『はじめ、帰ろー』
「おー」


岩泉一とお付き合いを始めて二週間が立つわけだけど、付き合う前の方が上手くいってた気がするのは気のせいじゃないはずだ。
顔を赤くして「お前とは高校卒業しても一緒に居たいんだよ」と言われた時は嬉しくて思わず泣いてしまったくらいなのに。
泣くほど嫌なのかと勘違いをしてショックを隠せずにいたはじめが面白くて笑ってしまったんだけど。
嬉しくても涙が出るって知らなかったんだよね。
あの日はまだ普通に話せてたんだけどなぁ。
日を追うに連れてはじめの態度がどんどんぎこちなくなってるのは何でだろう?


「受験勉強どんな感じだ?」
『もうすぐセンター試験だからねぇ。追い込んでるよー』
「悪かったな」
『どうしたの?急に謝ったりして』
「志望校俺に合わせただろ」
『私が変えたかっただけだよ。第一と第二志望をひっくり返しただけだし』
「そうか」


うーん、前だったらそこは「ありがとな」って言ってる所なんだけどなぁ。
はじめどうしちゃったわけ?
…もしかして私に告白したの今更後悔してたりするのだろうか?
え、だから志望校の話とか急にしてきたし微妙な返事だったの!?
え、私だけ勘違いして志望校変えてもしかして迷惑だったのだろうか?


『もしかして迷惑だった?』
「は?」
『志望校変えたの。はじめに相談しなかったし』
「いや」
『最近はじめなんか変だし。私だけはじめと付き合えて舞い上がってたけど後悔してたりしない?そしたらちゃんと言って。いきなりは難しいけど私ちゃんと前みたいに友達になれるように努力するし』
「おい凛」
『最近全然楽しそうじゃないし。だからねちゃんと言って。無理して付き合って欲しくないよ』
「違ーし。おい泣くなって。俺が悪いんだよ」


はじめが私に告白したことを後悔してると思ったら全ての行動の意味がしっくりきた気がして一度それを言葉にしてしまったら止まらなかった。
凄い悲しいけどこのまま無理して付き合ってほしくもない。
気付いたら涙まで溢れてきた。


『うん、だからね間違いだったんでしょ』
「あーそれも違え。そういう意味じゃねえ」
『じゃあ何で最近素っ気ないの』
「照れ臭いんだよ」
『は?』


照れ臭い?何が?え、何が?
はじめの言葉にぽかんとしてしまった。
さっきまでの悲しくて辛い気持ちまで一気に吹き飛んだ。


「や、だからなお前とは中高ずっと一緒だったろ?友達だったわけだし」
『うん』
「それが高校卒業したら会えなくなるなと思ってお前に告白したけど」
『うん』
「実際そうしてみたらすげえ照れ臭いんだよ」
『なんだそれ』
「お前笑うなよ」


照れ臭いって何だよ。
それでこの二週間態度がぎこちなかったとか誰が聞いても笑ってしまうと思う。
ホッとしたこともプラスしてはじめが隣で不貞腐れてたけどしばらく私は笑いが止まらなかった。


『別に今まで通りでいいでしょ』
「んなもん分かってるよ」
『私ずっと心配してたんだよ』
「悪かったな」
『なのに照れ臭いからとか』
「夢の中じゃもっと上手く話せたんだよ」
『はじめ結構可愛いこと言うんだね』
「うるせーな」
『告白したの後悔してるとかじゃなくて良かった』
「するわけねえだろ」
『うん、ありがと』


夢の中じゃもっと上手く話せたとかはじめの口から聞けると思わなかった。
なんだ、私の勘違いではじめはずっと照れ臭かっただけなんだね。
女子慣れしてないこういう所もはじめっぽくて好きだ。
多分私が最初の彼女だもんね。
それは私も一緒だけどさ。


『はじめ、手繋いで帰ろ』
「は」
『駄目ならいい』
「や、いいぞ。帰るぞ」


駄目元でお願いしてみたら私の手を引いて歩き出してくれた。
歩くスピード速いよはじめ。
私の手を引いてぐいぐい歩いてるのはきっとまた照れ臭いんだろう。
一緒に少しずつ成長して行こうね。

夢の中じゃもっと上手く話せたんだよ

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