>> 1th text それは雷門に入学する少し前のおはなし。 彼女……美白は照美ことアフロディと共にイタリアにいた。 休日である今日、不動に願い出て休みにしてもらった美白と監督に外出の許可を取ったアフロディと最近オープンしたばかりのお洒落なカフェにきている。 「この、パンケーキとても美味しそうだわぁ…!」 「ふふ、そんなに喜んで貰えるなんて光栄だな。美白の好きなものを頼んでごらん」 「ありがとう、照兄!」 きらきらと輝く笑顔を向ける美白のふわふわとした金髪を愛しそうな表情を浮かべながら撫でるアフロディ。 どちらも、女神と見惚れてしまうような美貌をお持ちである。 そんな2人に周りがうっとりしない訳がない。 アフロディから注文を頼まれた時、店員は夢心地の様に受け答えをして、パンケーキやアフロディの頼んだ珈琲が運ばれる時も、うっとりとしてしまうのは仕方ない。 「っ…!!!」 「ふふ、そんなに美味しいかい?そんなに喜ばられるなら今日ここに連れていて本当によかったよ。」 「美味しいわぁ!…でも、私の為に無理してほしくないわぁ…」 「分かっているよ。僕の大切なお姫さまを心配させたくないから、ね」 「照兄…!」 片目を閉じて微笑むアフロディに、上気した頬でうっとり微笑む美白。 その後も、美白の頬についたパンケーキの生クリームを手でアフロディが掬いとって舐めて、美味しいねと微笑んだり、アフロディの珈琲が無くなりそうなタイミングで美白が新しい珈琲を頼んだりとしている。 その行動は恋人同士にも見えるが、見た目が似ている為に仲が良すぎる兄妹にしか見えない。 もっとも、れっきとした義兄妹なのだけど。 「やあ、偶然だね」 そう話しかけてきた彼は 「おや、フィディオくんじゃないか」 イタリア代表、フィディオ・アルデナ。 にこにこと笑って手を振る彼は、イタリアでとてつもない人気を誇るサッカー選手。 「あらまぁ!今日は練習試合ではなかったんですかぁ?」 「ああ、今日は久しぶりに集まったから観光になってね」 方をわざとらしく竦めながら答えるフィディオ。 変装も何もしていない超有名人の登場に唖然とする周辺を他所に、フィディオは美白にキラキラとした笑顔をみせる。 「可愛いい子に会えるなんて、今日の僕は本当についているよ。どう?これから…」 「僕達はもう行くから、1人でどうぞ」 「照美は相変わらず手厳しいな」 さらっと流したアフロディに、またもや肩を竦めるフィディオ。美白は先程パンケーキを食べ終わった。 さっさと会計を済ませたアフロディと美白が店を出ていく。 一緒に来るフィディオがいるという点にはなにも言えまい。 「………照兄」 「…ああ、分かってるよ」 「あ、エドガー!」 嫌な予感をした美白とアフロディがその場から抜けようとした時、後ろにいたはずのフィディオが声を掛ける。 「おや、貴方たちは・・・」 女性に固まられている彼。 かなり目立つが、超有名人であるフィディオや容姿端麗すぎるアフロディと美白もこの上なく目立つ。 フィディオが声をかけると、その中心にいた男性がその輪から出てきてしまった。 「相変わらず女性に囲まれてるね!」 「貴方もよく女性に囲まれていますけど…」 エドガー・バルチナス。ある意味一番会いたくなかった相手である。 彼はフィディオを見た後、アフロディを驚いた様子で見て、ばっと美白を見る。 「…お久しぶり、です…」 「ええ、お久しぶりですね。どうしたのですか?貴女の花の様に美しい顔を曇らせて…」 「いえ、大丈夫ですわぁ。」 「ならよかったです。貴女のような可憐な方には笑顔が似合いますから」 きらびやかな笑顔に周囲の女性から黄色い声が起こる。 そして、声を掛けられいる美白は少し顔をひきつらせている。 彼―――エドガーには少々…少々ロリコン疑惑がある為に。 その理由&不動師匠の奮闘についてはまた後日に。 まあ、兎に角キラキラとした笑顔を振り撒くエドガーから美白を隠すアフロディと色々察して気を反らそうとするアフロディがいたことだけ。 「あ?なんだよ、てめぇらか。」 「え…フィディオさん…」 「ん?ああ!アルゼンチン代表のテレス・トルーエだよ!」 いやいやいや、それを聞きたかったのではないんですわぁ! 「アンデスの不落の要塞」と呼ばれる強固なディフェンダー。的確な指示でチームを率いるアルゼンチンのキャプテンだと師匠が教えてくれましたものぉ! まだ、1度も会ってはいなかったんですけれどねぇ…… 「この女は?アフロディに似てるな」 「ああ、僕の可愛い妹だよ。美白って言うのさ」 「はい。宜しくお願いしますねぇ、テレスさん」 ああ、と言いながら頭をポンポンしてくるテレス。少しぎこちないけれど正直、優しくてすごく気持ちいい。 無意識にすりよる美白を、何を思ったのか抱き上げるテレス。 