Touch!Feel!Connect!

『ブン太、早くしないと映画始めちゃうよー』
「今行くからもうちょい待てって」
『だからポップコーンは買おうって言ったんだよ』
「家で作るのが楽しいんだろい、何言ってんだ!」


それに出来立てがすげー旨いんだぞ!何度もそう力説したのに凜にはちっとも伝わらねぇ。
完成したポップコーンをコンロから下ろし手早く用意しておいたフレーバーで味付けをしていく。味見をしてみれば完璧だ。俺って何やらせても天才的だな。塩にキャラメルとチーズ、こんだけありゃ凜も満足すんだろ。三種類のポップコーンを完成させてソファーでスタンバってる凜の隣へと座る。
ってもう始まってんじゃねぇか!口を挟むと怒るからポップコーン片手に俺も映画に集中することにした。


つってもこの映画、俺観たことあったわ。高校生の時に弟達連れて映画館行ったんだっけ。
隣で真剣に映画を観てる凜には言えねーけど、最後までバッチリ覚えてんだよなぁ。
そうとなると凜みたく真剣に映画を観れなくて途端に手持ちぶさたになっちまった。
凜はそんな俺の気持ちに気付くでもなくテレビ画面に夢中になっている。
邪魔すっと怒られるんだろーけど、暇なもんは暇でそっと隣に体重をかける。あんまり重くすると小言が飛んでくっからあくまでも軽めに。


『なぁに』
「何でもねぇ」
『この映画面白いねブン太』
「おお」


まぁ俺はもう最後どうなるか知ってるけどな。俺の方を見ようともせず凜は画面に釘付けだ。俺の適当な返事にも気付かねーから少しだけ面白くない。触れてるとこから凜の体温が伝わってくんのは良いけど、なんだかなぁ。


『ブン太って触りたがりだよね』
「男なんてそんなもんだろ」
『そういう意味じゃなくて、それ』
「あ?なんだよ急に」
『無意識だよね、私の腕とか足触るの』
「……あー」


テレビから視線を離さずに凜は俺の癖を指摘する。言われてみりゃ確かに俺の手は凜の太股に置かれている。別にヤりたくなったとかじゃなくて、ただ単に触れたかっただけなんだろう。何せ無意識だから俺にもそれがどういう意味かちゃんとわかってねぇけどな。


「別に変な意味はねぇぞ」
『わかってるって。そういう時はまた触り方違うから。こうやってしてくるのちょっと可愛いよね』
「可愛いって言われんの嫌なんだけど」
『でも可愛いんだから仕方無い。止めれないでしょう?』


そりゃそうだ、今日初めて指摘されたんだから俺に触りたがりな自覚はゼロ。んでもってそれを止めるなんて自覚したところで無理に決まってる。
この癖を指摘されるのも可愛いって言われんのも気恥ずかしいけど凜に触ってんのは落ち着くから止めんのはぜってぇに無理。


「かと言って可愛いとは言われたくねぇ」
『ふふ、私にだけにしてね』
「バーカ、他の女にするわけねぇだろい」
『うん、知ってる』


俺の言葉に凜の横顔は柔和に微笑んだ。こんな話してても目線はテレビから外さないのかよ。後二時間結局暇じゃね俺。仕方ねぇから凜に触りつつ適当に時間を潰すことにした。
この映画がつまんねぇわけではないからもうちょいちゃんと観てみるか。


『はぁ、面白かったー!』
「おお、確かに面白かったぜ」
『その体勢でちゃんと観てたのブン太』
「観てたって、当たり前だろい」


真剣にとまではいかねぇけど、ちゃんと最後まで観たことは観た。最終的に凜の膝枕で観たから映像は横になってたけどまぁ一度観た映画だしそこは脳内保管でどうにかした。
今は凜の腰に手を回して女特有の柔らかさを満喫してるから説得力に欠けるかもしんねぇけども。


「触り心地が良いお前が悪いんじゃねーかと思う」
『触りたがりの話?』
「おお、だってどんだけ触っても飽きねーし」
『ちょ、お腹の肉摘まみながら言わないでくれるかな』
「いいじゃん、この柔らけぇ感触好きだぜ俺」
『太ったら文句言う癖に』
「文句言ったことはねぇって!単に太ったか確認しただけだろ?」
『彼氏に太ったか聞かれたらそれはもう痩せろって言われてるのと同じだよ』
「ふーん、まぁ痩せ過ぎんなよ」
『もう、ほんと勝手なんだから』


言葉とは裏腹に優しく包み込むような声色が頭上から落ちてきた。なんだかんだ俺にすげー甘いよな凜ってさ。んでそれわかってて俺も甘えてんだけど。わしゃわしゃと俺の髪の毛を撫で回してるからそこまで気にしてねぇなこれ。凜が俺に甘いとこをまた一つ見付けて一人こっそりとほくそ笑んだ。


「んじゃそろそろ俺との時間ってことでいいよな?」
『え、続編も観ようかと思ってたんだけど』
「無理、それはぜってー無理。明日にしようぜ」
『えぇ、続編気にならないのブン太』
「それは気になるけどそれよりもお前がいいの」


横になって凜のこと堪能してたらもっと触りたくなっちまったんだからしょうがないだろい。
仰向けになって凜の頬をくすぐれば満更でも無さそうな表情だ。くすぐったそうに身を捩るのもいいよなぁ。


