なんで昨日のこと覚えてないんだあたし!!こんなイケメンにあたしが抱かれるなんて絶対この先一生有り得ないと断言できる。だからこそ一生の思い出として脳内に永久保存するべきものを!覚えてないとかホントあたしの馬鹿…!!


「今さら隠したところであんたの裸なんて昨日隅々まで見てるから意味ないぜ」


理解できない現状にとりあえず布団の中で全力で後悔していたら沖田くんに布団を剥がれた。ちょっと待って沖田くんあたし素っ裸なのにそんな勢いよく剥がないでェェェエ!昨日見たとかの問題じゃないから!!


「よし、一旦落ち着こう沖田くん。落ち着いてあたしに布団を返してくださいお願いします!!」
「まず、あんたが落ち着けよ」


沖田くんの前で裸を晒してるこの状態で落ち着けるわけがない。マジで恥ずかしくて死ねる。いや、でもとりあえず努力はしよう。よし、深呼吸ー。


「ぷっ、…ホントっあんた、見てて飽きねェな…っ、」


何がおもしろいのか笑いを堪えてる様子の沖田くんに暫し呆然。え、なんであたし笑われてるの?ん?そんなことを思ってると、ほら、と何かを渡された。


「布団のがいいってんなら別に布団のままでもいいけどねィ」
「布団よりも服がいいです!!!」


ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる沖田くんから慌ててあたしが昨日着ていた服や下着を受け取った。服ってこんなにも素晴らしいものだったんだね!手元にあるだけで謎の安心感がある。これからは服を大事に扱おう。
歓喜しながらいざ着替えようとするも前を見ると沖田くんがこちらを楽しそうに見ている。普通女の人が着替えようとしてたら後ろ向いたりするものじゃないかな沖田くん…!後ろを向いてくれるよう頼もうかとも思ったけどもう今の状態が全裸だし既にさっきから見られてるしで諦めて何も言わずに下着と服を着た。恥ずかしすぎて泣けるけどもはや自棄だ。あたしを見るのに飽きたのか途中から沖田くんも自分の服を着出したのでちょっとホッとした。


「で、どこまで覚えてんでィ」


あたしが服を着終わると胡座をかいた沖田くんが欠伸を噛み殺しながら問いかけてきたのでとりあえず昨日のことを覚えてる限り思い出してみる。


「えーと、ゼミの飲み会があったところまでは」


そうだ、そういえば昨日はゼミの親睦会だとかで飲み会があったんだった。で、そこで席が隣だった沖田くんと話が盛り上がって、普段そんなに話さないイケメン沖田くんとたくさん話せたことにテンションがあがってついつい飲みすぎちゃったような…。


「つまり、居酒屋で寝ちまったことは覚えてねーと」
「え、あたしお店で寝ちゃったの!?」
「爆睡してて、何度呼んでも全く起きやしねー」


だから仕方なく店から近かった俺の家に持ち帰ったってわけでィ。そう続ける沖田くんに開いた口がふさがらない。お店で寝ちゃうなんてどんだけ飲んだのあたし。


「で、ようやく起きたかと思えば熱いっていきなり服脱ぎ出すし、そのままこっち見て沖田くんがいるーとか言って抱きついてくるしでおもしろかったぜィ」


血の気が引いた。昨日のあたし何してくれてんの!?恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。ていうか、むしろ穴掘ってそのまま埋まりたい死にたい…!もういっそ殺して!誰かあたしを今すぐ殺してえええええ!!


「………沖田くん」
「なんでィ」
「昨日はかなり迷惑をかけちゃったみたいで、なんていうかほんとすみませんでしたァァァァア!」


とりあえず土下座した。いやだって酔ったあたしを家まで連れ帰るだけでもきっと大変だったのにいきなりあたしの貧相な体見せられてその上抱きつかれるなんて沖田くんにとって災難以外のなにものでもないでしょ。ただの厄日でしょこれ。ひたすら謝るしかな、

ぐうぅぅぅぅ

………。


「…ぷっ」


タイミングううううう!!いや本当マジで空気読んでよあたしのお腹…!!謝ってるときにお腹鳴るってなんなの!?沖田くんこれ完全に吹き出してるよね。堪えてるっぽいけど笑ってるよね絶対。もうやだ顔あげたくな

ぎゅるるるるうぅ


「ぶはっ!」


…お腹が空いたのはよーくわかった。そうだよねいつもならもう朝ごはん食べ終わってる時間だもんねでもお願いだから今はしばらく黙ってて下さいあたしのお腹あああああ!!!
沖田くんまた吹き出したよ完全にツボってるよ爆笑だよ。恐る恐る顔をあげて様子を伺ってみるとお腹を抱えて笑っていた沖田くんと目があった。


「俺も腹減ったんで朝飯作ってくんねーかィ」
「………台所適当に使うね」


沖田くんの家なのにあたしが作るの?と少し思ったけど、昨日散々迷惑を掛けたあたしが断れるわけがない。





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確か去年か一昨年辺りに書いたもの。結構長々と書いてたし筆の進みもそこまで悪くはなかったので最後まで書く気満々だったのになんでかいつの間にか放置してた……。そのうち続きが書けたらいいなとは思ってます。けど、多分書くとしても最初から書き直す。文章の書き方っていうかテンション?が高すぎて読み返すとめちゃくちゃ恥ずかしかった……。




2015/06/16

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