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「あら」

突然ですが、私思い出しましたわ。
この世界が乙女ゲームの世界だと言うことを。私はその乙女ゲームでかすりもしないモブ中のモブの子爵令嬢でございます。
あ、少し違いましたね。正確に言えばヒロインが乙女ゲームの舞台となるこの「ディアローズ学園」に編入する前日に退学するモブの子爵令嬢のレイラですわ。
なぜ、モブなのにそれを分かるのか、ですか?

この学園に編入したヒロインは、お決まりの如く攻略対象がいるクラスに編入します。当然ですが、先生も笑顔が爽やかな攻略対象です。それでですね、ヒロインはゲームの始めで攻略対象の隣に座ります。
その時に、その攻略対象の隣の席だった方はヒロインが編入する前日に退学したと伝えられます。………これでお分かりでしょうか?
察した方もいらっしゃると思いますが、私はその攻略対象の隣の席に座っております。
そして、つい先日。お父様から見合いの場が設けられ、現在話が進んでおります。
そうです。私はヒロインが登場すると同時に退場するモブ令嬢でございます。


お見合いの相手は私よりも20歳歳上でございます。まあ、政略結婚などこの世界では珍しい事ではありませんし、私ももう16歳ですから嫁ぐのが当然の事でしょう。
前世が日本人だったとしても、十数年ここで生きているので今更な話です。お見合いの相手は、少々気が弱そうで強引に攻められたら断れなさそうな弱々しい男です。ですが、浮気や不倫をする様な男には見られませんし、まあ大丈夫でしょう。
万が一した場合には、攻めまくって証拠を集めまくってがっぽり慰謝料を頂きますけれど。お母様にも男の管理はちゃんとする様に教えられていますし、ある程度の理解はありますので対処は出きるでしょう。

ただ、ひとつだけ心残りがありますわ。
私に慕う相手がいるという点です。
ふんわりとしたブロンド色の髪に、蜂蜜を溶かした様な瞳。この学園きっての色男であり、数々の女関係を築いているプレイボーイのロディア様に。来るもの拒まず去るもの追わずを体現した方でございますの。ロディア様もまた攻略対象であり、ヒロインや私達の2歳歳上です。

なぜ、そんな男を好きになったのか、ですか?
ふふ、女はとても単純でございます。ロディア様は絶対に覚えていないでしょうけれど、私とロディア様は幼き頃に1度会っているのです。
ロディア様にとっては幼少期の思い出など、ささいな出来事でしょうが私にとっては大切な宝物なのです。…といったら、大袈裟ですが。本当にささいな話です。
幼い頃に領地から少し離れた場所に両親と出掛けたのです。そこに、花畑がありたまたま出逢った幼い頃のロディア様に白い花…前世でいう白詰草のかんむりをつくってロディア様に差し上げたのです。その時に見せたロディア様の笑顔はとても美しくて………それから、約10年。長い初恋はですわ。
恥ずかしながら、それからずっと初恋を引きずっておりましたの。次に出掛けた時には会えなくて、やがて知った彼の正体が公爵の位を承る家の次男。私の事など一切覚えていないでしょう。そう気づいた時にはショックでしたが、仕方ありませんわ。
あの場所…というよりはあの時ロディア様がいた領地でトラウマイベントが起こりますもの。

簡単に言いますと、ロディア様の美しい容姿に魅了されたメイドの一人がロディア様を襲おうとしたという話です。それからロディア様は女性を信じられなくなります。不幸な事に、それからすぐに母が亡くなり新しく迎えられた継妻にまた襲われる事となります。それからは女は媚を売る最悪最低の生き物という様にひねくれた方になってしまいます。
ですが、彼を攻略するとそれは甘々で溺愛のこちらが赤面してしまう言葉のオンパレート。この乙女ゲームの中で一番の糖分を含んでおりますわ。
まあ、私なんか気にも止めないですし、関係ありませんので、ヒロインが癒してくれる事を願いましょう。
……というより、問題は私の結婚相手についてなのです。あの貧弱男に私の純潔を捧げるのはちょっと…と思うのです。
これが王族でしたら話は別ですが、子爵令嬢などの純潔を気にする事はないでしょう。純潔はテクニックがある方に手解きを頂きたいのです。
結婚相手よりも優位に立ち、目指せ女主人が目標ですので。
それに、せっかくの純潔、見た目潤しい方に捧げたいです。結婚相手は、悪くはないですけど良くもない、そんな感じです。
遊び慣れてて、純潔を捧げても問題なくて、ずるずる関係を引きずらないで、お互いにわりきった関係をもてる相手。

「ロディアさまぁ…」

「今日も格好いいですわぁ…」

「おや?可愛いレディ達、俺を見つめてどうしたのかな?」

あら、いましたわ。
全てをクリアして、尚且つ私の好きな…いえ、好きだった相手。
ピッタリですわ!