『くすぐったいってブン太』
「くすぐってんだから当たり前だろい」
『もー映画観ながらでもちゃんとブン太の話聞いてたよ?』
「今からは俺だけ見ろって、映画は明日でも観れんだろ」
『ブン太のことだって明日も構うよ』
「おお、明日も明後日もずっとな」
『仕方無いなぁ』


クスクスと小さな笑みを溢して凜はリモコンに手を伸ばした。そのままテレビの電源をオフにする。
お前ほんと俺のこと好きだよなぁ。んでもってそんな凜のことを俺もすけぇ好き。
下から見上げてんのにもそろそろ飽きたから体勢を変えるとするか。起き上がってソファーに座り直してから凜の腕を引く。俺の手に導かれるようにして凜は膝に跨がった。


「これで触り放題じゃね?」
『あんまりくすぐったいとこ触らないでよブン太』
「んーどうすっかなぁ」
『言ったそばから脇腹触らないでってば!』
「えーそりゃ無理だな。嫌なら止めてみろって」


そこからくすぐり合いの攻防が始まった。お互いに弱いとこは熟知してっから相手の攻撃を凌ぎつつ弱いとこを攻めていく。そうなるとなかなか勝敗が決まらねぇ。凜が妥協してくれりゃいいのにこういう時は曲げず嫌い発動すんだよなぁ。耳に触れようとして止められて俺の脇腹に伸びる手を止める。じゃあ次はどこを攻めようかとその繰り返しだ。
本気でやりゃ俺が勝つけどそれじゃ楽しくないから大抵手加減はしてる。まぁ、しねぇ時もあるけど、今日は余裕があるから手加減してやってたら疲れたらしい凜が手を止めて勝敗は決した。


『なんかどっと疲れたんだけど』
「今日は俺の勝ちだな」
『いっつもブン太が勝ってるし』
「たまには勝つからいいだろい」
『そうだね、ブン太たまに負けてくれるもんね。たまにだけど』
「たまには可愛い彼女に花持たせてやんねぇと拗ねたら困るの俺だし」
『ふふ、なにそれ』
「何ってそのまんまの意味な」


俺の肩に顔を埋めたまま凜が小さく笑う。
多分端から見りゃすげぇくだらないことしてんだろーけど俺はこういう何でもない時間のやりとりも好きだったりする。
髪の毛がくすぐったくてそれを避けたら目の前には凜の首筋が見える。
こうも無防備に目の前にあると悪戯心ってのが刺激されるよなぁ。まぁ、無防備で当たり前だけど。思い付きに口元が緩むも凜の視界には入ってねぇ。たまにはいいよな?


『ちょっブン太!?』


動くなって、動いたら綺麗な痕付かねえだろい。首筋に口を寄せたとこで凜が動こうとするからそれを止める。本気で抵抗するわけねぇからそのまま首筋に吸い付いた。唇が触れただけでひくりと反応するから可愛いよなぁ。
っと、あんまり調子に乗ると怒るから痕を残すのは1ヶ所だけにしておいた。


「俺ってやっぱ天才だな、今日も芸術的な綺麗さあんぞ」
『キスマークに芸術とか関係ある?』
「おお、あるある。他の男に見られた時にあの女の彼氏キスマーク付けんのヘタクソだって思われたくねーからな」
『もう、そんなこと考えるのブン太くらいだよ』
「いいや、男は口に出さなくてもそう思ってるぞ絶対な」
『ここ隠れるかなぁ?』
「隠れなくてもコンシーラーでどうにかすんだろ」
『うん』
「別にそれくらい良くねぇ?」
『ダメ、あることないこと噂されたくないの。想像してみてよ、会社の同僚の女の子がキスマーク付けて出勤したらどう思う?』
「いちいちそんなとこ見てねぇし」
『じゃあ他の人が気付いてそれを報告されたらどう思う?』
「昨日彼氏と仲良くヤってきたんだなとは思うだろうけどそれくらいだろい?」
『…じゃあブン太は良いってことだよね?』
「おお、俺は全然気にしねぇ」
『わかった』


珍しくお前もキスマーク付けんの?そう聞きたかったのに反撃するかのように凜が首に噛み付いたせいで言葉にならない。それより変な悲鳴みたいな声が出た。


「お前っ!キスマーク付ける流れだったろ!痛ってえ!」
『ブン太にキスマークは単なるご褒美みたいな気がして悔しくて噛んでみた。お、綺麗な歯形になってるよブン太』
「お前思いっきり噛んだだろ今。痛え」
『明日の同僚や上司の皆様の反応が楽しみだねブン太』


結果的に俺は次の日の夜に凜に謝ることになった。周りが鬱陶しくて仕方無かったからだ。相談してもねーのにアドバイスしてくる上司やら喧嘩したと勘違いしてすり寄ってくる女性社員やらで1日かなり面倒だった。


「もう隠すなとは言わねぇ」
『ん、わかってくれたのなら良かった。噛んでごめんねブン太』
「でもキスマーク付けんのは止めねぇからな」
『隠して良いのならどこにでもどうぞ』
「後、二度と噛むなよ。あれマジで痛かった」
『うん、もうしないから大丈夫だよ』


昨日は噛まれたせいでそのまま何もせず寝ちまったからその分今日は楽しませてもらうからな。
女に噛まれたとか口が裂けても仁王達には言えねーな。幸村なんて爆笑しそうだ、あー赤也もだな。
ぼんやりとそんなことを思い浮かべながら赤い痕残る首筋に口付けた。


2019/11/15
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