排球middleアイネクライネの続編です


もうすぐ京治君の誕生日だ。何かプレゼントをしてあげたいけれど彼は何をあげたら喜んでくれるだろうか?最近はそればっかり考えている。


『木葉さん』
「どうした?赤葦と喧嘩でもしたか?」
『しないです』
「ま、あの赤葦だしな。で、どうしたんだよ」


練習が終わって京治君と木兎さんがスパイク練を始めたので思いきって木葉さんに相談してみることにした。雀田先輩に聞いても良かったんだけどこういうのは同じ男の人の意見の方がいいのかなって思ったし。


『京治君もうすぐ誕生日なんですけど』
「あー木兎が全員でお祝いするって言ってたな」
『プレゼントをあげたいんですけど何がいいかなって思って』
「プレゼントなぁ」
『何か良い案ありますか?』
「俺達もそこ迷ってたんだよ」


先輩達は先輩達で何かプレゼントをするらしい。先に聞いておいて良かった。被ったら京治君が困っただろうし。


「お前は?何か考えてんの?」
『冬だし手袋でもいいかなって思って』
「月並みだけどそれくらいだよなぁ」
『そうなんです』


木葉さんの言う通り本当に月並みな選択だと思う。手袋とか安易すぎるような気もする。けれどそれ以外に浮かばなかったのも事実だった。京治君に聞いても良かったけどそれじゃプレゼントにならない気がするし。
セッターは指の感覚が命だから手袋も大事だとは思うし。けど他にも何か良い案があるかなと思って木葉さんに相談したんだった。


「まぁ手袋でいいんじゃね?」
『え』
「俺達も手袋以外で考えてみるからさ」
『何か他にも案は無いですかね』
「別に手袋でもいいだろ」
『普通過ぎるかなって』
「ふーん。んじゃお前から赤葦にキスでもしてやれよ」
『……えっ!?』
「その反応だとまだなんだな」
『木葉さんそれ本気で』
「本気本気。結構そういうの嬉しいもんなんじゃね?赤葦お前のこと大事にしてるからお前からいかないと相当先になるぞ」
『え、でも』
「木葉ー!ブロック飛んでくれ!さるが逃げたー!」
「今行く!んじゃ頑張れよ!」


木葉さんは私に核弾道ミサイルを落として去っていった。言われたことを思い返してみても恥ずかしい。顔を触らなくても火照ってるのが分かるし。


「ふーん。んじゃお前から赤葦にキスでもしてやれよ」


結局、木兎さんの自主練が終わるまでこの言葉が頭の中をぐるぐるしていた。キスってどうしたらいいんだろう?と言うかそんなものがプレゼントになるんだろうか?
と言うか結局プレゼントは手袋にするしかないみたいだし。木葉さんに相談した結果悩み事が一つ増えただけだった。


「凛、木葉さんと何を話してたの?」
『え?』
「木兎さんの自主練の間」
『えぇとね、もうすぐ期末テストだねって話をしてて』
「あぁ、そうだね」
『うん』
「一緒に勉強しようか。英語なら教えてあげれるし」
『それは助かる』
「俺にも数学教えてよ」
『数学は得意だから大丈夫』


帰り道、京治君と一緒に帰るのもだいぶ慣れた。木葉さんとのことを聞かれてドキドキしたけれど上手いこと話をそらせた気がする。そうだもうすぐ期末テストなんだ。京治君と一緒に勉強出来るのは嬉しい。と言うことは誕生日当日もテスト週間な気がする。


『え、京治君の家?』
「学校でもいいけど気が散りそうだし図書室じゃ話せないからね」
『いいの?』
「勉強するだけだし別に大丈夫だよ」


あっという間に京治君の誕生日がやってきた。ちゃんとプレゼントも用意した。木葉さんの爆弾発言のせいで京治君の隣にいるといつも以上にドキドキしてしまったけれど考えないようにすればするほど唇を意識してしまう。私の考えてることこれだけは京治君に悟られたくない。バレたらとても恥ずかしいと思う。けれど家に誘われて断るわけにも行かずお邪魔させてもらうことになった。キスを意識しちゃうから家に行けないだなんてそれこそ言えないし。


『お邪魔します』
「どうぞ」


京治君の部屋は至ってシンプルだった。男の子の部屋ってみんなこんな感じなのかな?初めてだから妙に緊張する。いやきっと初めてだからだけじゃないけれど。


「凛、緊張してるの?」
『少しだけ』
「そわそわしてるね」
『うん。あ、嫌とかじゃないんだよ』
「分かってるよ」


京治君はそんな私を見て穏やかに微笑んだ。気付けばこの表情も大好きで見るだけで幸せな気持ちになれる。私も自然と笑顔になれちゃうから京治君は凄いと思う。


「凛は珈琲より紅茶っぽいよね」
『うん、そうだね』
「ちょっと待ってて」
『ありがとう』


私には紅茶を京治君は珈琲だった。珈琲飲めるとか大人だな。しかもブラックみたいだし。それにしても珈琲を飲んでるだけでも京治君は絵になるような気がする。またもや京治君の唇に視線がいってしまいドキドキしてしまった。そうこうしてるとふいに視線が重なって京治君が目を細める。


「俺を見てても勉強は進まないよ」
『うん、そうだよね。勉強しなくちゃ』


見ていたことを相手に知られるのって恥ずかしい。急激に体温が上がって慌ててノートに視線を落とした。京治君に教えてもらうからには英語で良い点数取らなくちゃな。


どれだけ頑張ってたのだろう。一息吐こうと思ってシャープペンシルを置いて顔を上げると京治君が頬杖を付いて此方を見ている。何だか楽しそうだ。目が合ってそれだけでまた胸が高鳴る。


