個性把握テストで
bookmark


「個性把握テスト、かぁ…」

説明もないまま全員、体操服に着替えさせてグラウンドに集合して先生に言われたのは個性把握テスト。
皆が驚く中、マイペースに言った琉音。
まあ、入学式とか面倒だったから嬉しいかも。ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る時間はない、かあ。

「…一理あるな」

「うん、そうだね。雄英は自由な校風が売りだし」

焦凍と琉音が話していると、爆豪にボールが渡される。個性使用禁止の体力テストに個性を使っていいのは雄英ならではだろう。

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!」

砲丸の掛け声が死ねとかなにそれ、面白い。



個性を使って705mという記録を叩き出した爆豪にクラスメイトは声を上げる。8種目全てに個性を使ってもいいらしい。

「よし。トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう」

「除籍……処分」

誰かが言った面白そうに反応した先生が言う。言ったの私じゃないよ。
自由な雄英と有名だったのは知っていたが、まさか教師まで自由だったとはね。あ、さっき言ってたのはこれか。
担任の一存でクラスの除籍が決まってしまうのかとクラスメイトに動揺が走る。
自然災害……大事故……身勝手なヴィラン達……いつどこから来るかわからない厄災。日本は理不尽にまみれてる。と異を唱える生徒の言葉に、相澤は静かに続けた。そういうピンチを覆していくのがヒーローだ、と。

「“Plus Ultra”さ。全力で乗り越えて来い」

 その言葉にニヤリと口角を上げる者、気持ちを引き締める者、緊張と不安により唇を震えさせる者。
まあ、

「私には関係ない…」

「俺と琉音に、な」

焦凍が琉音の頭を軽く小突き、ため息を吐きながらもアッサリと言った。
それぞれ思いを抱えながらも、個性把握テストは始まった。




その言葉の通り、50m走で琉音は1.04秒とさっそく1位を叩きつける。

「凄い個性やんね!」

「えへへ、えっと麗日ちゃんも無重力で飛ばして凄かったよ。」

「お茶子でええよ!琉音ちゃんって呼んでいい?」

「勿論!」

新しく麗日と仲良くなる琉音。
百を見付けた琉音は麗日と手を振って分かれる。
握力測定では、元々握力が弱い事もあり、一番下だった。が、琉音にとってそれは想定内。それより540kgが気になる。
立ち幅跳びでは風でぷかぷか浮きながら限界まで跳んでいた。反則?個性使っていいんだからいいんですよ。
反復横飛びは風で少し体の重心を調節しながら跳ぶ。元々運動神経がいいだけあり、かなりの好成績が出る。
そして、ボール投げ。琉音と焦凍は既に終わっている。どれもそこそこいい記録。これなら除籍はない。焦凍も同じような感じらしくどこか満足げだ。…ちょっと疲れたかも。

「しょーとー…」

「疲れたか?」

「あら、琉音はお疲れですの?」

「んー…百、ぎゅー…」

「えぇ!?」

「はあ…わりぃな、八百万」

「い、いえ…」

百に抱きつこうとしたら焦凍に止められた。なんで。
仕方ないので、いつも通り焦凍に抱き付き、体の力を全て預けて皆のボール投げを見る。麗日の無限に焦凍に抱き付きながら凄いと顔を輝かしていた。
そして、緑谷の番。
あの日見たいずちゃんの個性は多分、これにしか使えないだろうから。
真剣に緑谷を見る琉音に正直、焦凍はあいつにそこまでの力があるのか理解出来なかった。
1回目は46m。個性を先生が消したのだ。
視ただけで人の個性を抹消する個性、抹消ヒーローイレイザー・ヘッド。と言う緑谷。ざわめくクラスメイト。

「メディアに出ないのは仕事に差し支えるから、とか?」

「確かにメディアへの露出を嫌ってそうだな」

琉音と焦凍の言葉は強ち間違っていない。
何かを言われたのか、顔を俯かせる緑谷。そして、真剣な表情になった彼は指先だけを使い、705mを出す。人差し指だけを使って。一つの種目で高得点狙うんじゃなくて犠牲を最小限に次の種目に向かうのか。

「先生。まだ動けます!」




そう笑って言ったいずちゃんはやっぱり面白い。





prev|next

[戻る]