シティボーイ連合

『東京暑い!』
「確かに宮城と全然違うからな」
「岩ちゃーん!みきー!行くよー!」
『はーい!はじめちゃん行こ!』
「アイツでけぇ声で呼びすぎな」


新幹線でやってきました大都会!
姉妹校での合同合宿とかワクワクしちゃうよね!
人が多いからはぐれないようにしなくちゃなぁ。
トオルちゃんが大声で私達を呼ぶからそれに続くことにした。


「みきー向こう着いたらびっくりするよ」
『え、何で?』
「ふふー内緒!」
「月島がいるんだよ。向こうの大学に」
『そうなの!?』
「ちょ!岩ちゃん!?内緒って今俺言ったよね!?」
「いちいち煩えな。行きゃ分かるんだから内緒にする意味無いだろーが」
『確かにツッキー東京行くって言ってたなぁ』


そうか、ツッキー姉妹校だったのか!
元気にやってるかなぁ?この東京の暑さにうんざりしてないかなぁ?


大学の合宿所に到着して荷物を置いて体育館へと集合する。
先輩マネさん達がテキパキと指示を出してくれるから私はそれを聞くだけだ。
しかもここの合宿所にはちゃんと食堂のおばちゃんがいるからご飯作らなくても良いらしい!
先輩マネ二人が喜んでいた。
(去年は別の合宿所でご飯作りが大変だったと嘆いていたのを聞いた)


『ツッキー!』
「あー」
『久しぶり久しぶり!』
「君は相変わらず元気そうだね」
『ツッキーは?この暑さにバテてない?』
「君は僕のことどんな風に思ってるのさ」
『体力無いイメージ』
「別に。最近はそんなこと無いし」
「ツッキー!そのこ誰ー?」
「ツッキーの彼女とか?」


体育館へと向かうと早速ツッキーを発見したので挨拶に来てみた。
相変わらずの仏頂面で変わってないみたいで何よりです!
再会を喜んでたら知らない方々が現れた。
おお、何か都会のオーラってのがある感じ。


「違いますよ。コイツは岩泉さんの彼女です、多分」
『多分とか酷い!』
「てことはちゃんと彼女になれたの?良かったね」
『ちょっと!棒読みでお祝いするの止めて!』
「へぇ、岩泉の彼女なんだ」
「堅物って有名なのになアイツ!」
『そうなんですか?』
「うちのマネが迫っても駄目だったもんなー」
「そうそう!」


何その話!全く聞いてないよはじめちゃん!
なんだよそれー。向こうのマネさんとさっきちょこっと話したけど超絶美人さんだったよ。


「何で落ち込んでるの」
『だって都会のマネさん綺麗だったもん』
「岩泉さんはそれを断ったんだから別に気にしなくていいでしょ」
「そうそう!気にすんなって!」
「そうだぞ!もっと胸を張って自分が彼女って自信持っとけよ!」
「二人がその話ばらさなきゃ良かったんですよ」
「みき、何やってんだ」
『あ、はじめちゃん。ツッキーに挨拶してた』
「そろそろ練習の準備してこいよ」
『分かった!』
「ヤキモチかよ岩泉ー」
「お前らと話してたら終わらないだろ。何言ってんだ」


はじめちゃんがヤキモチなんて早々に無い気がする。国見との時にちらっと見れたくらいだ。
あれもヤキモチなのかって聞かれると難しいとこだけど。
はじめちゃんに促されたので先輩マネさんのお手伝いをすることにした。


『ってことがありまして』
「あぁ、去年だっけ?」
「1年の時からじゃない?」
「あぁ、そうそう!何故か向こうのマネに岩泉気に入られたんだよねー」
「うちらも一回付き合って見ればってゴリ押ししたんだけど頑なに断ってたからね」
『そんなことがあったんですか』
「まぁみきちゃんが居たのならそうなるよね」
「アイツ真面目過ぎるんだって」
「それが岩泉の良いとこなんでしょ。ね?みきちゃん」
『はい』
「あら、元気無い?」
「今はみきちゃんが彼女なんだから気にしなくていいんじゃないの?」
『だってとびきり美人さんだったし。まだはじめちゃんのこと好きなのかなって思ったら』
「大丈夫大丈夫!あのこころころ彼氏変わるから!」
「だからね、気にしちゃ駄目よ」


さすが都会の超絶美人さんだ。
彼氏がころころ変わるなら彼女のいるはじめちゃんに手を出すことはないよね?
……大丈夫だよね?