驚くフィディオ、レディに向かって何をしていると怒るエドガーを無視してアフロディを見る。 「…小動物」 「駄目だから。僕の妹は誰にもあげないからね。」 「チッ…美白、ほれ」 「聞いているのですか。何で飴を貴方は持っているのですか!疑わずに舐める貴女も何をやっているのですか。アフロディ、貴方は…微笑ましそうに美白さんを見ていないで下さい!」 一気に言ったエドガー。彼はなかなかの苦労人である。 そんな彼の肩をポンポンと叩いたフィディオだが、彼が一番苦労を掛ける人物である事は忘れずに。 「……飴、だめですかぁ…?」 「いいですよ」 テレスに離してもらい、エドガーの服の袖を引っ張り、身長差から必然的に上目使いになった美白。即許したエドガーを責めるものは絶対にいないだろう。 「……まさかだけど」 「あーーーー!」 アフロディが険しい表情をしてフィディオに向かって話しかけた時、後ろから大きな声が聞こえる。 振り向くと、かなり目立つ二人組がいて、その片方がこちらを指差していた。 「フィディオ達がいると思えば、美白じゃないか!」 指を指した方――ディランは跳ねるように一気に距離を詰めてきての目の前にやってきた。そして、ぎゅうっと強く美白を抱き締めて頬擦りをする。 いつも会うとそうされるのよねぇ…なんでも、頬が気持ちいいとか。 そして、それを… 「こら、ディラン。いつもごめんな、美白」 「いえいえ慣れましたものぉ…」 マークさんが離して申し訳なさそうに謝るまでがデフォですわぁ。 マークさん、師匠並の苦労人ですからねぇ…それでも個性的すぎるアメリカチームを率いるキャプテンですもの。1度、お疲れ様ですとコーヒーを渡したら目を手で押さえて優しさが見に染みるっ…、と言った姿に同情しましたわぁ……。 マークさんが苦労するのを分かっていて行動するディランさん達もどうかと思いますけれどねぇ… 「あら…一ノ瀬さんと土門さんは居ないのですかぁ?」 「2人はジャパンさ。ドモンはにしがきとかいう奴に会いにいくって言っていたよ。カズヤはガールフレンド、ね」 ああ…そうでしたわぁ。 最近やっと付き合える様になったとかなり幸せそうな雰囲気を出していましたからねぇ……10年以上の片想いでしたっけ?モテモテな一ノ瀬さんをずっと仕留め続けるなんて、とても魅力的な人なのでしょうねぇ… 「なんだかんだ、各地の代表が集まってきたね。」 「ああ………僕としては美白と二人っきりの休日を楽しみたかったんだけどな。」 「オウ!ずるい!ミーも美白と居たかった!」 「会ったらいつもベッタリだろ。お陰で色々勘違いされてるし…」 「私とは最近会っていませんでしたね。まあ、それらも全て愛のしr…」 「飴、食うか?まだあるぞ」 「ありがとうございますですわぁ!」 飴を貰ってほわほわと舐める美白。それにほのぼのしていた皆だが、周りがざわめいてきている事に気付く。 まあ、当たり前の事だが。 イタリア代表、フィディオ・アルデナ アメリカ代表、マーク・クルーガーとディラン・キース アルゼンチン代表、テレス・トルーエ イギリス代表、エドガー・バルチナス そして、元中国代表の亜風炉照美ことアフロディ 全員容姿端麗なこともあり、普通にしていてもかなり目立つ。しかも、誰一人として変装をしていないという事実。 「…逃げるか」 誰かが言った台詞に全員が駆け出したのは言うまでもない。 ついた場所はサッカー場。 ちなみに、美白は最初は走っていたが途中で息苦しくなってスピードが落ちてきたところをマークが抱き上げた。 「マークさん、ありがとうございますわぁ…」 「いや、美白は軽いからな。」 微笑む美白と、にこやかに話すマーク。マークがゆっくりと横抱きにしていた美白を地面に足をつかせる。 美白が立ち上がった瞬間、エドガーがばっとマークを離した事にはまあ、触れないでおこう。 サッカー場をみて、笑顔で振り向いたフィディオ。 「ねえ、サッカー、しよう!!」 今日一番のわくわくした声でいう。 それに、テレスがいいじゃねえかと笑い、エドガーが私に勝てますかねと笑みを向けて、ディランがミー達が一番だぜ!と笑顔で告げて、マークがじゃあチームを分けようと笑みを浮かべて。 やれやれとため息をついたアフロディも嬉しそうに微笑む。 「ふふ、やっぱりこれが一番似合っているわぁ…!」 そう言って、小さく笑った美白もまた楽しそうにしている。 ちょっと慌ただしいけれど、私の大切な元日常。 すみません、完全なる私得です…… ほのぼのと考えていたら雷門に来る前の事、何一つも書いていなくね…?となって書き始めました。はい、滅茶苦茶楽しかったです。ほのぼの…?ほのぼのです!ほのぼの、ですから……多分 書きたいことがありすぎて、本当はもっと長かった…これでも短くしました。 機会があれば、また書いてみたい…企画参加、ありがとうございました!! back |