試験を見て思うのは
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寒くて息が真っ白になる今日は、あの有名な雄英高校の入試日。
琉音と焦凍は特待生な為、入試を受けないが、もう一人の特待生と入試を見に向かう。

「わぁ…人が蟻みたい!」

「琉音落ち着け」

たくさんの受験生が集まってくるのを会場の上のモニタールームからキラキラ見る琉音と呆れながら言う焦凍。
その時、扉が開いて女子…多分もう一人の特待生が入ってくる。
琉音はニッコリ笑って女子の所に歩いていく。

「初めまして。私は響吹琉音。あそこにいるのは轟焦凍。特待生の人だよね…?」

「はい、そうですわ。私は八百万百と申しますの。響吹さん、轟くん宜しくお願いしますわ。」

「ああ…宜しく」

「宜しくね。百って呼んでもいいかな…?」

百の身長173cm。琉音の身長167cm。
必然的に上目使いになる琉音。その姿にキュンと来た百。
ふんわりと微笑んで思わず琉音の頭を撫でる。

「勿論大丈夫ですわ。私も琉音をお呼びしても宜しいでしょうか?」

「うん。百、宜しくね。」

ニコニコと嬉しそうに微笑む琉音。ほっこりする百と目を細めて小さく口許を綻ばせる焦凍。
ほんわかとした雰囲気になった時、校長先生が部屋にへと入ってきた。
動物の姿をした愛らしい姿の校長先生は3人をソファに座らせる。

「八百万百さん、轟焦凍くん、響吹琉音さん、推薦入学おめでとうごさいます。」

「それはこちらのセリフですわ。推薦して頂きありがとうございます。」

百の言葉に頷く焦凍と琉音。
校長はホッとした様に胸を撫で下ろす。

「3人共、推薦でなくとも合格できていたでしょう」

それから校長先生は推薦入学生3人に対して、この学校のシステムであったり、様々な話をした。推薦入学である限り、他の生徒の模範となるように羽目を外し過ぎないことなど。
そこまで話した校長がモニタールームから外を見る。

「どんな人物がクラスメイトになるのか気になる所でしょう。入試が終わるまでここで見ていてはどうかな?」

パァァと顔を輝かせた琉音。とても分かりやすい。焦凍も顔には出さないが見る気だ。
百はこれから外せない用事があると申し訳なさそうに校長に伝えた。

「ではみなさん、入学式でまたお会いしましょう」

そう言って校長はモニタールームから出ていった。
百もすぐに帰る準備をし、琉音と焦凍を見る。

「琉音と友人になれましたのに、すぐに帰る事になってしまい申し訳ありませんわ。」

「ううん。大事な用事があるんでしょ?入学式にまた会おうね。」

「ええ!では。」







「わあ!あの人、ボイスヒーローのプレゼント・マイクだよ。ねえ、焦凍!」

「聞こえてるっつーの。」

集中して見させろと言う焦凍。何だかんだクラスメイト…そしてライバルになるであろう受験者を気にしているのは彼なのだ。
それを分かっているからこそ琉音も大人しく入試を受ける受験生を見る。
焦凍は演習会場Aを見ている。あのボンボン爆発させてる人が気になるのかな?
ヴィランの総数も配置もマイクは話していなかった。てことは、状況をいち早く把握するための情報力。あらゆる局面に対応する機動力。どんな状況でも冷静でいられる判断力。そして純然たる戦闘力。それらが求められるのだろう。


琉音はふと演習会場Bを見た。あらかた片付いている中、緑色の髪の青年が1ptもGETしていない姿を見付けた。それぞれが個性を使う中で1度も個性を使っていない彼が気になった。
そんな時、巨大な0ptのヴィランが現れる。

「あれ?この大きい敵…」

「そっちにも出たか。これも試験の一部だろ。普通に考えて可笑しいの思わねぇのかよ、あんなに大きいのにメリットが無いなんてな」

「ん…ここに受かりたいんでしょ?やっぱり、0ptの敵をわざわざ倒すよりも効率を考えちゃう…んじゃないかな」

あ。女の子が瓦礫に挟まって動けない。助ける人は…皆逃げていく。ヒーローになるんだったら助けるもんじゃないかなって思うけど、私も実際試験を受けてたらメリットを考えて逃げちゃうもん。

「あ、」

「琉音、どうかしたか?」

「ううん。何でもない。」

緑色の髪の青年がディランを倒した。
0ptで、ディランを探さなきゃいけないのに。倒さないといけないのに。
自分に何も利益もないのに女の子を助けるためにディランを倒したのだ。
増強型の個性なんだろうけど、使いこなせてないのだろう。右手がボロボロになっている。
残り時間、自分の身の安全、合格に必要なptを天秤に掛けてそれでも一切の躊躇がなかった。
多分、いや絶対に彼はこのディランの意味を知らないのだろう。それでも助けようとした彼は


「…何でそんなに機嫌がいいんだよ…琉音は」

「ふふ、すっごく面白い人を見つけたの。絶対に彼は受かるよ。入学式で会うのが楽しみなの。」

「そうか、よかったな。………ん?"彼"?」

試験が終わり、帰り道。固まる焦凍を余所に琉音は鼻唄をしながら歩いていった。



緑色の髪の少年に早く会いたいな。


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