ヒーロー捕獲大作戦
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スタートの合図が出され、蛙吹と常闇は建物内に足を踏み入れた。
2人の個性は索敵には向いていなく、一階から順繰りに探す。それは琉音達にとって"準備"をする上で好都合だった。

「遅かったな、ヒーロー!」

常闇が核のある部屋に辿り着いたのは、訓練開始から何分か経過したあとのことだった。
時間切れはこちらの勝利となるが、彼らだってそこを踏まえているのだろう。

「…瀬呂くん。梅雨ちゃん居ないから注意して。」

「おう!」

姿を現したのが常闇ひとりだったことを不思議に思った琉音は小型無線器で瀬呂に伝える。
切島は既に常闇に戦闘体制をとっており、言っても聞いてはいないだろう。

常闇ひとりに戦闘を任せることになり、不利な状況に自ら拍車を掛けることになる。
常闇がかなり強力な個性を持っており、それを蛙吹が全面的に信頼していたとしても、こちらが待ちの姿勢でいることはわかっているはずなのだからトラップの可能性だって視野に入れるべきだ。

「俺が見るから、琉音はそこに居てくれ。」

「分かった。切島くんは…多分大丈夫、かな。」

セロテープの中で核兵器にずっと触れながら琉音はセロテープの外側にいる瀬呂に頷く。
その様子を見ていた生徒達の一人…尾白が少し首を傾ける。

「核兵器の場所変わってるよな…?」

「え、本当だ!誰が動かしたんだろ…」

「後さ、核兵器形が少し違くなってないか?」

「えー?気のせいじゃない?」

「あ、いや…すこしゆらって揺れた気がしたんだけど…気のせいかな」










その時、切島が壁に飛ばされる。壁が壊れ、切島が少し痛そうにするが無事そうだ。

「そっちいったぜ!!」

「おうっ!ってあああ!!!」

そこには、ものともしない様子で部屋に張り巡らされたテープを取り払っていく黒い影のようなものの姿があった。それは常闇の足元から出ており、テープが貼り付いている様子もない。

「悪いな瀬呂。俺の個性とは相性が悪かったようだ」

伸縮自在に動くその影は器用にテープの隙間を潜り抜けると、テープの張り付かない部分を持って強烈な腕力でベリベリと剥がしていく。力技でテープを剥がされてしまうことは当然予測していたが、それでもかなり時間稼ぎにはなると思っていたのに。
核兵器に触れている琉音は動けない。そんな時、壁から抜け出しセロテープを強引に切った切島が常闇にへと奇襲をしかける。
常闇は切島の奇襲に受け身を取り、進めない。そんな、常闇を一瞬の隙で瀬呂が捕獲テープで捕獲する。
ほっとした3人だったが、その時瀬呂が声を上げる。

「琉音!蛙吹は上だ!」

「遅かったわね、ケロ。」

核兵器の真上にいる蛙吹。琉音が振り向いた時には、蛙吹は核兵器に触れようとしていた。

「!?」

「そんな馬鹿な…!」

その"核兵器"が消えたのだ。その一瞬の内に瀬呂がセロテープで蛙吹を巻き上げ、切島が常闇を捕まえる。
そして、消えた"核兵器"の隣…琉音が手の平を外側にしていた所に核兵器が現れる。






「ヴィランチーム……WIIIII―――――N!!」


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