不二周助二つ年下の妹設定。探し求めるネリネの一年後のお話


今日は英二先輩の誕生日だ。けれど平日ど真ん中の水曜日で先輩には会えそうにも無い。次の日曜日に遊びに行く予定だけれどやっぱり誕生日当日に会いたかったなぁ。直接おめでとうって言いたかったなぁ。


「おー!迎えが来てんぞ!凛!」
『え?』
「エージ先輩が来てるよ」
『え?何で何で?』
「そんなの本人に聞きゃいいだろが」


高校2年になってテニス部のマネージャーをやることになった。人手不足って聞いたのもあるしもっとテニスのことを詳しく知りたくなったから。英二先輩はまた「おチビだけズルい!」ってぶーぶー言うし越前君は「もっと早くやれば良かったのに」って笑った。
部活の引退はしたけれど早々に大学の決まった桃先輩と海堂先輩は暇があると部活に顔を出してくれる。今日も桃先輩が顔を出してくれてその帰りのことだった。
制服に着替えて部室前へと戻ると桃先輩と越前君がいる。言われた通り指差された方を見てみると英二先輩が立っている。え、学校に来るなんて聞いてない。手を振りながらこっちに走ってきてくれてるけどどうしてここにいるんだろ?


「凛ー?その顔はびっくりした?」
『かなり』
「サプライズ大成功だね!」
「久しぶりッスねエージ先輩」
「桃もおチビも元気そうで何より何より!」
「ッス。それでどうしたんスか?卒業以来学校に来るのなんて初めてですよね?」
「それはね、お姫様を浚いにきたんだよ」
『え』
「相変わらずラブラブッスね」
『ちょ!せ、先輩!?』
「ってことで凛は連れてくからね!」
「また休みの日にでもテニスしましょうねエージ先輩!」
「オッケーオッケー!おチビも強制参加だかんね!」
「ウィーッス」


さくさくと話が進んでいき、気付けば宣言通りお姫様抱っこだ。先輩!まだ周りに沢山人がいるんですけど!そんなこと気にする素振りもなく先輩は楽しそうだ。


『先輩、あのどうして』
「そりゃ俺の誕生日だしちょっとでもいいから会いたくなっちゃったんだよね」
『ほんとですか?』
「ほんとほんと!おーいし達がお祝いしてくれるって言ったんだけど明日にしてもらったし」
『私も、英二先輩に会いたいなって思ってたんです』
「それなら良かった!」


来客者用の駐車場に車が停めてあった。
免許は夏休みに取ったって言ってたけどこの車はどうしたんだろう?


「上の兄ちゃんがね新しく車を買ったからそのお下がりが俺のとこ来たんだよねー!」
『わ、素敵ですね!』
「まぁこれが誕生日プレゼントってことなんだろうけどさ。んでんで早速今日くれたわけ。そしたら一番最初に凛を乗せたくなったの」
『わぁ、ありがとうございます』
「はい、じゃあお姫様どうぞー」


先輩の好きな色のその車はハリアーでお兄ちゃんのお下がりだと言うのにまだとっても綺麗に見えた。助手席側で降ろしてもらうと先輩がドアを開けてくれて、なんだかドキドキだ。私が助手席に座ったのを確認してドアを閉めてくれた。


『英二先輩、これ本当にお下がりなんですか?』
「凛もそう思う?兄ちゃんが車が大好きなんだよねー。んで運転も凄い上手いの!だから綺麗なだけで実際は結構走ってるんだよ」
『先輩の好きな赤色ですしね』
「そうそう!ほんとは下の姉ちゃんが欲しいって言ったんだけど姉ちゃんは車もう持ってたからね。俺が駄々こねて貰っちゃった」
『ふふ、良かったですね』
「下の姉ちゃん激おこだからしばらく口聞いてくんないかもだけどね」
『大丈夫なんですか?』
「んー多分大丈夫!」


年が近い人の運転の車に乗るって初めてかもしれない。なんだか不思議だ。去年までは先輩だって私と同じ高校生でまだ車の運転なんて出来なかったのに。隣で車を運転してる英二先輩が途端に大人に見えてまたもやドキドキした。


「どっか行きたいとこ無いのー?」
『先輩が隣に居てくれるのならどこでもいいです』
「俺ばっかり見てたらドライブにならないよ」
『だってなんだか知らない人みたいでドキドキで』
「車の運転してるの見せるの初めてだもんね。たまにはこういう俺もいいでしょ?」
『はい、格好良いです』
「ほんと正直さんだよねー。あれ?不二も免許取ったんじゃないの?」
『お兄ちゃん大学から一人暮らしだからあんまり帰ってこなくて』
「あぁ、そだね。不二は青学の大学部に進学しなかったもんなー」


