彼の個性と私のチーム
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最初の戦闘訓練終了後、緑谷ペアと爆豪ペアを集めての講評が始まった。
緑谷は個性の副作用で保健室に運ばれたのでモニタールームに来たのは三人で、各々の表情は浮かない顔をしていた。特に爆豪は意気消沈の言葉が似合うぐらいの様子だった。

「今戦のベストは飯田少年だけどな!!」

「なな!?」

 まさかのベストに選ばれた事に飯田は驚き、周りは一部を除いて首を傾げていた。

「何故だろうなぁ〜わかる人!?」

「ハイ、オールマイト先生」

今にも自分が言いたい様子だがオールマイトは生徒の自主性を重んじたのか、周りに促すと発言したのは八百万だ。

「それは飯田さんが一番状況設定に合わせて順応していたから、爆豪さんの行動は戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程先生も仰っていた通り屋内での大規模攻撃は愚策。
緑谷さんも同様の理由ですね。
麗日さんは中盤の気の緩み、そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを「核」として扱っていたらあんな危険な行為出来ませんわ。
相手への対策をこなし且つ“「核」の争奪”をきちんと想定していたからこそ、飯田さんは最後、対策をに遅れた。ヒーローチームの勝ちは「訓練」だという甘えから生じた反則のようなものですわ」

百、予想以上に言う。
……そこまで考えられるのすごい……

「ま……まぁ飯田少年も固すぎる節はあったりするわけだが……まぁ……正解だよ。くぅ……!」

あ、オールマイト言いたかったのに予想以上に言われて言えなかった顔してる。
なんか、おもしろい。

「焦凍、次頑張って…頑張んなくても大丈夫だろうけど。」

「ああ。…レベルが違うからな」

講評が終わって次の組み合わせは轟・障子ペアがヒーロー、マシ・葉隠ペアが敵ヴィラン。

「どちらが勝つのでしょうか…」

「ヒーローチームだよ。」

百の言葉に何て事ない様に答えた琉音。呟いた百もオールマイトもクラスメイト全員が驚いた様子でこっちを向く。同じチームである切島と瀬呂が首を傾げながら琉音の方を向く。

「おいおい、まだ始まってねーぞ?」

「ディランだって葉隠がいるから隠蔽に強そうだしな…」

「ううん。それでも、今の焦凍には勝てないよ。…絶対に」


そう言った時にスタートの合図が鳴る。全員がモニターに集中する。
瞬間、琉音以外の全員は何が起こったのか分からなかった。ビル全体が凍らされたのだ。

「仲間を巻き込まず核兵器にもダメージを与えずなおかつ敵も弱体化…」

「最強じゃねぇか!」

寒さに凍えながらも思わず叫んだ切島が琉音の方を向く。

「おめーはそれを分かってたって事か!すげえな!」

「幼馴染みだからね。」

「「「幼馴染み!?!?」」」

皆が声を揃えて言う…先生までも。
あれ?言ってなかったっけ…









2戦目が終わり、再びオールマイトがくじを引く。

「さて、続いて第3戦目は……Hコンビが『ヒーロー』!Jトリオが『敵』だ!」

琉音は切島、瀬呂と顔を見合わせた。正直ヒーローの方が良かったという表情を隠せてない2人に、少し笑う。

「はぁーいまいちピンと来ないよなぁ…」

ビルの中の核兵器のある部屋に入った時、瀬呂がぼやくのを、切島も困り顔で頷く。
琉音はそんな2人の背中をぽんと叩いて、にっこりと笑った。

「ヴィランっていっても、こっちからしたらヒーロー側が敵。核兵器を守るために戦うスーパーマンとか思っていたらどうかな?」

「おお、なるほど…!」

「ものは考えようだな!」

ちょっと2人が単細胞でよかった…そう琉音はこっそり思った。
そして、それぞれの個性を伝えて作戦を立てる。

「…トラップは有効だよね。時間稼ぎにもなるし」

「トラップ?…あ!」

琉音の言葉に首を傾けた瀬呂だったが、すぐに気付き彼はニッと歯並びのいい歯を覗かせて悪戯っぽく笑った。
そして、部屋の奥へと置いた核を守るように部屋の隅目掛けてテープを伸ばしていく。それを見てやっと切島は分かったらしい。

「あー、なるほどな!そういう使い方もできるわけだ!」

「そゆこと」

 彼はそう言うと、部屋の隅々までテープを貼っていく。
これなら時間稼ぎになるし、テープに絡まるかもしれない。

「あとはどうする?テープがあるから俺は残るとしても、核を守るのにもう1人くらい欲しいし、けど3人は多いしなぁ」

「ふふ、あのね提案があるんだけど…」


3人で頭を寄せ合って、なにやらごにょごにょと話し出す。その音声は、モニタールームのオールマイトだけが聞いていた。

「え、そんな事まで出来るのかよ!じゃあ今すぐ直すな。」

「よし!それで行くぞ!俺が一番手前にいるぜ!」


「なんか自信満々みたいだけど、Jチーム何するんだろうね」

「響吹は器用に核兵器の所に向かってるし…」

「瀬呂、テープ全部外してもう一度つけてね?」

話の聞こえないモニタールームの面々は首を傾げる。
オールマイトは評価をつけるボードを片手に、固まっていた。

「(まさか…この子が彼の娘か…)」



第3戦、開幕である。





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