「おい、蜜希!」

「あらあらどうしたんですかぁ、ユーリちゃん」

「ちゃんはやめろっつってんだろ!」

「ごめんなさいねぇ、ユーリちゃん」

にっこり微笑んで言うと、ぐっと黙り混んだユーリちゃん。
ちっと舌打ちしたの聞こえましたからねぇ!まったくですよぉ、どうしてああ育ったのですかねぇ!
昔は蜜希ちゃん蜜希ちゃんって、とっても可愛かったのですけれどねぇー!
本当になんで、こんなに口が悪くなってしまったんですかねぇ…

「で、ユーリちゃんは今日の練習はどうしたんですかぁ?」

「休みっつてんだろ!」

「言ってませんけどねぇ!」

またまた、ぐっと黙り混むユーリちゃん。ツンツンしているユーリちゃんは可愛いですけれど、そろそろいじめるのはやめた方がいいですねぇ。拗ねちゃいますし。ユーリちゃんが拗ねるって言えるのは私だけだとよく言われますけれど仕方ないですよねぇ、また伊達に何年も生きていませんしぃ?

「ふふふ。ユーリちゃん、今日はどうしたのですかぁ?」

ユーリちゃんと私は俗にいう幼なじみなのですよぉ。
私の母が日本人でですねぇ、ロシア人の父と恋に落ちてロシアに移住して結婚して私が産まれたというわけですよぉー!いやぁ、夫婦仲がいいのは良いことなのですけれどねぇ…万年新婚夫婦で2人っきりでよく世界旅行に行って小さい娘を置いていくのはどうかと思いますよぉ。私が精神年齢がなかなかあるので1人でいるのは楽で良かったんですけれどねぇー。まあ、とにかくそんな私を心配したお隣さん…ユーリちゃんの両親がよく私の面倒まで見てくれていたんですよぉ。
それでユーリちゃんとも知り合ったんですけど…本当にその頃は「ロシアの妖精」と呼ばれてもいいくらいには可愛かったんですよぉ。今は「ロシアの妖精」という皮を被ったヤンキーですものぉ!
なんだかんだ、ユーリちゃんはツンツンツンデレなので可愛いですけれどねぇ。

「……ヴィクトルが日本でコーチになりやがった」

「あらまあ」

あのヴィクトルさんが。
ヴィクトルさん…ヴィクトル・ニキフォロフ。ロシアの選手で27歳。世界選手権5連覇中で「リビング・レジェンド(生きる伝説)」と称されるすごい選手。
そんなヴィクトルさんはユーリちゃんと同門で、ユーリちゃんが凄く憧れている人。
ユーリちゃんが、シニアにあがったらプログラムの振り付けをヴィクトルさんがしてくれると約束してくれたと珍しく嬉しそうにしていた時がありましたのですよぉ。頭を撫でても、髪を触っても、辞めろと怒らない日だったので思わず熱がないのか確かめたのはいい想い出ですねぇ。
でも、そんな弟子とかとらないヴィクトルさんがコーチ、ですかぁ。
コーチをしてもらう子が気になりますねぇ!まあ、まずは機嫌の悪くなったユーリちゃんを何とかしないといけませんけれどぉ!

「ユーリちゃんはこれからどうするんですかぉ?」

「ヴィクトルに約束を果たしてもらうにきまってんだろうが!ヴィクトルにぜってーコーチをしてもらうんだよ!」

「あらまあ、それでは日本に行くんですねぇ。」

「それ以外になにがあんだよ」

むっとした表情でいうユーリちゃん。ふふふ、まだまだ子供ですねぇ!ユーリちゃんは無類の強さを誇るロシアの次世代 スケーターなんですよぉ。いやぁ、リンク上にいるユーリちゃんはうっとりしちゃうくらいに綺麗なんですからぁ!
ただ、ちょっと…いやシニアデビューでいきなり世界一になると信じて疑わない野心家なのは心配ですけれどねぇ!
いつか大きな挫折をしそうで、ですねぇ…まあそれは私ではなく同じスケーターしか分からない事でしょうしねぇ。そろそろユーリちゃん離れをした方がいいのでしょうし、丁度いいのでありますのでしょう!

「ユーリちゃんが日本に行くなんて、寂しくなりますねぇ」

「は?」

「たまには連絡して下さいねぇ!幼なじみなのですからユーリちゃんの事が心配ですしねぇー!」

「なにいってんだ、てめぇ」

「てめぇじゃなくて蜜希ですよぉ!ってえ?」

「て…蜜希も行くにきまってんだろーが」

「あらまあ、」

「既に蜜希の親には承諾を得てるしよ、問題はなんもねーだろ。」

いやいやいや、ありますからねぇ。まず、私とユーリちゃん15歳ですからねぇ!15歳で日本に行くとか…ユーリちゃんはいいかもしれませんけれど、私は一般人ですからねぇ!?
あらあら、ユーリちゃんが珍しく悪い表情をしていますねぇ、

「俺の一番のファン、なんだろ?」

「うっ……仕方ないですねぇ。日本に行きますよぉ。」

ユーリちゃんの一番のファンというのに否定出来ませんからねぇ。
ヴィクトルさんにコーチしてもらう人、ユーリちゃんはちょっと凶暴ですけれど可愛い子なので頑張ってくださいなぁ!
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