彼女の父親は
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あの後、順調に種目は進み個性把握テストが終了した。相澤の正体は抹消ヒーローの“イレイザーヘッド”だということが判明したりと色々あったが。
相澤の元に集められた生徒達は、結果発表のときを緊張した面持ちで待っている。
 トータルの成績というのは単純に各種目の評価点を合計した数。
相沢はランキングにまとめた結果をホログラムで投影させる。

「ちなみに除籍はウソな」

「ん?」

「君らの個性を最大限だすための合理的虚偽」

さらりと爆弾発言を落とした相澤の言葉に、完全に彼の言う事を信じ切っていた麗日、飯田、緑谷らは物凄い形相で衝撃を受けていた。

「4位、かぁ…」

もう少しいけると思ったんだけどな。
少しむすっとする琉音の頭を軽く焦凍が小突く。なお、彼は2位。
焦凍が百に琉音を渡し、それぞれ更衣室へと入っていく。

「百1位凄いね」

「己の個性をどう使うのか日々精進していますもの。」

「うん、でもやっぱり百凄い」

「百も琉音もベスト5に入っている時点で十分に凄いと思うけど…」

肩を竦める耳郎。その後ろからヒョコっと顔を出したお茶子達も頷く。

「そういえば、自己紹介まだだったよね!葉隠透だよ!」

「私は芦戸三奈!宜しくね!」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「麗日お茶子やよ。これからよろしくねん。」

「耳郎響香。よろしく」

「八百万百ですわ。よろしくお願いします。」

「響吹琉音…みんな、よろしく」

1―A。
7人という少ない女子達はお互いに笑いあった。














「ショート!」

「なんだよ、それ」

「ん?」

「だから"ショート"とか言うの…」

「格好よくない?ヒーロー名みたい!」

「……ありきたりだな」

「むう…」

焦凍とくだらない話をしながら帰宅する琉音。
家に着き、手を洗ったり制服から家着に着替えたりなどした琉音は「疲れたあ」と独り言を零しながら、ベッドに寝転がった。
その時、ベッドの上に転がった携帯が鳴る。
その相手は誰なのか、すぐに琉音は分かった。

「も、もしもし…」

久しぶりの電話で声が上擦ってしまったので少し恥ずかしくなった。

「ふふ、元気そうだね。どうだったかない?入学初日の雄英は」

琉音は柔らかく優しい声に一度きゅっと唇を引き結んだが、すぐに柔らかに綻ばせた。

「うん、楽しかったよ……お父さん。」

「よかった…オールマイトには会ったかな?」

「ううん、今日は会わなかったよ。そういえばね、友達もできたの。オールマイト見たいに"ヒーロー"みたいな男の子もいてね…」

「その子か…継承者は」

「お父さん?なんか言った?」

「何でもないさ。その"ヒーロー"みたいな彼に会ってみたいね。そうそう焦凍くんも元気にしているかい?」

「うん。…まだ炎司さんと仲が悪いし、その会いに行ってないけど、でも焦凍なら乗り越えられる気がする」

「はは、しょ…エンデヴァーも素直じゃない所があるからね。まあ琉音が言うなら大丈夫さ。」

呆れた様子の父にふふっと笑い声が溢れてしまう。
お父さんは、今どこにいるのか。それは私でさえ知らない。
どこで、何をしているのか、分からないけれどお父さんは私と…亡くなったお母さんの為に何かをしているんだろうな。

「お父さん、無理していない?」

「大丈夫だよ、琉音」

「でも…」

「可愛い娘や彼奴等を残して死にはしないさ。…近々ここに帰ってくるしね。」

「本当!?」

「ふふ、本当だよ。ほら、もう寝なさい。明日も学校だろう?」

「うん、お父さん帰ってくるの、楽しみにしてるから。またね」

「ああ、またね。愛しい子」


その言葉と共に電話が切れた。
琉音は携帯を抱き締めて嬉しそうに微笑む。
とても、大好きで優しい父に会える、その事がとても嬉しかった。


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