「はぁ?凛本気でそれ言ってるの?」
『うん、本気』
「何で白河なのさ」
『鳴と違って煩くない』
「鳴はまだ坊やだからな」
「カルロも煩い!」
『はいはい、分かったから早く白河の誕生日どうやってお祝いするか考えてよ』
「絶対嫌だね!」
「お前ら揃いも揃ってその王様女王様気質どうにかしろよ」
「『無理』」


私と鳴が同時に返事をしたからかカルロは苦笑いだった。
鳴のこととかどうでもいいから今は白河の誕生日を祝うことに集中したい。
ギャンギャン隣で喚いてるけどもう鳴のことはスルーしよう。
そのために今日のお昼にカルロをお誘いしたんだし。
鳴のことは呼んでないのに何でいるのか謎だ。


「白河は凛のことなんて何とも思ってないんだからね!」
『だからどうにかしたいってカルロに相談してるんだけど』
「ぐ」
「鳴、少しは落ち着けよ。凛の初恋が白河で良かっただろ?全然知らないサッカー部のヤツとかじゃないだけマシじゃね」
『そーだそーだ!』
「サッカー部だなんて言ったら闇討ちしてるとこだし」
『物騒だなぁ』
「ほんとシスコンだよなお前」
「はぁ?そんなんじゃないし!ムカつくから俺教室に戻る!」
『また放課後にねー』


ちらちらこっちを見ながら鳴は屋上から去っていった。
普段だったら追いかけてるけど今日は無理。
そもそもお昼一緒に食べる約束してないし。
さ、邪魔者も居なくなったし本題に入ろう。


『んでどうしようかカルロ』
「白河なぁ。アイツ野球のことしか考えて無いだろ」
『知ってる。鳴とかカルロと違ってほんっとうに女子なんて煩くて煩わしいと思ってる気がする』
「まぁ、な。でもそれをどうにかしたいんだろ?」
『うん。と言うかハードル高い方が燃える』
「お前って良い性格の悪さしてるよな」
『一也と迷ったんだけどそれこそ鳴がブチ切れるかなと』
「御幸はなぁ。と言うかそんな理由なのかよ」
『最初はそんな感じ。今は白河しか目に入ってないよ!』
「俺ちょっと白河に同情する」
『はぁ?』


同情するってカルロそれ酷くない?
鳴と同じくらいモテる私にそんなこと言うなんて酷いと思うんだけど。


「泣き真似すんなよ」
『ちぇ』
「お前それ白河の前でやるなよ」
『しないよ。そんなの白河一番ウザがるじゃん』
「ちゃんとアイツのこと分かってんだな」
『当たり前でしょ。何年の付き合いだと思ってんのさ』
「昔は鳴にべったりだったのになぁ」
『カルロおっさん臭い』
「まぁそんなこと言うなって。白河には直球勝負のがいいと思うぜ」
『マジか』
「下手に根回しする方がバレた時にキレかねない」
『まぁ、そうなるよね』
「俺は応援してやるから頑張れよ」
『ん、ありがとカルロ』


ポンと私の頭を一撫でしてカルロが立ち上がるから私もそれに続く。
鳴も一応お兄ちゃんなんだからカルロの面倒見の良さ見習った方がいいよ。
誕生日プレゼントは決まってるから後はいつお祝いするかだよなぁ。


あれやこれや悩んでたらあっという間に白河の誕生日が来てしまった。
と言うか何とかなると楽観的に考えてたせいなんだけど。
考えても答えが出ないことは考えるだけ無駄だからね。
ちなみに鳴とは向こうが折れて和解した。
鳴が誰かに対して折れるなんてきっと私にだけだと思う。


「で、白河とはどうなったわけ」
『まだ何にもしてないよ』
「はぁ?お前それでも俺の妹なの?」
『朝練でおめでとうは伝えた』
「部員がお祝いしてたんだから一緒にお祝いすれば良かったじゃん」
『そういうの白河嫌がるよ鳴』
「そんなわけ…あー」
「お、ちゃんと坊やも成長してんな」
「カルロ、その坊やってのいい加減止めてくんない?」
「坊やじゃなくなったらな」
『だから放課後に頑張るから二人とも協力してね!』
「仕方無いからね協力してあげるよ」
「頑張れよ」


鳴のが私よりお子ちゃまだからしょうがないよね。
カルロのことだから一生鳴のこと坊やって呼びそうだけど。
放課後、鳴とカルロの協力のおかげで白河と二人きりの時間が出来そうだった。
簡単な話いつもより長く鳴達が自主練をしてるのだ。
白河はきっちりしてるからいつも自主練の時間決まってるもんね。
私は既に今日の仕事を終わらしたから部室の前で白河を出待ちしている。


「何してんだ凛」
『あ、白河ー』
「もう帰る時間だろ」
『白河待ってたの』
「成宮じゃなくて?」


部室横で座り込んでたら白河が出てきた。
うん、今日も時間ぴったりだね。
待ってたことを伝えると白河は怪訝そうに眉を寄せた。
まぁ今まで出待ちしたこと無かったしなぁ。


「アイス奢れとか言うなよ」
『そんなこと言わないって!』
「じゃあ何だ」
『白河の誕生日を個人的にお祝いしにきたー』
「はぁ?」


何その不審者を見るような目は。
私が誕生日を個人的にお祝いすることがそんなに珍しいのか。


「そんなことするような性格じゃ無いだろ。自分の誕生日は鳴と二人で大騒ぎする癖に」
『ぐ』


白河はスルドイ。
確かに今まで誰かの誕生日を個人的にお祝いだなんてしたことない。
けど今日は違うのだ!張り切って誕生日プレゼントも用意したんだからね!


『私にも色々あるんだよ』
「で」
『白河が冷たい』
「俺はいつも通りだ」
『ですよねー』


白河ってほんと口調が優しくない。
そのせいで損してること多いんだけどなー?
今だって早くしろと言わんばかりに私を見下ろしている。
なんだかんだ冷たく言いながらも私や鳴に付き合ってくれるから優しいんだけどね。
座ったまま白河へと誕生日プレゼントを差し出す。


『誕生日おめでと白河』
「お返しを期待するなよ」
『してませんー』
「で、これ何」
『アンダーシャツ。あ、ちゃんと白河が使ってるのと同じやつだよー』


あげたプレゼントの中身を問われるとは思わなかったけど白河はこういう人間だ。無駄を嫌う。
お守りとかミサンガとか考えたけど「そんなもんで試合に勝てるのか」とか真顔で言いそうだから止めておいた。


「お前にしてはまともなプレゼントだな」
『白河の中での私のイメージでどんな感じなのさ』
「無駄が多い」
『ぐ。でもでも今回はちゃんと考えたもん』
「裏がありそうだけど」
『裏とかじゃなくてですね』
「早くしろ」
『ここで急かすのか!』
「腹減ってんだよ」


頭上から大きな溜息が落ちてきた。
えーやっぱり白河冷たーい。
何で好きになっちゃったんだろ?
そんなこと考えても仕方無いのでさっさと本題に入ることにしよう。


『ねぇねぇ白河』
「だから何だ」
『私ね白河のこと好きなの』
「知ってる」
『だから私と付き合っ、は?今何て言った!?』


言いたいことを言い切る前に白河からの言葉に驚いたんですけど!
知ってるって言った!?え、本気?
びっくりしたまま白河をぽかんと見上げる。


「だから知ってる」
『何で!?』
「なんとなく」
『おお、マジですか』
「そのバカっぽい言葉遣い何とかならないの?」
『えー無理ー』


この感じだとイライラしてるとかでは無いから鳴やカルロが漏らしたわけでは無さそうだ。
じゃ、何で白河は知ってたんだろ?


「おい」
『何?』
「一人で妄想の世界に行くな」
『あ、ごめん』
「行くぞ」
『行くぞって何処に?』
「駅まで送ってやるからさっさとしろ」
『マジか!』


気まぐれにも白河が送ってくれるらしい。
これは珍しい。いつもだったらさっさと帰れって言うのに。
既に歩き始めた白河の背中を慌てて追うことにする。


『ねーねー何で急に送ってくれようとしたの?』
「お前を一人で帰したら成宮に何て言われるか分からないだろ」
『なるほど。白河は私と鳴のこと大好きだよね!』
「調子に乗るな」
『事実じゃん!事実でしょ?ね?ね?』


結局この言葉には眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしただけで返答は無かった。
あれ?私の告白結局スルーされた?
付き合ってって言う前に驚いちゃったしなぁ。


『白河白河』
「何だよ」
『私の一世一代の告白のお話なんですが』
「煩い、黙れ、察しろ」
『煩いくしてないのに酷い』
「お前は言葉遣いだけじゃなくて思考回路もバカになったのか」


返事が聞きたかっただけじゃん。
白河のケチ。煩いとか黙れとか酷い。
雅さんに泣きつくぞ。
…あれ?その後になんて言った?


「煩い、黙れ、察しろ」


察しろ?ぐるぐると白河の言った言葉の意味を頭の中で考えてもよく分からなかった。


『察しろって何?』
「駅着いたぞ」
『ねぇ、察しろって何!?』
「駅で騒ぐな。気を付けて帰れよ」


去っていく白河の背中へとあれこれ言っても一度も振り返ってくれなかった。
冷たい。泣いちゃうぞ私。
や、こんなことじゃ泣かないけれど。


『ということがありまして』
「察しろか」
「へぇ、やるじゃん白河」
『察しろって何だよ!分かりづらいよ!』
「まぁまぁ察するくらいしてやれよ凛」
「野球の次くらいにはいるんじゃない?」
『私ちゃんと告白したのに!』
「あの白河が駅まで送ってやったとかウケる」
「坊や、白河のことからかうなよ」
「だから坊やって言うの止めてよカルロ!」
『まぁ野球の次ならいいか』
「俺達まだこっからだからねー」
「あんまりワガママ言ってやるなよ」


私としても野球に打ち込む彼らの邪魔になるようなことはしたくない。
いくら稲実の女王様と呼ばれようともそれくらいは空気読める。
なら今はこのままでいいか。
不本意だけど。かーなり不本意だけど我慢することにした。


レイラの初恋様より
初めての白河。
やっぱり口調が難しいなぁ。
お誕生日おめでとう!
2018/09/06

ハローハロー、私と恋に落ちてくださいませんか?

prev | next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -