「丸井せんぱーい」
「おお、どうしたんだよ赤也」
「先輩って彼女に愛してるって言えます?」
「はぁ?」


部活の休憩中に赤也がやってきて突拍子も無いことを聞いてきた。
愛してる?そんなもん言えるわけねぇだろ。なんつーかすげぇ気恥ずかしいし。


「愛してるって言ってくれなきゃ別れるとか俺の彼女言うんすよー」
「言ってやればいいだろい」
「丸井先輩は恥ずかしくないんすか?」


そりゃ俺だって恥ずかしい。
そんなこと言ってやったことは無いと思う。


「俺の彼女はそんなこと言わねぇし」
「女は誰だってそうやって思うって彼女言ってましたよ」
「俺の話はいいんだよ。んで、お前は結局言ってやったの?」
「まぁそりゃ。言わないと別れるって言い張ったんで」


すげぇな赤也。
どこか気恥ずかしそうに俺の質問に答えると練習に戻っていった。
アイツ結局何が聞きたかったんだ?


「ブンちゃんも言ってやると椎名も喜ぶじゃろうに」
「仁王聞いてたのかよ」
「上手く赤也の質問をかわしておったのう」
「気恥ずかしいだろい」
「椎名が不安になっても知らんぞ」
「アイツはそんなこと拘ったりしねぇよ」
「それはどうかのう」
「なんだよ」
「なんでもなか」


そんな風に言われたら気になるだろい。
でもそれ以上は問い詰めても仁王は何にも答えなかった。


「なー凛ー」
『何ー?』
「女って彼氏から愛してるって言われてぇもんなの?」
『どうしたの急に』
「赤也が彼女からせがまれたって部活の時に言ってたんだよ」
『切原君の彼女そういうの好きそうだもんね』
「知ってんの?」
『去年同じクラスだったよ』
「あー」


部活の帰り道、仁王はそれ以上何も教えてくれなかったから本人に質問をぶつけてみた。
実際に不安になってても困るし。
けど凛の反応は思ってたより普通だ。
またこれ仁王にからかわれただけだな。


「つーかお前はどうなの?」
『私?うーん』
「なんだよ」
『そういうのって言ってってお願いして言ってもらうものじゃないよね』
「まぁな」
『それにさ、ブン太はそういうの苦手でしょ?最初の告白だってさ』
「お前、思い出して笑うとかひでぇ」
『ふふ、ごめんごめん。意外とシャイだもんね』


俺の隣で告白した時のこと思い出してんだろう。
マフラーで口元が隠れてるけど目が微笑んでいる。
確かにあの告白はダサかったと思う。
でもどうしても上手く「好きだ」って言葉が出てこなかったんだよ。
テニスの試合より緊張した気がする。


「俺はそーゆーの口には出せないけど」
『うん』
「ちゃんと行動で見せてやるからな」
『うん?』


グッと腕を引いて抱きしめてやった。
道の真ん中だけどもう暗いし誰もいねぇ。まぁ許されんだろ。


『私何にも言ってないのに』
「俺がこうしたかっただけ」
『苦しいよ』
「ちょっと我慢しろって。俺の気持ち分だぞ」
『暖かいね』
「おお、すげぇ暖かいな」


俺の腕の中でクスクスと小さく笑っている。
やっぱ仁王はからかうためだけにあぁやって言っただけなんだな。
言葉なんて言わなくても伝わってだ。


愛してるだなんてそんなもん抱きしめてやればいいだろい。
それで充分伝わんだ。

そんなもん抱きしめてやればいいだろい

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