「凛、起きて」
『ん』
「俺の誕生日なんだけど」
『わ!おはよう精市』
「早く準備して」
『今、何時?』
「8時」
『分かった。直ぐに準備する』


今日は確かに精市の誕生日だ。
仕事も休みを取った。
でも駅で待ち合わせの予定だったのに何故か起きたら目の前にいた。
合鍵は渡してあるからうちに居てもおかしくないけど。
あんまり待たせるのも悪いからさっさと準備することにした。


「さ、行こうか。この時間ならまだ間に合うし」
『どこに行くの?』
「映画だよ」
『映画?』
「グレイテストショーマン観たいって言ってたでしょ」


精市の車に乗り込んで出発する。
確かにその映画は観たいって言ったけど精市は乗り気じゃなかった様な。


『いいの?』
「気が変わったんだよ」
『ありがとう』


グレイテストショーマンはずっとずっと観たかったんだ。
だから精市と観られるなんて本当に嬉しい。


『凄かったね!精市と観られて良かった!』
「凛ずっと楽しそうだったね」
『精市ちゃんと映画観てた?』
「観てたよ。良い映画だったね」
『泣きそうだった。ミュージカルはやっぱり元気になれるよね』
「確かにどの曲も本当に良かった」


映画を終えてランチへと向かう。
どこに行くかはもう決まってるみたいだった。
今日って精市の誕生日だよね?
着いたのはこれまた私が行きたいと言っていたイタリアンレストランだ。


『精市どうしちゃったの?』
「何が?」
『私の誕生日じゃ無いんだよ』
「俺の誕生日だね」
『私のやりたいことばっかりだよ?』
「いいんだよ。ほら行くよ」


車を降りてレストランへと向かう。
本当にどうしちゃったんだろう?


『イタリアンのコースって初めてかも』
「ランチだからまた夜にちゃんとフルコース食べに来ようか」
『和食でもいいんだよ』
「それは凛が作ってくれたらいいから」
『ふふ、頑張らなきゃなぁ』
「凛の作る料理はどれも美味しいよ。いつも俺のこと考えてくれて和食にしてくれてるだろ?」
『和食が一番作るの好きなだけ』


ワインも勧められたけど精市が運転だからお断りした。
精市は飲んでもいいよって言ったけどせっかくなら一緒に飲みたいから。
前菜からどれも全部ぜーんぶ美味しかった。
さすがに精市の誕生日だから私が出そうとしたのにきっぱり断られてしまった。
「俺に恥かかせないでよ」って。


「さ、帰ろうか」
『帰るの?』
「そう。後はうちでのんびりしよう」
『食べたいものある?』
「凛の作るものなら何でもいいよ」
『帰りにスーパー寄ってくれる?』
「いいよ」


映画を観てイタリアンレストランで食事をして帰るみたいだった。
私のやりたいことしかしてないのになぁ。
夜ご飯は精市のために精一杯心を込めて作らせてもらおう。
二人で仲良く買い物をして家へと帰る。


『疲れた?』
「まさか。誰に言ってるのさ」
『だよね』
「音楽かけてもいい?」
『いいよー』


食材を冷蔵庫に閉まって居たら背中から声が飛んできた。
うちに精市の好きなCDって何かあったかな?
ブラームスはうちになかった様な。
と、思ったらびっくりした。
さっき映画で流れていた曲が流れてきたのだ。


『え!?精市これどうしたの?』
「凛がトイレに行ってる間に買っただけだよ」
『これ聴くだけでまたワクワクしてきちゃう!』
「そうだと思ったから買ったんだ」


目を閉じると映像が浮かんでくる。
Blu-ray出たら絶対に買おう。
コーヒーを入れてソファに座っている精市の元へと持っていく。


『精市はどの曲が好き?』
「ThisIsMeかな」
『レティの歌だね』
「あれは良かったなぁ。凛は?」
『NeverEnoughが好き。泣きそうになった』
「CDは置いてくから好きなだけ聴いたらいいよ」


二人でのんびりコーヒーを堪能しながらサントラに耳を傾ける。
ゆったりした時間だ。
会話も何も無いけれど精市と二人でいられることが心地良い。


「誕生日だからこそ凛に感謝しようと思ったんだ」
『え?』
「俺がこうやって何の不満もなく幸せにいられるのは凛のおかげだから」
『そんなことないよ』
「俺がしたかっただけだからいいんだよ」
『そんなこと言って』
「両親にも感謝してるよ。でも今日は凛が一番かな」


精市の誕生日なのに私の誕生日みたいじゃないか。
堪らずに隣の精市へと抱きついた。
夕飯は目一杯豪華にしてあげよう。
私だって、私だって精市には感謝してるんだ。


『精市、誕生日おめでとう』
「ありがとう」


感極まって泣きそうだ。
それは少し恥ずかしいからもう少しこのまま精市を抱きしめていよう。


2018年3月5日幸村誕生日おめでとう!

With all your heartfelt thanks

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