「せやから祝えって言うとるんやって」
『誕生日は祝えてねだるもんとちゃう』
「俺らは凛から祝って欲しいんやけど」
「凛ちゃん頼むってー」
『えぇ嫌や』


朝からずーっとこない感じで侑治が絡んでくる。何で単なるマネージャーの私がそんなことしなあかんのか。
と言うか仕事の邪魔しやんといてほしい。
相手にするとちっとも仕事が進まないので放っておくことにした。
はよ北さん来んかな。ほんで怒られてしまえばいいのに。
放課後の部活もやること沢山あるんやからな。


「椎名」
『倫太郎どしたん』
「アイツら祝ってあげなよ」
『嫌や』
「別に何かプレゼントをくれって言ってるわけじゃないと思うんだけど」
『ほなどーしろと』
「とりあえずおめでとうって言ってあげれば?」
『その後確実にプレゼントねだってくるやろあの双子』
「…まぁ」


プレゼントなんて何で個別にあげないかんのか。部員でお金出しあって買ったやつで充分やろ。そっちにはちゃんと私もカンパしたんやし、これ以上双子のために使うお金は一円たりとも残っとらん。
それに誕生日やから周りがいつも以上にキャーキャー煩いやん。あの子らから祝ってもらえばえぇやろ。あ、また「誕生日おめでとー」て声聞こえたで。


体育館におると双子が鬱陶しいのでさっさと別の仕事をすることにした。
まぁ北さんが来るまでの辛抱やしな、さっさと準備しよか。


「椎名、これ運んだろか」
『アランさん!そんなことせんでえぇですから』
「ついでやし気にすんなて」
『いや!あかん!エースにそんな重たいもん持たせたらバチ当たってまう!』
「こんくらいで神さん怒ったりせんやろ」
『あ!アランさんあかんて!』


部員全員分のドリンクを準備した所でアランさんが通りかかったらしい。
その籠想像以上に重たいんやからあかん!
私の制止をさらりとかわしてアランさんが籠を持っていってしまう。
ほんまあかんやつそれ。アランさんにさせる仕事とちゃうし!慌ててその背中を追い掛けた。


「凛ちゃんめっけ!」
「何しとったんや凛」
『げ』
「「げってなんやそれ」」


アランさんを追い掛けてたから双子のことが一瞬頭から抜けた。体育館に入った途端にこれや。あぁもう今日は何でこないしつこいんかなぁ。結局アランさんに最後まで持たせちゃったやん。


『侑治のせいやからな』
「「は」」
『アランさんにせんでもいい仕事させちゃったやないか!こんのド阿呆!』


イライラが頂点に達したので二人にぶちまけてアランさんへと謝りに行った。
二人がどんな顔をしてたのかは見とらん。そんな暇無かったし。


『アランさんすみません』
「軽いもんやで気にすんな。それより何かあったんか?侑治に怒鳴っとったやろ」
『誕生日祝え祝えて朝からずーとやかましんですあの阿呆ら』
「朝にみんなで祝ったんに何言うとるんやろな」
『そうなんですよ。何でもっかい祝ったらなあかんのやろ』
「まぁそろそろ監督も来るやろから辛抱やな」
『ですよね』


アランさんの言う通りその後直ぐに監督と北さんが来たので双子が私に付きまとうことは無かった。北さんの隣にずーっとおったら双子が大人しくてえぇかもしれん。


「椎名」
『銀?どしたん?』
「お前おめでとうくらいいい加減に言うたれや」
『銀までそれ言うん?』
「お前は見とらんかったから知らんのやろうけど鬱陶しいんやて」
『誰が?』
「侑と治」
『そんなんいつもやん』
「ちゃう。練習中もや。おかげで北さんに怒られまくりやぞ」
『はぁ?』


大量の洗濯物をたたんでから体育館へと戻ってきたら休憩中らしい。
銀がスススと寄ってきて私に話し掛けてきた。
銀が指差した方を見てみれば双子が監督と北さんに怒られとる。ざまぁ。


「お前今鼻で笑ったやろ」
『あ、バレた?』
「隠してなかったやろが」
『だって朝からストレス溜まっとったし』
「とにかくあれどうにかしろや」
『えぇ』
「お前付き合い長いやろ」
『単なる腐れ縁なだけやし』


あ、銀がイライラしとる。このままだと頭にチョップされかねないのでしゃーないから何とかしてあげることにした。


『銀、一個貸しな』
「は?何で俺が」
『豚まんで許したるわ!』


豚まん一個でどうにかなるんなら安いもんやろ。安上がりやしな、感謝しいや銀。
そろそろーっと説教されてる侑と治の背中から二人へと近付いていく。
おもくそ不機嫌顔やん。おもしろ。


『侑治、練習ちゃんと集中せんと誕生日お祝いしたらんよ』
「「はぁ?」」
『祝わんくていいのならいいわ』
「お前があかんのやろが」
「んなこと言うなら最初から祝っとけやボケ」
『ほんなら今日頑張った方だけにお祝いするわ。帰りに北さんに決めてもらうからな』
「「は」」
『いいですよね?』
「二人が真面目に練習するならえぇで」
『だって。気張って頑張り』


双子が不機嫌過ぎてイラッとする一言をそれぞれ言ってきた気がするけれどここで私がキレたらそれこそ三人揃って北さんの説教コースになるのでグッと我慢した。
返事を聞かずに自分の仕事に戻ったけど北さんの「練習再開するで」って声が聞こえたからとりあえず大丈夫やろ。
さ、仕事仕事ー!


「それで結局どっちが練習頑張ったって北さんは言ってたの?」
『あ、忘れとった』
「それは俺やろ」
「や、ツムより俺のが今日は調子良かったで」
「サムは調子悪かったやろが。何回もミスしとったし」
「お前も一緒やろ!」
『喧嘩すんなら家帰ってからにしいや。ここですんなら祝ったらんよ』
「お前ほんま怖い」
『あ、銀!豚まんありがとう』


部活が無事に終わった帰り道。
いつものように五人で帰る途中で倫太郎に詳しい話を聞かせろって言われたから説明してあげた。北さんに確認すんのすっかり忘れとったし。私の言葉に黙った双子がおもろい。


「椎名、意地悪しないで言ってあげなよ」
「そうやで」
『と言うか何でそんなおめでとうに拘るん?』
「「「「は」」」」
『沢山周りから言われたから別に私が言わんくてもえぇやろ』
「銀、椎名って馬鹿なのかな」
「ちょっと鈍いとは思っとったけどここまでとら」
『何の話?』
「「お前のこと好きやからやろ!こんのド阿呆!」」
『は?』


ふと思った疑問を四人にぶつけてみたら倫太郎は可哀想なものを見たような目で私を哀れんだし他三人はぽかんとしていた。
もう一度疑問をぶつけてみたら今度は双子が一言一句同じ言葉をシンクロしながら吐き出した。こんだけ長い文章被るとか珍し。


「椎名、今告白された自覚ある?」
『一応』
「何でそんな冷静なんや」
『だって私のこと好きやとかウケる』
「侑と治が普段そんな素振り見せなかったから駄目なんだろうね」
「せやろな」
『侑治、誕生日おめでとうな』
「「そんなら俺と」」
『それは嫌や』
「なんやねん!今どっちかと付き合うて言うとこやろ!」
「ツムよりは俺のが煩ないで」
「お前も一緒やろ!何抜けがけしとるんやサム!」
「銀、どっちと椎名が付き合うか賭けしようか」
「俺どっちも無理やと思う」


二人が詰めよってくるのをかわしながら倫太郎と銀の周りをくるくるおいかけっこした。
今のところどっちとも付き合うとか考えられへんから堪忍なー。
と言うか何で誕生日おめでとうて言うただけでどっちかと付き合うって話になんのかいまいち分からんのやけど誰かこれ理解出来る?


夢主に振り回される双子でした(笑)さらさら書きなぐってごめん!
ギリギリ日付け変わっちゃったごめん!
ツムサム誕生日おめでとうございました!
2018/10/06

狐の姫さん争奪戦

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