『エージ先輩?聞いてますか?』
「あ、ゴメンゴメン。ちょっとボーッとしちゃってた。んでどうしたの?」
『もう、大事な話してたんですよー』
「ゴメンって。そんな怒んないでよ。可愛い顔が台無しだよ」
『そんなお世辞言ったって何も出ませんからね。あ、それでさっき手塚部長が言ってたんですけど』


可愛いって思ってるのはホントのことなんだけどなぁ。
俺の気持ちちーっとも気付いてくんないよね。
あ、また怒られるといけないからとりあえず話に集中しよう。
凛ちゃんは怒った顔も可愛いんだけどね。


「ねぇ桃ー」
「どうしたんすかエージ先輩。腹でも壊したんすか?」
「お腹は全然大丈夫だって!凛ちゃんの話ー」


部活が終わった後の自主練に桃を誘ってみた。
おーいしじゃこの話は頼りにならないしやっぱりここは凛ちゃんと同じクラスの桃に話を聞いてみた方がいいと思ったんだよね。
おーいしには凛ちゃんの相談を桃にしたいからって正直に話したし、納得して先に帰ってくれたから心配もいらない。


「あぁ、椎名っすか?」
「そうなんだよねー。俺のアプローチどっか間違ってんのかな?」
「部員は椎名以外みんなエージ先輩がアイツのこと好きなのは知ってるんでアプローチは間違ってねえっすよ。ただ」
「ただ?何々?」
「問題はアイツがそーゆーのにかなり疎いってだけっす」
「やっぱりー?」


今このコートで打ち合ってるのは俺と桃だけなので遠慮なく大声で話ながらラリーを続けている。
ちなみに凛ちゃんが帰ったのは確認済み。
他は別に誰が聞いてたっていいしね。


「つーか、エージ先輩も回りくどいんすよ」
「えぇ」
「もっと男ならがっといきゃーいいんですって!」
「俺が慎重に慎重に凛ちゃんと仲良くなったのが水の泡になっちゃうじゃん!」
「つっても今のままじゃそれこそ何も変わらねーっすよ」
「それはそうなんだけどね」
「だから俺に相談したんじゃねえんすか?」
「そーなんだけどさ」


桃の言ってることは分かるんだけどそれじゃ踏ん切りがつかないって言うか。
今までの関係壊れちゃったら嫌だし。


「一回がっと押してみてもいいんじゃねえっすか?んで先輩が椎名のこと好きなんだってアイツに意識させてみりゃいいんすよ」
「そんなに上手くいくかなー?」
「とりあえずやってみて伝わんなかったらまた次っすよ次!」
「んーとりあえずやってみる!」
「その意気っすよ!」
「桃!そこでジャックナイフはズルいぞ!」
「んなこと言ってエージ先輩こそ打ち返してるじゃないっすか!」
「後輩に負けてらんないからねっと!」
「これ自主練って言いましたよね?」
「残念、桃が先にジャックナイフ使ったんだろ!ほいっとな!」


最後に俺の打ち返したボールがコートに決まったとこで自主練を終わりにした。
桃がまだやろうって煩かったけど勝ち逃げだよね。
その方が幸先良さそうだし!


ってことで思い立ったら即行動が俺でしょ!と思って次の日には行動に移すことにした。
さっさと行動しないと怖気づきそうだったのもあるけど。
部活の後に凛ちゃんを部室に呼び出すことにした。
おチビも桃もみーんな空気呼んで先に帰ってくれたから良かったー!
唯一心配だった乾も海堂が連れ帰ってくれたかんね。
アイツも空気読む様になったよなぁ。


『エージ先輩ー?お話って何ですかー?』
「凛ちゃん今日もお疲れお疲れー」
『先輩もお疲れ様でした』


今日も凛ちゃんはぽやっとしてて可愛いなぁ。
今から俺に告白されるなんて全く思って無さそうだ。


『先輩?』
「俺ね、凛ちゃんにお話があんの」
『何でしょうか?』
「今から俺のすることにびっくりしちゃわないでね」
『はい』


俺の言葉にきょとんと首を傾げている。
その仕草もほんと可愛い。
堪らずに凛ちゃんを抱きしめた。
今まで我慢してた分自制が効きそうに無い。


『先輩?どうしました?』
「凛ちゃんがほんとに可愛いなぁと思って」
『またそうやってからかうんですから』
「俺、冗談でこういうことしそうに見える?」
『せ、先輩!意地悪ですよ!』
「ねぇ凛ちゃん」
『急にどうしたんですか?』
「頭の中俺のことだけでいっぱいにしてよ」
『エージ先輩?』
「駄目かな?」


さっきまでとは違うだいぶ真剣な声で凛ちゃんに自分の気持ちを伝えた。
俺のことだけを見てて欲しかったから。
俺の名前を呼ぶ凛ちゃんの声は戸惑ってるみたいだった。
俺の腕の中で大人しくしている。
嫌われたりはしてないみたいだから良かった。


『うーん』
「やっぱり駄目?」
『私、そういうのまだよく分からなくて』
「そっか」
『でも私こうやってエージ先輩の腕の中にいるの嫌じゃないです』
「それって」
『今、頭の中先輩のことでいっぱいですよ』


凛ちゃんが俺の腕の中でポツリと照れた様に呟いた。
顔は見えないけどきっと顔が赤くなってるんだろなぁ。
その顔を見てみたい気がするけどせっかく大人しくしてくれてるんだ。
離すのも勿体無い。


「じゃあさじゃあさ俺のこと嫌いってわけじゃ無いんだよね?」
『エージ先輩のこと嫌いな人なんて居ないですよ』
「凛ちゃんからしか好かれたくないんだよ」
『先輩人気者なのに』
「これからも俺のことで頭の中いっぱいにしてくれる?」
『こうやって定期的に抱きしめてくれたらエージ先輩でいっぱいになる気がします』
「んじゃ定期的に抱きしめてもいいんだね?」
『エージ先輩ならいいですよ』
「あんがと」


100%ってわけじゃなさそうだけどこれは一歩進んだってことでいいよね?
桃の言う通り行動に移してみるもんだよね。


まぁこの後乗り込んできたおーいし達に引き剥がされたんだけどね。
どうやら外でみんなで見守ってたらしい。
これ以上は駄目だったみたい。
手塚も居たから思わず笑っちゃったよね。
「部室ではするな」って釘まで刺されちゃったよ。
凛ちゃんから許可出たからもう人目気にしないからいいんだけどね。

頭の中俺のことだけでいっぱいにしてよ

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