デート

はじめちゃんと付き合い初めてあっという間に1ヶ月がたった。
大学に入学してバタバタと忙しい日々が続いている。
部活の無い日でもはじめちゃんがバイトだったりでなかなか遊びに行く機会が無くて今日やっと約束の水族館に連れてってもらえることになったのだ。


「みき、腹減った」
『はじめちゃん!先に言うこと無いの?』
「あーはよ」
『おはようはじめちゃん』
「朝メシ何?」
『お味噌汁とご飯と玉子焼きと納豆と後はー野菜かな』
「主菜は?」
『はじめちゃんはそう言うと思ったから今お肉焼いてます』
「ん、ならいいわ」


夜御飯だとはじめちゃんのバイトの関係で時間が合わなかったりするから朝御飯だけは一緒に食べようってのが私達が付き合い始めてからの最初の約束だった。
単にはじめちゃんが美味しい朝御飯を食べたかっただけな気がしなくもないけれど。
でもはじめちゃんとの時間は嬉しいから気にしない。


「んじゃ行くか」
『初めてのデートだね!』
「は?や、お前の誕生日に遊園地連れてってやったろ?」
『付き合ってから初めてってこと』
「あーそういうことな」
『覚えてくれててありがとね』
「当たり前だろ」


何言ってんだみたいな顔をしてるけどさ、実際に付き合ってくれるって素振りを見せてくれるまではちょっと不安だったんだからね。
一応はじめちゃんとはお付き合いをしている関係なはずなんだけどはじめちゃんから私に触れてくることは無い。
え、私とはじめちゃん付き合ってるよね?大丈夫だよね?


「みき?」
『ん?』
「どうしたんだよ、難しい顔してたぞ」
『はじめちゃんって私のこと好きだよね?』
「は?」


水族館に入る前に立ち止まってはじめちゃんへと問い掛けてみた。
浮かれてたけれどそういえば私ってはじめちゃんに好きだって言われてないよね?


『聞いてないもん』
「あのなぁ、付き合うってそういうことだろ?」
『はじめちゃんがどう思ってるか聞きたいし』
「みき、水族館止めになるぞ」
『それは困る!』
「んじゃ俺のことも困らせんなよ。ほら行くぞ」


たった一言が聞きたかっただけなのにはじめちゃんは言ってくれなかった。
テレ屋さんめ。いいけどさ、はじめちゃんがそういうことあっさり言えちゃうタイプじゃないのは分かってるけどさ。
一回くらい聞きたかったのになぁ。
あぁそういえば結局今でもそういう言葉はあんまり言ってくれないなぁ。


『じゃ手繋ぐ』
「迷子になったら困るしな」
『ならないってば!』
「お前初めての夏祭りで迷子になっただろ」
『いつの話をしてるのさ!?』
「小学校の時だろ?」


なんて懐かしい話を思い出してくれちゃったのか!
宮城に引っ越して初めての夏祭りにはじめちゃんとトオルちゃんと一緒に行った時だ。
ちょっとだけ周りの屋台に気を取られただけなのに気付いたら二人が居なくなっていた。
あの時は見付けてもらうまでわんわん泣いた気がする。


『懐かしいねぇ』
「夏祭りのたびに迷子じゃねぇか。高校の時だって」
『あ、そうそう迷子になった!』
「国見が先にお前を見付けて少しイライラしたんだからな」
『え?何で?』
「お前国見に運ばれてただろ」
『見てたの!?』
「たまたまな」
『あ、だから靴擦れ気付いたの?』
「まぁな」


まさかあれをはじめちゃんに見られてたとは!
あ、だからもしかして帰りに機嫌が悪かったの?
そっか、そういうことだったのか。


『てことはその辺から私のこと好きなの?』
「んーあの時は微妙なとこ。イライラした理由が分かんなくてまたイライラしてたからな」
『はじめちゃんお子ちゃまだったんだね』
「お前に言われたくねぇぞ」
『えへへ』
「今だから言える話な」
『うん、はじめちゃんありがとう!』


繋がれた手をゆらゆら揺らしながら水族館を巡る。
今までだってはじめちゃんと二人で出掛けたことはあったけど恋人同士になれたってだけでなんだか新鮮だ。


『はじめちゃん!マグロ!美味しそう!』
「水族館来て魚に美味しそうとか言ってやるなよ」
『でもあんなにいっぱい泳いでるよ!』
「まぁ確かに旨そうではある」
『今日の夕飯マグロにしよーっと』
「メシ食って帰らねぇの?」
『え、作るよ。外食したらお金かかるし』
「お前いい嫁になりそうだよな」
『はじめちゃんもいい旦那さんになれそうだよ!』


結局私のこの言葉には返事をせずに話を変えられてしまった。
そこはさ「じゃあ貰ってやるよ」とか言う所じゃないの?
続、テレ屋さんが発動しましたよ。
この頃ははじめちゃんの一挙一動にヤキモキさせられてばっかりだった気がする。
私が彼女じゃ無かったらフラれてるよはじめちゃん。


「GW合宿な」
『どこ行くのー?』
「東京の姉妹校のとこまで行くんだと」
『本格的だね』
「夕飯は任せたからな」
『じゃあ献立作っておこうかな』
「お前がマネージャーでかなり助かるわ」
『自慢の彼女でしょ?』
「そうだな」


東京にも姉妹校があるだなんてうちの大学結構規模が大きかったんだなぁ。
はじめちゃんもトオルちゃんも一緒だから楽しみだ!


「みき、国見とは仲直り出来たのか?」
『まだ』
「そうか」


はじめちゃんとのデートを堪能して帰って夜御飯を食べた後のことだった。
マグロのポキ丼にした余りのマグロをつまみにして二人でお酒を飲んでる時にはじめちゃんが急に言い出したのだ。
昼間にだって急に国見の話を出すからびっくりしたのに今日で二回目だよ?


『矢巾さんがしばらくはそっとしとけって』
「アイツが居たか」
『とりあえず影山も五色君もいるから大丈夫だって』
「早く仲直り出来るといいな」
『いきなりどうしたのさ』
「俺のせいで国見との仲こじれただろ」
『まぁそれはそうだけど』
「お前友達少ないからな。ごめんな」


まさかはじめちゃんが国見とのことで謝ってくるとは思ってなくてびっくりしてしまった。
確かにそれはそうだけどでも世の中仕方の無いことってあるしそもそも痛み分けをしたんだからそのうちどうにかなるとは思う。


「何でそんな顔してるんだよ」
『ちょっとびっくりした』
「これでもお前の友達奪った責任は感じてんだよ」
『私にとっては友達だったけど国見はそうじゃなかったからなぁ』
「恋愛感情入ってたにしろ友達は友達だろ。だから悪かったな」
『大丈夫だよ。今はまだ無理だろうけどきっと時間が解決するって矢巾さん言ってたし』
「ならいいけどよ。アイツも俺の後輩だからな」
『国見だってちゃんと分かってるよ』


矢巾さんが世話を焼いてるなら国見にだってそのうち可愛い彼女が出来るはずだ。
花巻さんが矢巾の紹介してくる女の子は良い子が多いって言ってたし。
うん、根拠は無いけれどきっとまた仲良くなれる日が来るはず。
それまではもう少しだけ我慢しよう。
今ははじめちゃんが居てくれるから大丈夫だ。


「んじゃそろそろ帰るわ俺」
『えっ』
「なんだよその反応」
『たまには泊まってもいいんだよはじめちゃん』
「バーカ。片付けしてさっさと寝ろ」
『本気だもん』
「また今度な」


私の頭にポンと手を乗せるとはじめちゃんはそのまま帰っていってしまった。
くそう、また流されちゃったし。
この1ヶ月私なりに頑張ってみたけれどはじめちゃんはなかなか私に触れてこない。
せいぜい手を繋ぐとかさっきみたいに頭を撫でてくれるくらいだ。
私が最後にキスしたの国見のままなんだけれど。
それが嫌だったとかではないけれど良かったわけでもなくて彼氏ならキスくらいしてくれたっていいんじゃなかろうか?


『ってことなんだよトオルちゃん』
「誰と電話ですか徹君」
「みきとだよー」
『あ、アヤさんもいるの?』
「みきちゃん久しぶりですー」
「綾さんもみきの話一緒に聞こうよ」
「洗い物終わったからいいですよ」


トオルちゃんの彼女の名前は七瀬綾と言う。
私より四個上のお姉さんだ。
おっとりとしていていつもとても優しい。
そしてトオルちゃんがベタ惚れしている。
私の悩みを聞いてもらおうとトオルちゃんに電話したらアヤさんも居てくれたらしい。
と言うか最初からアヤさんに電話すれば良かったかもしれない。


「岩ちゃんがねぇ」
『キスくらいいいと思うのに』
「うーん、奥手だからなぁ岩ちゃん」
「徹君、それ違いますよ」
『え?』
「えっ?」
「止まらなくなりそうで自制してるのかと」
「あーそっち?」
『ん?』
「そちらかと思いますよ。はじめさん真面目でしょうし」
「俺だって半年我慢しーまーしーたー!」
「でも付き合い始めて直ぐだったでしょう?」
「う」


止まらなくなるって何が?
二人は理解してるみたいだったけど私の頭の中にはハテナマークが沢山だ。


『あの』
「あ、みきには分かんなかったか」
『全然分かんない』
「キス以上のことをしたくなりそうだから我慢してるんだと思いますよ」
『へ?』
「岩ちゃんだって男の子だしねぇ」
『そういうこと?』
「はじめさんは結局大学入ってからも彼女居なかったんですよね?」
「みきのことがあったからたまに告白されても断ってたと思うよ」
「ですからそれでもいいのならみきちゃんから手を出してみてはどうでしょうか?」
「ちょ!?綾さん!?みきになんてこと教えるのさ!?」
「徹君だってはじめさんなら別にいいでしょう?」
「そうだけど!そうだけど!順序ってものが」
「モヤモヤするくらいならはじめさんに何でも伝えてみたほうがいいですよ。二人のことなんですからこれからは悩んでもはじめさんに話してあげてくださいね」
『うん、分かった』
「手を出す出さないの話は置いておいて俺もそれは綾さんの意見に賛成かな。岩ちゃんはみきの話ならちゃんと聞いてくれるよ」
「それにはじめさんも一番にみきちゃんから聞きたいはずですよ」
『そうかなぁ?』
「私だって徹君が悩んでるなら一番に話を聞いてあげたいです」
「綾さん、それ俺もだからね!」
「知ってますよ。そういうこと過去に無かったですか?」


そう言えば国見の彼女と揉めた時に言われたことがあった気がする。
そっか、はじめちゃんのことで悩んでるなら本人に伝えちゃえばいいのか。


『でも何かちょっと気恥ずかしいよ』
「付き合う前はあんなに押せ押せだったのになぁ」
「いきなり付き合うってなってもなかなか切り替えが難しいですよね。それってきっとはじめさんも一緒ですよ」
『あ、そういうこと?』
「だから気恥ずかしくてもきっかけ作り頑張ってくださいね」
「甘えて嫌がられたり」
「岩ちゃんが嫌がるわけないよ!」
「徹君がこう言い切ってるので大丈夫ですよ」
『分かった。頑張ってみる』
「スッキリしました?」
『はい、かなり!』
「それなら良かった」
『アヤさん東京のお土産何がいい?』
「合宿ですもんね。東京バナナ食べたいです」
『じゃあ楽しみにしててくださいね!』
「はい、気を付けて行ってきてくださいね」
『アヤさんもトオルちゃんもありがとう!』
「みきは俺達の可愛い可愛い妹だからね」
「話くらいいつだって聞きますよ」


そうか、私だって上手く甘えれないんだからそれははじめちゃんも一緒か。
外ではまだ大丈夫だけど二人きりになった途端難しくなるもんね。
けれどトオルちゃんとアヤさんに私から頑張れって言われたから次はもう少し自分から頑張ってみよう。


さて明日からまた一週間始まるから勉強も部活も恋愛もぜーんぶ頑張らないとな!
東京で合宿とか楽しみだ!


仲良しだったのに付き合った途端ぎこちなくなるのってあるあるだよね(笑)
岩ちゃんは岩ちゃんなりに責任を感じてた模様。
裏は書くか書かないかとっても迷っております。岩ちゃん上手に書けるかな?
でもまた童貞と処女だ(´・ω・`)
保留にしておきます!
2018/07/19

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