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━━2年6組赤葦京治至急職員室まで来ること。繰り返します。2年6組赤葦京治大至急職員室まで来なさい。━━━


「あかぁーし!呼ばれてんぞ!」
「何したの〜?」
「何かやらかしたんじゃね?」
「赤葦がやらかすとか木兎じゃないんだから」
「呼ばれたのでとりあえず行ってきます。練習続けておいてくださいよ先輩達」


放課後の練習中のこと。赤葦は放送で職員室へと呼び出された。
過去に部活中に呼び出されたことはあってもそれは告白の類いでわざわざ放送で呼び出されたことなど一度も無い。
先輩達にバレないように小さく息を吐いて赤葦は職員室へと向かった。


「失礼します。2年6組の赤葦です」
「おー来たか。部活中なのにすまんな赤葦。妹さんが来てるぞ」
「は?」


赤葦に姉はいるが妹は居ない。
不思議に思いながらも案内されるがまま職員室の応接間へと通されるとそこには何故か主将木兎光太郎の妹の凛がちょこんと座っていた。


『あ、京治君』
「わざわざお前に忘れ物を届けに来たそうだ。小学1年生なのに偉いなぁ」
「そうですか。分かりました。凛、行こうか」
『う、うん』
「帰りは大丈夫か?」
「一緒に帰るので大丈夫です」


凛が赤葦を兄だと言ったことに何か意味があるのだろうと咄嗟に兄のフリをして職員室を二人で抜け出した。
光太郎のことを知らない先生で良かっただろう。知っていたら一目見て凛は光太郎の妹だとバレていただろうから。


「凛さん急にどうしたんですか?」
『あのね、光ちゃんにバレないように京治君にどうしても会いたくて』
「何かありました?」
『違うの。あのねこれ』


二人で廊下を歩きながら話していると凛が封筒を取り出した。
受けとるとそこには「しょうたいじょう」と書かれている。


「招待状?」
『光ちゃんの誕生日なの。日曜日に誕生日パーティーするんだけどパパが夜勤で居ないから京治君達も来てくれないかなって』
「俺達もいいんですか?」
『ママもその方が光ちゃん喜ぶって言ったから』
「と言うことは木兎さんには内緒ですね?」
『うん、そしたら光ちゃんびっくりするよね』
「分かりました。じゃあ当日俺以外はみんな先に木兎さんの家に行くことにしましょう」
『出来るの?』
「大丈夫ですよ」
『じゃあ宜しくお願いします』
「凛さんってケータイ持ってるんですか?」
『うん、パパが買ってくれた』
「じゃあ番号教えてください。俺も教えるんで何かあったらいつでも連絡してください」
『はい』
「帰りはどうします?連絡見てきますか?」
『ママが車で待ってるから』
「家族ぐるみの計画なんですね。じゃあそこまで送ります」
『京治君ありがとう』


凛を母親の車へと送り赤葦は体育館へと戻った。


「あかぁーし!何だったー!怒られたのかー?」
「ちょっとクラスでの呼び出しだっただけです」
「怒られたんじゃないのか?」
「赤葦がそう簡単に怒られるわけないだろ。お前じゃないんだぞ木兎」
「なーんだ!んじゃ練習続けんぞー!」


木兎がコートに戻るのを見送って赤葦はホッと一息吐いた。


「どうしたんだ?」
「凛さんが来てたんですよ」
「凛が?どうしたんだ」
「木兎さんの誕生日パーティーのお誘いですよ鷲尾さん」
「あぁ、そうか。もうすぐ木兎の誕生日だったな」
「サプライズで俺達を呼びたかったらしいですよ」
「いつだ?」
「次の日曜日ですよ」
「分かった。じゃあ木兎以外に伝えておけばいいんだな」
「宜しくお願いします」


鷲尾経由で光太郎のサプライズ誕生日パーティーを周りに伝えていく。
光太郎だけが知らないまま日曜日当日となった。


「じゃあ赤葦後は宜しくね」
「木兎の誕生日プレゼント持って先に向かってるからね〜」
「宜しくお願いします」
「赤葦、木兎の家って」
「地図アプリのスクショ鷲尾さんに送っておきました」
「お前ほんとハイスペックだよな」
「普通ですよ」
「あかぁーし!早くトス上げろってー!」
「呼ばれたんで後は宜しくお願いします」
「了解っす」
「じゃ後でな」


部活を終えて個人練で残る光太郎と赤葦を残して他の部員達は颯爽と帰っていく。


「アイツら何であんなに急いでんだ?」
「さぁ?」
「ま、いいか!んじゃ赤葦どんどんトス上げてけよ!」
「木兎さん、雀田さん達も帰っちゃいましたから今日はそこそこにしてくださいよ」
「気持ち良くスパイク打たせてくれたらな!」
「そこ俺次第じゃなくて木兎さん次第なんですけどね」


今日長引くのはあまり宜しくない。
赤葦はまたもや人知れず小さく溜息を吐くのだった。


『いらっしゃい』
「凛ちゃん久しぶりー」
「お祭りで会った以来だよな」
『今日はみんな来てくれてありがとう』
「木兎の誕生日会だもんな」
「凛ちゃんのお誘い断れるわけないもんなー」


主将副主将を除いた七人は木兎家へと辿り着いた。凛が出迎えて中へと通す。


「あら皆さんいらっしゃいー」
「大人数ですみません」
「いいのよ、沢山の方が光太郎も凛も喜ぶから」
「じゃあ私達お手伝いしますね」
「あら、助かるわ。料理が沢山なのよね」
「じゃあ私とかおりでお手伝いしてくるね〜」
『あのね、まだ飾りつけ終わってないの』
「じゃ俺達は凛ちゃんのお手伝いするか!」
「そうっすね。凛ちゃん何からやる?」
『えっとじゃあ』


マネージャー二人がキッチンで母親を手伝い始めたので残る五人は凛を手伝うことになった。
凛の指示でリビングを誕生日仕様に飾りつけていく。


「よし、満足した!」
「それなら良かったです」
「んじゃ帰るか」
「あ、俺今日木兎さんんちに用事あるんで」
「赤葦が?何で?」
「凛さんに頼まれてたもの届けに行くんですよ」
「んじゃ赤葦一緒に帰るかー!」


普通の人間はこんなことを言われたら怪しむだろう。そこを受け流してしまうのが梟谷主将の良いところと言えば良いところなのかもしれない。
二人は帰り支度をし連れだって木兎家に帰ることとなった。


「赤葦今から向かうってよ!」
「料理も準備間に合いそうだよ〜」
「こっちも飾りつけ完璧だな!」
『うん、完璧!』
「よくこんだけ一人で用意したな凛」
『光ちゃんのために頑張ったの』
「木兎こんな可愛い妹いていいよなぁ」
「凛ちゃん木兎大好きだもんな」
『うん、光ちゃん大好き』


そろそろ家に着くとの赤葦からの連絡に木兎母凛梟谷部員が玄関へと静かに並ぶ。
全員が凛からクラッカーを持たされておりワクワク顔だ。


「じゃあ凛ちゃんのせーのの掛け声に合わせてだな」
『うん!』
「凛、ほら静かにしなさい。光ちゃんの声聞こえたわよ」


木兎母もなかなか楽しそうだ。
外から「あかぁーし、そいや俺が凛へのお届け物預かれば良かったんじゃないか?」との声が聞こえる。
「今更ですよ木兎さん」赤葦の言うとおり今更である。
光太郎が家の鍵をがちゃりと開けて玄関の扉を開いた瞬間だった。


『せーの』
「「「「「「「「『誕生日おめでとー!』」」」」」」」」
「おめでとうございます」


凛と木兎母プラス部員七人の声が玄関へと響きわたる。
それに付け加えるように後から赤葦がそっと一言付け足した。


「お前ら!先に帰ったと思ったらうちに居たのかよ!」
「おめでと木兎〜」
「泣くほど嬉しかったの木兎ー」
『光ちゃんおめでと』
「みんなして先に帰るからついに俺赤葦以外に嫌われたかと思ったんだぞ!」
「そんなことあるわけないだろ」
「凛さんからお誘いもらったんですよ」
「いつの間に!」
「それは内緒だよな?」
『うん、内緒!』
「ほら光ちゃん、早く着替えてらっしゃいな」
「分かった!」


部員が勢揃いしてたから嬉し泣きかと思ったら余計な心配をしていたらしい。
木兎母に促され光太郎は自室へと消えていく。


「嫌われたかと思ったとかウケる」
「そんな心配してたのか赤葦」
「や、全くそんなこと無かったですけど」
「あぁ見えて繊細だったりするのかな〜?」
「ま、明日には忘れてるだろ」
「そうっすね」
「木兎のことだし単なる照れ隠しだろ」
「木兎がこんなことで照れるか?」
「あの木兎だしなー」
『みんなリビング行こう?』
「そうだね〜」
「先に行ってますか」
「準備は済んだんですか?」
「「「「「「「バッチリ(っす)」」」」」」」
『みんなに手伝ってもらったの』
「それなら良かったですね」


それから着替えた光太郎を加えた11人で誕生日パーティーが始まった。
光太郎は凛から「本日の主役」と書かれたタスキを渡されてご満悦だ。


「ちょ、木兎かなりウケるんだけど」
「雀田、笑ってやるなって」
「木兎〜写真撮るよ〜!」
「おお!凛と撮って雀田〜あとあかぁーし!」
「はいはい、分かりましたよ」
「三兄妹が並んだな」
「どう見ても赤葦が長男だけどな」
「はーい、から揚げ追加ですよー」
『ママありがと』
「「「「「あざっす!」」」」」
「どんどん追加するからねー」


木兎母が張り切ってどんどん料理を追加している。
その端から料理がどんどん消えていくのだから作り甲斐もあるだろう。


「木兎ママ!このグラタン美味しい〜レシピ教えてください〜」
「後から渡すわねー」
「白福はほんと色気より食い気だな」
「だなぁ」
「雪絵はねぇ。こうやって言われてもへっちゃらだからなぁ」
『かおちゃんも美味しい?』
「勿論!凛ちゃんは料理上手なお母さん居て幸せだねぇ」
『うん!』


光太郎の誕生日会はその勢いで夜遅くまで続いた。
盛り上がり過ぎて木兎母が慌てて部員達を帰したくらいだ。


「じゃあかおりちゃんと雪絵ちゃんは私が車で送ってくからー」
「俺は凛とコイツら駅まで送ってく!」
『光ちゃんはい家の鍵』
「凛さんが持っておいてください」
『え?』
「木兎は今日浮かれてるから無くすと困るだろ?」
『分かった』


凛が自分のポシェットへと鍵をしまっている。
光太郎は誕生日会が始まってから浮かれっぱなしなので赤葦がそう言うのも間違ってないだろう。


「お前らほんっとにありがとな!」
「泣くなよ木兎」
『光ちゃん?大丈夫?』
「俺ほんとお前らとバレー出来て良かった!」
「酔っぱらいみたいっすね」
「酒の類いは飲ませてないぞ」
「ナチュラルハイみたいなものですね」
「木兎、俺らも気持ちは一緒だから」
「木葉ー!」
「おい!抱きつくな!鼻水付けんなって木兎!」
『光ちゃん何で泣いてるの?』
「嬉し泣きだから大丈夫ですよ凛さん」
『そっか』
「また凛の誕生日もお祝いしに来るからな」
「お、いいなそれ。木兎のおばさんのメシ旨かったし」
『ほんと?』
「白福と雀田も連れてきてやるからな」
『うん、ありがと』


泣きじゃくりながら凛と手を繋ぐ光太郎に見送られ赤葦達は改札の中へと消えていった。
部員達の表情がひきつっていたのは気のせいではないだろう。
部員達を見送ってコンビニでパピコを買った頃には光太郎も笑顔だった。
手を繋いで仲良く二人は家へと帰っていった。


「凛ありがとな!」
『光ちゃん誕生日おめでと』
「凛の誕生日も俺達でちゃーんとお祝いするからな!」
『楽しみにしとく!』


一日遅れてごめんね木兎!誕生日おめでとー!
2018/09/21

ようこそ!フクロウの王さまのたんじょうびパーティーに。

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