そう自分に言い聞かせてホッとしてたのも束の間。
どうやらあの美人マネさんは今は彼氏が居ないらしく気が付くとはじめちゃんに何やら話しかけている。
何でそもそもはじめちゃんなのさ!


「みきー可愛い顔が台無しだよ」
『トオルちゃん!』
「あぁ、あれ?岩ちゃんがちっとも靡かないから彼女も意地になってるだけだよ」
『でも』
「あれを二年連続で岩ちゃんは凌いだんだから大丈夫大丈夫。今はみきがいるから余計にね。そんなに心配してないで笑いなよみき。彼女は私ってアピールしてくればいいでしょ?その方がみきらしいよ」


そう言ってトオルちゃんは安心させるように微笑んでくれたけど私はあの美人さんの前に割り込む勇気が全く無かった。
付き合う前だったらきっと出来ただろうに不思議だよね。
あれを二年連続で凌いだはじめちゃんは確かに凄いと思うけど。


「みきちゃーん」
『あ、黒尾さん』
「お、俺らの名前覚えてくれたんだ」
『トオルちゃんが教えてくれたので』
「及川の従姉妹だっけ?」
『そうです』
「んでずっと岩泉が好きだったとか凄いよなぁ」
『えへへ。あっという間でしたよ』
「うちのマネがやきもきさせててごめんな」
『あ、バレてました?』
「顔に出てたよみきちゃん」
『トオルちゃんにも自信持っていいって言われたんですけどマネさん美人なので』
「みきちゃんも可愛いんだから大丈夫だって。岩泉の彼女じゃなかったら俺が手を出した」
「おい、黒尾」


またもや美人マネさんに話しかけられているはじめちゃんを見てやきもきしていたら今度は黒尾さんがやってきた。
どうやらぜーんぶ顔に出ていたらしい。
隠すつもりが無いからしょうがないんだけどね。
そうやって黒尾さんとお話していたら後ろからはじめちゃんの声が聞こえた。
ちょうど黒尾さんが私の頭をぽんと触った瞬間だ。


『はじめちゃん?』
「お、岩泉ーどうしたんだよ」
「冗談でもんなことコイツに言うなよ」
『冗談って何が』
「ハイハイ、分かってるって。そんなことでヤキモチ妬くならみきちゃん放っておくなよ岩泉」
「言われなくても分かってる」
『はじめちゃん?』
「行くぞみき」


黒尾さんははじめちゃんの態度に楽しそうだしはじめちゃんはなんだか不機嫌だ。
私の腕を掴んで歩き出すから着いていくしかなかった。


『ヤキモチ?』
「違え」
『えー』
「黒尾に気軽に触らせんなよ」
『頭をぽんってされただけだよ?トオルちゃんも松川さんも花巻さんもするよ?』
「アイツら以外は駄目。つーか黒尾は一番駄目」
『ヤキモチじゃんかやっぱりー』
「違えし」


素直に認めてくれたらいいんじゃないの?
強情だなぁ。でも私の言葉に素っ気ないからきっと正解なんだろう。
嬉しくなってしまった。


「あ、岩泉ー今大丈夫?」
「無理」
「後からなら大丈夫かな?」
「バレーの話以外は無理な。今はコイツとの時間だから」
『はじめちゃん!?』


ずるずると引っ張られて体育館から出るとこで美人マネさんに遭遇したのにはじめちゃんは超絶冷たく返している。
え、こんなに女子に冷たいはじめちゃん初めて見たかも。
私も美人マネさんもそれにびっくりしたみたいだった。
今は自主練の時間だからいいけどどこまで行くつもりなんだろはじめちゃん。


「お前、心配させんなよ」
『心配させるようなことしてないよ?』


人気の無い所まで連れて来られてはじめちゃんに言われたけど別に黒尾さんとはじめちゃんの話をしていただけだ。


『黒尾さんはあの美人マネさんがごめんなって言いに来てくれただけだよ』
「何で黒尾がわざわざそんなこと言いに来るんだよ」


あ、やっぱり機嫌が悪い。
黒尾さんと話してただけなのに何がいけなかったんだろ?


『はじめちゃんと美人マネさんが話しててやきもきしてたからじゃない?』
「はぁ?何でそうなるんだよ」
『だって去年も一昨年もあのマネさんはじめちゃんにべったりって聞いたし』
「あぁ」
『それのフォローをしてくれたんだよ』
「つーか俺のことなら俺に言え」
『えぇ』
「お前何で最近何も言ってこないんだよ。前は違っただろ?」
『だってはじめちゃん困るかなって』
「お前に何言われても今更困ることなんて無いだろ」


あぁ、そういうことか。
私が色々考えすぎてはじめちゃんに言えなくなったけどはじめちゃんははじめちゃんでそれを気にしていたのか。


『だってはじめちゃん何にもして来ないし』
「は」
『うちに泊まっていいよって言っても帰ってくし』
「お前それは」
『私まだキスすらしてないし』
「っ!お前なぁ!そうやっていちいち煽るなよ!」


アヤさんに言われたことを思い出したのでこの際全部ぶちまけてみた。


『分かってて煽ってるもん』
「お前なぁ」
『キスすらしてない私があの美人マネさんの前で私が彼女ですって言っていいのか分かんなかったんだもん』
「ったく。お前以外に彼女居ないべ」
『そうだけどそうだけど』


面倒臭いことを言ってるとは思うけど俺に言えって言ったのははじめちゃんだ。
けどなんか気恥ずかしくて泣きそうだ。
じわじわ涙が込み上げてくる。


「何で泣くんだよ」
『はじめちゃんが悪いんだよ』
「分かってるよ。ごめんな?泣くなって」
『何で私からキスしてほしいとか言わなきゃいけないんだ。はじめちゃんのバカ』
「分かったから。泣くなって」


アヤさんは私から話したらいいって言ったけどこういうのって女子から話すものじゃないと思う。
気恥ずかしいしなんか情けない。
はじめちゃんが正面から抱きしめてくれたけど恥ずかしくて顔を上げれない。


「みき、俺ちゃんとするから」
『何が』
「全部。お前のこと不安にさせねーようにするからもう泣くな」
『本当に?』
「おお、だから顔上げろ」
『嫌だ』
「は?」
『泣いちゃったし酷い顔してるから嫌だ』
「いや、お前今キスする流れだっただろ」
『そうだけど今は嫌だ』
「お前結局俺のこと煽っただけな!」
『帰ってからでいい』
「はぁ。お前がそう言うならそれでいいけど。無理すんなよ。んで何かあったら俺にちゃんと話せ」
『うん、約束する』


我ながらバカなこと言ってるとは思うけど喧嘩した勢いでキスしたくなかったし顔がぐちゃぐちゃなのを至近距離で見られたく無かったのだ。
と言うかはじめちゃんの「今キスする流れだったろ」って言葉に笑いそうになってしまった。
怒られるから言わないけど。
あぁ、ちゃんと私のこと考えてくれている。
今日はそれが分かっただけで満足だ。


明日からはちゃんと私が彼女ですアピールも出来そうだし。
もうきっとやきもきしなくて済みそうだ。
その夜にアヤさんに話を聞いてもらったら「男女どちらからねだってもそういうのは問題無いですよ」って返信がきた。
「好きな彼女から言われたら男の人は嬉しいものですよ」って。
アヤさんの言葉はすんなりと私の中に染み入ってくるから不思議だ。
さて、明日からも合宿頑張らなくちゃ。


初めてのはじめちゃんのヤキモチでした(笑)
一番だって言われてるのに自分に何も言ってこないみきにやきもきしていた岩ちゃんでした(笑)
2018/07/31

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -