一学期も中盤に差し掛かり頭のおかしい学校生活にも段々慣れてきたが、風紀委員にはどう頑張っても馴染めなかった。否、人付き合いという意味で言えば馴染めているのだろうが、仕事の点では全くもって無理な話だった。


「おいみょうじ」
「……ハイ」
「スカート折るなつったよなァ?」
「いやー、そのぉ。背が伸びました!」
「あとお前髪染めたな」
「そうですかね?光の加減でそう見えるだけで見間違いではないでしょうか?」
「風紀委員の身分でルール破るたァ良い度胸だなァ!」
「ヒィィ!!」

私とは逆側の校門に立って服装チェックをしている沖田先輩に助けを求めてみるが勿論期待はしていない。帰ってきた反応は想像通りで私に見向きもしなかった。


「オイ。よそ見してんじゃねェぞ」
「ひっすすす、すみません!」
「風紀委員法度、よく読んどけって言ったよな。知らないとは言わせねェ」

風紀委員法度って何?最初の顔合わせで渡された紙に書いてあったルールのことだろうか?

「あの、沖田先輩だって染めてますよね?髪」
「ありゃ地毛だ」
「地毛ェ?!」
「えっじゃあ近藤先輩は?あの人も茶髪ですけど」
「あれはゴリラだ」
「ゴリラ?!」
「あぁ」

えっ、どういうこと?確かに近藤先輩はゴリラに似ているような気もするが、これは土方先輩なりのボケで私のツッコミ待ちなのだろうか?いや、ここは私も近藤先輩に習って目を瞑ってもらおう。

「実は言ってなかったんですけど私もゴリラなんです。だから許してもらえませんかね」
「ハァ?何言ってんだァ?オメー」
「…………イヤ、ウン、そうですね。そうなんですけど」

土方先輩と訳の分からないやり取りをしていると、向かい側に立っている沖田先輩と、女子生徒が楽しそうに話している光景が目に入る。
まさか、あの人の彼女だろうか?人様の関係に口を挟むつもりはないが、先輩に暴力を振るわれたり虐められたりしていないか心配だ。

「あの人って沖田先輩の彼女さんですか?」
「ア?…いや、姉貴だよ」
「姉貴ィ?!あんな美人で優しそうな人があのDV男のお姉様?!どこをどう間違ったらあんな弟が出来上がるんですか?……や、確かに顔立ちの良さは似ていますが、ッダァァ!!!!」
「俺を呼びやしたか?」

いつのまにか私の近くに瞬間移動していた沖田先輩に、体の関節があらぬ方向に向くような謎の技をかけられる。

「イダダダダ!!!ちょっ何するんですか?死ぬ!死ぬから!!!」
「総ちゃん、駄目でしょ。その子痛がってるわよ」
「姉上、違いまさァ。こいつは大のプロレス好きでこうやって技をかけると泣いて喜ぶんでィ」

ンなわけあるかァ!流石に私の表情を見たらお姉さんも分かってくれるはず、お願いだから助けて下さい。なんでもしますから。

「そうなのね!変わったお友達だこと」
「ちげーよ!!」
「チゲ?あら、貴女チゲが好きなの?私もよ」
「……」

悪い人ではないのだろうがこの姉にしてこの弟なのかもしれない。因みに辛いの苦手なんでチゲ食べれません。すみません。
未だに沖田先輩から離してもらえず痛みに意識が飛んでいきそうになったところでやっと土方先輩の助けが入りDV先輩の腕やら足やらから救出出来たが、おかげさまで体のあちこちが痛かった。



土方先輩と話し始めた時点でこの場の風紀委員全員が服装チェックを放り出していたが先輩に怒られることはなく、それどころかチゲ姉さんとそのまま校舎に入って行ってしまった。え、何?アレなの?もしかして?小指的な?俺はコレで会社を辞めました的な?心底つまらなそうに二人の背中を見つめる沖田先輩を眺めつつ、土方先輩に対抗するネタが出来た気がして逆に私はニコニコしてしまった。


「痛!ちょっと、何するんですか」
「キメェ顔」
「キメェって……私の顔ですか?」
「それ以外に何もねーだろがィ。ニマニマしやがって」
「いや、だってあのヤクザ顔負けの土方先輩がチゲ姉さんと仲良く、」
「俺は認めてねェ」
「……は、はあ」
「あと、姉上にはチゲじゃなくてミツバって名前がありまさァ」
「それは失礼しました」
「……」
「……」

何だか少し変な雰囲気になってしまったところでタイミングを見計らったかのように予鈴が鳴ったので、沖田先輩の後を追って私たちも校舎に向かった。
沖田先輩は土方先輩のことが嫌いなのだろうか。思い返せば私に上履きを投げつけてきたあの日も、本当は土方先輩に投げるはずだったと零していたな……まあ、無関係の私が割って入ることでもないので彼らのことは時の流れに任せよう。


あーあ、体痛いなぁ。労災保険降りないかな。


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