『あ、雨』
「マジかよ。今日雨降るとか天気予報言ってたか?」
『どうだろー?』
「しかも何でこんな急に土砂降りなんだよ」
『あ、じゃああっこで雨宿りしてこうよ?』
「はぁ?お前本気?」
『仕方無いでしょ。ほら行こ』


サークルの飲み会の帰り、友達の椎名と駅までの近道で裏通りを歩いてる時だった。
突然降りだした雨にテンションだだ下がりだ。
雨とかマジ萎える。せっかく気持ちよく酔っぱらったっつーのによ。
走った所で駅に着く頃にはびしょ濡れだろう。
さてどーするかと思ってたら椎名がラブホを指差して提案した。
お前それ誘ってるとしか思えねぇんだけど。
ま、向こうがその気なら俺は遠慮しねぇからな。
既に小走りでラブホテルへと向かう椎名の背を追いかけた。


『わ!凄い!何処にする?』
「雨宿りなんだろ。どこでもいいだろい」
『ねぇ、プールとかあるよ!』
「はいはい、そんな部屋俺達には必要無えから普通のとこにすんぞ」
『あ、丸井勝手に選んでずるい!』


や、単なる雨宿りだろ?
そんな張り切って選んでどーすんだよ。
別にシンプルな部屋で問題無えし。
ヤれりゃ問題無いんだからな。
そこそこシンプルな作りの部屋を選ぶとカードキーが出てきた。
それを取ってさっさとエレベーターへと向かう。
つーかコイツ警戒心とかねぇのかよ?
無防備過ぎんだろ。


『おお!結構広いね!』
「まぁ安くは無かったからなー」
『そっか』
「俺風呂溜めてくる」
『え?』
「雨止むまでやること無えだろい?雨に濡れたしそれまで風呂にでも入るわ」
『分かったよー』


緊張とかしねえのかな?
まぁこの年になりゃそこそこ経験はあるか。
そもそもそうじゃなかったら雨宿りにラブホに入ろうだなんて普通は言わないだろうし。
湯船に適温でお湯を溜める準備をして戻ると椎名がソファで何やら唸っていた。
何やってんだアイツ。


『あ、丸井』
「何見てんだよ」
『ほら見てー最近のラブホってご飯豪華だよねぇ』
「あんだけ食ってまだ腹減ってんのかよ」
『私は飲み専だったならそんなに食べてないんでーすー』
「そうだっけ?」
『そもそもテーブル違ったでしょが』
「あー確かにな。んで何か食うの?」
『軽く食べたいなー。後もうちょっと飲みたい』
「んじゃ俺も食う」
『何食べたい?』


そこは「お前」とか言うとこなんだろうけどもっかい酒飲むのならもうちょい後でもいいかもな。「適当でいいぜ」と告げてテレビの電源を入れた。
こんな時間じゃ大した番組やってねえよなぁ。
つーか雨宿りっつったけど終電終わっちまったら帰れねえよな?
そしたら結局泊まりだよな?
コイツってそこまで考えずに雨宿りしようって言ったんだろなぁ。マジ男に対しての警戒心無さすぎ。


『頼んだよー』
「おお、サンキュ」
『何観るの?』
「なーんもやってねぇ」
『じゃあお笑いでも観ようか』
「ま、それくらいがいいかもな」


料理が届くまでの間に交代で風呂にも入った。
俺は面倒だからガウンを着たけど椎名は元の服を着ている。
多少濡れてんだろうしガウンにしときゃいいのに。脱がしにくいだろい。


『この芸人さん面白い!』
「普通ここでこんなボケ言わないよなぁ」
『それがいいんじゃない?』
「まぁなー」
『あ、ほらまただ!』


缶ビール片手に椎名がテレビを指差してケラケラと笑っている。
まぁ確かにこの芸人は面白えけど俺としては飽きた。そろそろ次の行程に移りたい所。


「なぁ」
『ん?どした?』


少しだけ低めの声で椎名の耳元へと語りかける。
椎名は笑顔のままこちらへと向き首を傾げる。酔った女って色っぽいつーかそそられるもんあるよなぁ。
無意識にやられるのが一番やばいし。
とりあえず椎名の手から缶ビールをもぎ取りテーブルへと置く。


「もう全部食っちまったし俺としてはデザート食いたいとこなんだけど」
『デザート?相変わらず甘いもの大好きだよね丸井って』


『何食べるー?付き合ってあげてもいいよー?』なんて呑気にメニューに手を伸ばそうとした椎名の手を止めてこちらへと引っ張った。
ついでに言うと酔っぱらった女はいい感じに力が抜けてるから楽チンだ。


『は?どうしたのさ丸井』
「そっちのデザートじゃねぇよ」
『はぁ?』
「ま、気にすんな。俺下手くそじゃねぇし」
『ちょ!マジか!』
「おお、マジマジ」


そのまま椎名を抱えてベッドへと移動する。
ソファでもいいんだけど女って嫌がること多いんだよな。
じたばた暴れてるけどまぁそれも酒のせいか全然力が入ってねぇし。


『丸井、冗談だったら止めてってば!』
「俺はすげぇ本気。つーかお前からここ誘ったんだろい」
『それは雨宿りしたかったからだし』
「あのな、男をラブホに誘った時点でその言い訳は通用しねぇの。その時点でお前の負けな」
『いやでも彼女いるよね?』
「それはそれ。んで目の前に旨そうなもんあったら食うだろ普通」
『いやいやいや、駄目だよ丸井』
「駄目じゃねぇって。嫌なら本気で抵抗しねぇと」


ま、酒のせいで力なんて入らねえだろうけどな。
本気で抵抗される前に椎名にキスをして黙らせた。こうなるともうなし崩しだ。
俺に抵抗出来るような女はそもそも俺のことラブホに誘わないだろうし。
美味しくいただかせて貰うぜ椎名。


『丸井最低』
「お前だって抵抗しなかっただろい」
『だからって』
「眠いしお前もさっさと寝ろよ。朝イチで帰らないと講義遅刻すんぞ」
『あぁもう雨宿りしようとか言わなきゃ良かった』
「今度からは気を付けろよ」
『お前が言うか!』


なんだよ、ちゃんとムードは作ってやっただろい。無理矢理そっちに持ち込む男だっているんだから感謝してもらってもいいくらいだ。
つーか彼女に連絡してねぇ。いいか、また明日で。
アラームをセットしてさっさと寝ることにした。
椎名はそこそこ美味しかったんでゴチソーサンでした。


ラブホで雨宿りをしようseries第一弾。
そもそもブン太はやれない女とはラブホに入らなさそう。彼女が居ても浮気はしそう。
興味無い女の子に雨宿りしようって言われたら「お一人様でどーぞ」とか言って濡れながら帰りそう(笑)
線引きはしっかりしてそうだけど。そんな妄想から生まれた作品でした(笑)
2018/09/28

丸井ブン太の場合

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