お母さんとお姉ちゃんは周助お兄ちゃんの運転する車に乗ったって言ってたけど私はタイミングが合わなくてまだ乗せてもらっていない。だから英二先輩が一番最初だ。


「んじゃ俺が一番だったり?」
『お姉ちゃんの運転する車には乗ったことありますけど』
「手塚とか乾とかも無い感じ?」
『そうですね』
「あ、逆にルドルフの観月とかも?」
『裕太お兄ちゃんは乗ったって言ってましたけど』
「やりい!じゃあ俺一番だ!」
『そんなに喜ぶことですか?』
「勿論!俺だって一番に乗せるのは凛がいいって思ったしさ、凛も最初が俺ならもっと嬉しくなるじゃん!あ、だからって一番じゃなかったとしても落ち込んだりはしないけど」


確かに逆を考えたらそうかもしれない。私も将来免許を取ったら一番に英二先輩に乗ってもらおう。きっとまた喜んでくれるはずだ。


それから初めてのドライブデートを終えてそろそろ夕飯の時間だから帰ろうかってなった時だった。今更先輩の誕生日プレゼントが手元に無いことを思い出したのだ。と言うか大事な一言すら言ってない!


『先輩!』
「どしたの急に慌てちゃって」
『誕生日おめでとうございます!』
「やーっと気付いたの?遅いよー」
『先輩に会えたことが嬉しくてすっかり大事なこと忘れてました』
「このまま最後まで言われなかったらどうしようかと思ってたよ俺」
『ご、ごめんなさい!』
「うそうそ、大丈夫だから気にしないで」
『プレゼントも日曜日に渡そうと思ってたから今持ってなくって』
「それは日曜日でいいからさ、今からちょっと付き合ってよ凛」
『いいですけどどこに?』
「内緒」
『?』


内緒ってどこに連れてかれるんだろう?そう思ってたのに景色は見慣れた風景を写し出す。あれ、このまま進むと…


『もしかして英二先輩の家ですか?』
「そうそう!今日兄ちゃんも姉ちゃんもみーんな揃ってんだよね!」
『え?』
「んで姉ちゃんが許す代わりに彼女連れてこいってうるさいからさ」
『えぇぇぇ!?』
「あ、不二には許可貰っといたから大丈夫だよ!帰りも俺がちゃんと送ってくし!」
『先輩、私まだ先輩のお母さんくらいにしか会ったこと無いですよ!』
「だいじょーぶい!御墨付あるから平気平気!」


私の予測は当たったらしい。先輩のお母さんにしか会ったことないのにいきなり全員揃ってるとか!慌ててスマホを確認してみればお兄ちゃん達から連絡来てるし。そのどれもが「頑張れ」ってメッセージだった。うう、酷い。
私の心配を余所に英二先輩の家での誕生日会はすんなりと進んでいった。何ならかなりの歓迎ムードだったし。考えてみたら英二先輩の家族なんだからそれも当たり前だ。下のお姉さんにかなり気に入ってもらえたし「こんな妹欲しかった!」とまで言ってくれた。それに英二先輩が「うーん、後四年?や、五年後かなぁ?」とか真面目な顔して言うから私は恥ずかしいし周りはそれを聞いて和やかに笑っていた。


『先輩の家族って賑やかですね』
「五人兄弟だかんねー」
『楽しかったです。うちも誕生日くらいはみんなで集まろうって提案しようかな』
「うんうん、それがいいよ!」
『先輩今日はありがとうございました』
「俺こそワガママ聞いてくれてありがと」
『日曜日も楽しみにしときますね』
「あ、後さ俺本気だからね」
『へ?』
「今はまだ無理なの分かってるけどさ。後四年か五年後になっちゃうけど」
『はい!じゃあ期待して待ってます!』
「凛のそういう素直さんなとこやっぱ俺好きだなぁ」
『ほんとのことですよ?』
「ん、知ってる知ってるー」


数年後に両家親族の食事会が開かれるのはまた別のお話。


去年の生誕祭の一年後のお話にしてみました( ・∀・)ノ菊丸書いてて楽しいなぁ。誕生日おめでと!テニラビも一周年おめでと!
2018/11/28

探し求めたネリネ

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