"どうして、誰も…!"
今まで、仲間だって、大切な仲間だって思っていたのに。
"なん…で……"
私は、どうして……
「っ……」
バッと起き上がった藍音は肩で息をする。その額にはうっすら汗が滲んでいる。
「……まだ、私は……」
ぎゅっと目を閉じた時、机の上に置いていた携帯が鳴る。 誰かと確認せずにとって携帯に耳を傾ける藍音。
「…ん…」
「おい、なんて声してんだよ。」
「……鉄朗?」
「……また見たのか。藍音、今日は入学式なんだろ?んな目出度い日にそんな声じゃだめだろ」
優しくて、どこか意地悪そうにいう大好きな声。大切な幼馴染みの一人の声に藍音は安心する。
「っ……鉄ぅ…」
「お、おい、泣く…ちょ研磨!やめ……」
「藍音、クロがごめん…」
「研磨……?」
「そうだよ。入学おめでとう…会えないの悔しいけど、俺達は#memo#を大切に思ってるんだから……あ、時間だから切るね」
少し冷めた口調だけど、心配そうにいう大好きなもう1つの声。私の事を私以上にいつも心配する彼にいつの間にか強張っていた表情が柔らかくなるのが分かる。
「ありがと、研磨。……鉄朗にも言っといて?」
「分かった……つたえ…あ」
「くそっ…研磨!話す時間ねえじゃねぇか……藍音、俺らはお前が笑ってくれればいいんだよ、じゃあな」
やっぱり彼らは変わらない。
大切な大切な私の幼馴染み。
「藍音ちゃーん、そろそろ時間よー?」
「はーい。今下に行く、おばさん」
少女は柔らかく微笑んでいた。
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