『え』
「凄い真剣に勉強してたね」
『京治君に英語教えてもらうなら良い点数取らなくちゃって思って』
「全然俺の視線に気付かなかったしね」
『ごめん』
「少し休憩しようか」
『そうだね。あ!あのね京治君これ』
「どうしたの?」
『誕生日プレゼントなの』
「あぁ」
『誕生日おめでとう』
「ありがとう。これ開けてもいい?」
『うん』


日付が変わった時点でおめでとうとメッセージは送っておいたから後はプレゼントを渡すだけだ。ドキドキしすぎて忘れる所だった。京治君が丁寧にプレゼントの包装を解いている。


「手袋」
『冬だしいいかなって思って』
「凛らしいね」
『え』
「凄く凛らしいチョイスだと思って。デザインとかも」
『大丈夫かな?』
「手袋買わなきゃと思ってたから」
『それなら良かった』
「大事に使わせてもらうね」
『うん』


嬉しそうにしてくれたからホッとした。京治君が手袋を買う前で良かったよね。誕生日がもう少し遅かったらそれこそ手袋を自分で買っちゃってたかもしれないし。
プレゼントも無事に渡せた所で勉強に戻ることにする。京治君に英語を教えてもらい私が数学を教える。他の教科はお互い分かるところを補いあった。そうやっていつものように穏やかな時間は過ぎていく。


「凛、スマホ鳴ってるよ」
『うん。…………あ』


この穏やかな時間を堪能していたのにスマホを確認してみれば先輩達から個別にメッセージが飛んできていた。


凛ちゃん赤葦と仲良くやってるー?
俺らのお祝いはテスト明けにやるから今日はお前が祝ってやれよ!
木葉がバカなこと言ったみたいだけど気にしなくていいからね!
あかぁーしのこと頼んだからな椎名ー!
俺はすげぇ本気で言ったからな!頑張れよ!


等々だ。仲良しな先輩達のことだろうからきっとみんなで勉強してるんだろう。木葉さんから言われたこと意識しないようにしてたのに。やっといつもの穏やかモードに戻れたと思ったのに。落ち着きつつあった体温がまたもや急激に上がっている気がする。


「凛?」
『うん』
「何かあった?」
『先輩達からだった』
「何だって?」
『京治君の誕生日俺らの分まで祝ってやれよみたいな感じで』
「それだけ?」
『うん…』
「凛、俺に言えないようなこと?こないだも木葉さんとのこと聞いたら困ったような顔してたけど」


あぁ、京治君に心配させてしまったみたいだ。心配させるようなことでは無いんだけどこの話をどう説明していいのか分からない。顔は熱いし心臓はバクバクだ。けれど言わないときっともっと心配させてしまう。京治君は私の変化を感じとるのが上手いから。


『困ってるわけじゃなくて』
「違うの?」
『困ってると言えば困ってるんだけど』
「木葉さんですか?」
『木葉さんが悪いとかじゃなくて』


何とか上手いこと説明したいのに言葉が出てこない。どうやって伝えたら伝わるんだろう。口下手なのがこんなにももどかしいだなんて思ってもなかった。


『誕生日プレゼントの相談をしたら木葉さんが』
「うん」
『き』
「き?」


キスって単語すら京治君に言えそうにない。恥ずかしくてそれだけで死んじゃいそうだ。たった二文字を伝えるだけでいいのにそれが今の私にはとても難しかった。思えば"すき"ってことも京治君に直接言ったことが無いような気がする。あの体育倉庫で木兎さんに言った日以来伝えてない。


「凛」
『うん』
「そんな顔してたら俺勘違いするよ」
『そんな酷い顔してる?』
「酷いとかじゃなくて顔が真っ赤だから」
『わ』
「顔も熱くなってるし」


ふいに頬を撫でられてドキドキが加速する。これ以上ドキドキさせられたら本当に命が危ないような気がする。そんな私を見ても京治君はいつも通りだ。一人だけ穏やかな京治君を少しだけズルく思う。


『わた、私…京治君のこと好きだよ』
「俺も凛のこと好き」


結局"キス"の一言は言えそうにもなくて恥ずかしながらも気持ちの方をお伝えすることにした。こうやって面と向かって言うのは初めてでとても緊張したけれど嬉しそうに表情を和らげてくれたから良かった。


「それだけなの?」


京治君の言葉に驚いてしまった。もしかしていつものように全部見透かしていたのだろうか?京治君みたいに相手の思ってることを知りたいのに私にはまだまだ難しいらしい。


『木葉さんが、誕生日プレゼントに』
「うん、知ってる」


やっぱり京治君は知ってたのか。私の気持ちを読み取ってくれたのか木葉さんに聞いたのかは分からないけれどもう限界に近かったので京治君と目を合わせたままゆっくりと目を閉じることにした。
初めてのキスはとても優しい感触がした。


「誕生日にキスだなんて自分勝手かなと思ってた」
『どうして?』
「俺の都合みたいだし。だから木葉さんに言われたけど気にしないようにしてたんだけど」
『うん』
「凛が絶対にそっちを意識してるなって思ったから」
『ご、ごめん』
「その顔が可愛くて我慢出来なかった」


何て破壊力のある一言なんだろう。せっかく落ち着いたのにまたもやドキドキしてきちゃったし。いったい今日は何回ドキドキすればいいんだろう。


「ほらまた照れたよね」
『京治君が』
「俺は本当のことしか言ってないよ」


そうやって私の頬を撫でると京治君はクスクスと楽しそうに笑った。いつだって余裕そうで京治君はズルい。けれどやっぱりそんな京治君も大好きなんだった。


アイネクライネで赤葦の生誕祭!やっぱりこの夢主も好きだなぁ。
誕生日おめでとう!
2018/12/05

Sweet kiss

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