「なあなあ!」
詳しい詳細は明日となった藍音が体育館から出た時、さっき放り出された一人が藍音に話しかけてきた。
「お前、マネージャーになるのか!?」
「うーん…まだ仮だけどね」
「おお!俺は日向翔陽、よろしく!」
「私は及川藍音だよ。よろしくヒナちゃん」
ヒナちゃん……と複雑そうな表情の日向に微笑んだ藍音はさっきから視線を感じる方を見る。ああ、澤村先輩に放り出された人の一人の彼は………王様だったのね。
「貴方の名前は?」
「……影山飛雄。あんたの名字は"及川"なのか」
「それがどうかしたの?」
「いや…」
それっきり黙った影山。彼が何を言いたいのか分かるけど、教えるつもりはないもの。
「それで、ヒナちゃんと影山君はどうしたの?」
「それが…」
藍音が来る前の出来事を話す日向。 なんというか
「馬鹿」
「「はあああああああ!?!?」」
「元はと言えばこいつが!!!」
「いやお前だろ!!」
お互いを指さして怒る二人。藍音はそんな二人を見てクスクス笑う。それを見て更に剥きになろうとした日向と影山を藍音は指差した。
「協力って大切なの。コートに立つ6人の力が…歯車が噛み合った瞬間が最強になる……まあ、今の君達じゃあ到底無理だけど」
そう言って笑った藍音。
そんな彼女に心なしか、ゾクッとなにかを感じる。
「取り敢えず、協力する事を覚えるのが一番だと思う。じゃあね、ヒナちゃん影山君。」
一瞬感じたゾクッとした何かが嘘みたいにケロッと笑う藍音。 呆気にとられた二人だったが、先に我に返った日向が藍音に元気よく手を振る。一方の影山は誰かに似ていると考えこんでいた。直ぐに日向とどうやって部活に入るのかで揉めて忘れるが。
先輩達に教えられた道から校門から出た藍音。その携帯に電話が掛かってくる。それが誰なのか分かった藍音の表情はきらきらと期待した表情からぶすくれた表情となる。
「…………なに」
「ちょっと!?青城になんでこないの!?俺、すごい楽しみにしてたのに!!」
研磨か鉄朗だと思っていたのに違う人物だった事でたださえ機嫌が低下しているのに、うるさい従兄弟に更に機嫌が悪くなる藍音。
「……うるさい徹兄さん」
「藍音が反抗期になった!だいたい可笑しいと思ったんだよ!受験の時も迎えを断られたり、制服姿もお願いしたって見せてくれないし!藍音の青城の制服見たかったのに!!」
また従兄弟…及川がうるさくなり携帯から耳を放そうとした時、携帯から聞こえるもう一人の声。クソ川、もう諦めやがれ!という声の主が誰か分かる藍音の目はさっきまでの不機嫌が嘘のように輝く。
「一お兄ちゃん!」
「なんでいつも岩ちゃんだけお兄ちゃん呼びなの!?俺の事は兄さんなのに!岩ちゃんだけずるい!だいた…」
「クソ川うるせぇ!!てめぇが藍音大好きなのは十分分かってっから!…藍音、クソ川が悪ぃな。お前の選んだ選択はお前だけの道だ。後悔しなきゃ別に俺はいい。…だからクソ川!!!お前がわがまま言うな!そこで拗ねんなアホ!!」
流石、一お兄ちゃん。 私の欲しかった言葉を言ってくれる。 徹兄さんは、私に過保護すぎる。ことある毎に、心配して電話を掛けてくる。そして、そんな徹兄さんを叱るのは一お兄ちゃん。
幼い頃から周りがドン引きするくらい溺愛されていたことは今でも覚えてる。そして、こんなに必要以上に"過保護"になったのは徹兄さんの負い目であり罪悪感があるからなのも。
それでも、それ以上に私を溺愛しているからって私も一お兄ちゃんも分かっているから何も言わない。
「一お兄ちゃん、徹兄さんに代わって」
「いいのか?」
「うん。」
こうなった徹兄さんは面倒だからね。 一お兄ちゃんに迷惑かけてばかりじゃ流石に申し訳ない。
「藍音!」
「徹兄さん。私はね…」
「知ってるよ…どうして藍音が青城を選ばなかったのか。」
「…徹兄さん」
「仕方ないから許してあげる!その代わり、いっぱいメールするし、電話するから!休みの時はデートしよう!」
及川は、捲し立てる様に言う。電話の向こう側で岩泉に怒鳴られてるが。 まあ、徹兄さんの機嫌がよくなったからいっか。
「そういえば、おばさんが徹兄さん家に帰ってこない事で怒っていたよ」
「げっ!?」
私がお世話になっている従兄弟の徹兄さん達、家族。おばさんもおじさんも本当の娘の様に扱ってくれて嬉しい。
少々徹兄さんに対して厳しいのは兄さんの性格からして仕方がないよね。 徹兄さん暫く寮から帰ってきてないし。
「まずは家に帰って来る事。そうしたらデート、考えるから。………帰ってきてね?」
「勿論!!!」
大声を出しすぎたのか一お兄ちゃんにまたクソ川静かにしやがれ!って怒られてたけど。 ……二人に…特に徹兄さんに仮でも男バレマネージャーをやってるなんて知られたら面倒だから黙っとこうかな。
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