総悟と自信のないヒロイン




総悟は、モテる。

それは付き合う前から知っていたことで、あたしという彼女が出来たところで総悟の女子からの人気がなくなることはなかった。総悟を好きになる女の子なんてたくさんいる。そんなたくさんの女の子がいるなか、あたしを選んでくれたのだ。それはわかっているし、総悟が容姿しか見てない女に興味がないのも知っている。だけど、どうしても女の子と話してる総悟を見ると不安になる。話してるとやっぱりあたしよりその子の方がいい女だと思ってしまうんじゃないか、とか。あたしが総悟の彼女になれたのは総悟とたまたま同じクラスで仲良くなれたから。あたしと総悟が違うクラスだったら総悟と仲良くなることなんてきっとなかったし、あたしも総悟に振られる女達と変わらない存在だったに違いない。
それなら、もし総悟に他に仲のいい女の子ができたら…?

総悟があたしを選んでくれたことに自信なんてない。
好きな人が自分のことを好きになってくれたのは運命だとか言う人がいるけど、あたしには偶然としか思えない。運命なんて、信じられない。あたしと総悟は赤い糸なんかで結ばれてはいないし仲良くなることがなければ付き合うことなんてなかった。だからこれは必然ではなく偶然から出来た関係でしかない。


「またくだんねーこと考えてんのかィ」


誰もいない屋上で壁に凭れて立てた膝に顔を隠していると頭上から聞きなれた声が聞こえた。顔をあげないでも誰か、なんてわかる。何も応えずにいると総悟が隣に座る気配がした。


「…ちゃんと断ったぜィ」


何も言ってないのに総悟はいつもきちんとあたしの聞きたいことを言ってくれる。毎回同じことを言うのにいい加減総悟も飽き飽きしているとは思うけど、それでもその言葉にあたしは少しだけ安堵する。それをわかってるから総悟もきちんと言ってくれるのだろう。なんてめんどくさい女。総悟に嫌われてもおかしくないのに、総悟は変わらずあたしの隣にいてくれる。嫌われるのが怖いくせに嫌われそうなことをしてしまうだなんて矛盾している。総悟が女の子に告白されたって平然としてられるような、そんな強い女の子に本当はなりたいのに。




2014/11/05

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