****



「んん…」

瞼に何かが触れた気がして、意識が浮上する。目を開けると、そこは見慣れない場所。
ぼーとする私に、微笑みかけるロディア様。ああ、そうでしたわ。昨日、私はロディア様に純潔を捧げたのです。
あの後、行動するのが吉と言わんばかりに…ええ、突然迫った私に優しく対応して頂いて、なおかつ初めてという事で最初から最後まで優しく肌に触れていただきました。女嫌いですが、そういう所があるから女性に人気なのでしょう。

「体は、大丈夫かな…?」

わあ…それが壮絶なる色気というものですか。
ちゃんと服を着用していますが、腰の痛みと掠れて痛い喉がロディア様に捧げたという証でしょう。

「ええ、少し気だるいですが…昨日は優しくして下さりありがとうございます。」

ええ、もうこれで悔いはごさいません。本当に昨日にここが前世でやっていた乙女ゲームの世界だと気付いて良かったですわ。
だって、明日退学する日ですから。昨日、結婚が決まったという連絡が入ってのショックで思い出しましたの。
今日は領地に戻って、嫁入り準備をします。

「レイ」

「なんでしょうか?ロディア様。」

「昨日の様にロディって呼んではくれないのかい?」

甘い声で耳元で囁くロディア様。アフターサービスまで素晴らしい方ですわ。
ロディア様に女性達が寄り付く理由がとてもよく分かります。本当ならもう少しここにいて、声を聞きたい所ですが時間ですわ。
私の気のせいでしょうが、名残惜しそうにシャワーを浴びにいったロディア様に一言メモを残して、私は部屋から出ていきます。

「本当にいい思い出でしたわ…」

これで、覚悟は決まりました。貧弱男に寄り添い、そして鍛え上げる良妻になれるはず。…いえ、私が結婚相手の家の手綱を握ってみせましょう!!






………と、思っていたはずですのに。

「どうしてレイは俺から逃げようとした。レイを傷付けない様に優しくしたのに。なのに、どこの誰か知らない男に嫁ごうとするなんて。」

「いえ、その…元から……」

「レイをずーーーーーーと俺のなのに。花畑であった時からずっと。レイを閉じ込めて俺だけのにするのを我慢して、レイが覚悟が出来るまで我慢していた。醜い容姿を近付けてきやがる雌豚共への相手もレイの為にやっていたのに。レイだけに向けたい笑顔を仕方ないから振る舞っていた。ああ、勘違いしないでくれ。レイ以外に愛想笑い以外向けた事はないから。レイをずっと想っていたのは俺。俺だけのレイ。今更逃げるなんて…許さない。ああ、そうだ。レイ、結婚しよう。結婚すればレイは俺から離れないよな。浮気や不倫なんてした時…いや、俺以外の男に少しでも見惚れたらその男の事殺すから。レイはずっと俺だけを見ていればいいんだよ。」


なんで、こうなったのでしょうか。

花畑の事を覚えているのですね。
女性達を雌豚という表現は駄目ですわ。
すこし男性と話しだけで殺しそうな勢いですね。
なんで、押し倒して今にも襲おうとしているのでしょうか。
聞きたいことはたくさんございます。

ですが。いま、私が思うことは1つだけ。

「私だけを、愛してくれるのでしたら結婚…しますわ。」

まあ、それで理性を失ったロディア様に結果的に襲われて早まったと後悔しますが。





それからは早いものです。
次の日…私が退学する日にロディア様…ロディと夫婦になりました。両親はロディから私への執着を知っていてお父様がロディの魔の手に掛かるのが可哀想だと他の方に結婚させようとしていた様です。…自分からかかりにいった事は言えませんわね。
ああ、勿論の事ですが、結婚と同時に学園を退学しました。私は退学しましたので、学生の身での結婚に色々と言われると覚悟をしていたのですが。まあ、私に辛い思いなんてさせないとキラキラ笑顔で話すロディの事ですから。
既に外堀を埋められていました。
ヒロインは固定イベントに現れなかったロディに大変驚いていた様です。ロディがなぜ居ないのか編入早々聞き周り、結婚していると聞いた時にはハーレムが!と騒いでいたという私の友人情報です。本当に申し訳なく思います。けれど。

「ん?どうしたの、レイ」

「いえ、ロディに愛されて幸せだと思いまして…」

「っ…!レイ!!」

私は幸せです。




ロディア
お色気プレイボーイ担当
そしてヤンデレ担当ではなかった。
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