中学の入学式

あっと言う間に四年の月日が流れた。
二人の背中を追いかける毎日。
バレーボールをすることは直ぐに諦めたけど(運動はとことん苦手なのだ)可能な限り遊んで貰ってたと思う。
二人が中学生になってバレーボール部に入ってからは会うことも遊ぶことも小学生の時よりは少なくなって小学五年生六年生は寂しい思いをした。


トオルちゃんとはうちも隣だから時々会ってたけど。
はじめちゃんとは全然だった。
試合の応援に行った時ぐらいしか会えなかったと思う。


今日は北川第一中学の入学式だ。
トオルちゃんとはじめちゃんと同じ中学校だ。
2年我慢した!これから1年はまた二人と一緒に学校に通える!
そう思うだけでなんだかワクワクした。


「みき!学校行くよー」
『トオルちゃん!見てみて!似合う!』
「なんかまだ制服に着られてる感あるよね」
『可愛いとかないの!?』
「みきはいつだって可愛いよ」


トオルちゃんがうちまで呼びに来た。
返事をして居間から飛び出す。
玄関にいるトオルちゃんに制服姿を見せびらかした。
制服に着られてるとか酷い。


二人でお母さんへと挨拶をしてうちを出る。
はじめちゃんとの待ち合わせは直ぐそこだ。
最初のまがり角ではじめちゃんの姿を見つけて思わず駆け出した。


「ちょっと!みき!走ると転けるよ!」
『だいじょーぶ!はじめちゃーん!』


あ、はじめちゃんがこっちを振り向いたと思った瞬間に地面に躓いた。
トオルちゃんが言うことは大抵当たるのだ。
転けるなと思ったときには地面と壮大に喧嘩をしていた。


『ぎゃっ』
「お前、大丈夫か?相変わらずどんくせーな」
「岩ちゃん!そんなこといいから早くみきを起こしてあげてよ!」


地面と喧嘩をしてもほぼ負ける。
そんなことは分かっている。
でも運動音痴の私はこうやって地面に喧嘩を売るのは日常茶飯事だ。
後ろからトオルちゃんの慌てた声がする。


「おい、手貸してやるから。起きれるか?」
『うん、頑張る』
「頑張るってなんだよ、ほら」


はじめちゃんの手を取りなんとか立ち上がる。
あ、良かった。制服は無事だ。
膝も擦りむいたけど血は出ていない。
ぽんぽんと制服についた汚れをはじめちゃんが落としてくれた。


「みき!走ったら転けるって言ったでしょ」
『はじめちゃんが居たからつい』
「岩ちゃんのせいでみきが転けたんじゃん!」
「お前がちゃんと止めなかったせいだろ?」
『トオルちゃんのせいだね』
「二人とも酷いよ!」
『あ、入学式遅れちゃう!』
「及川は放ってさっさと行くか」
『そうする!』
「ちょ!二人とも待ってよー」


小学生の時と変わらない当校風景だ。
久々で嬉しくてテンションが上がる。


『トオルちゃん、マネージャーってなれるの?』
「へ?」
「はぁ?」
『だーかーらーバレー部のマネージャー!』
「中学で部活にマネージャーとか聞いたことないよねぇ」
「どこの部活でも聞いたことねぇな」
『私、マネージャーやるから』
「お前、今俺たちの話聞いてた?」
「みきそれは多分無理だよ」
『嫌だ、絶対にやる。決めてたんだから』


二人は難しい顔をして私の提案を否定する。
否定されるのは分かってた。
お母さんに聞いてみても無理じゃないかしらって言ってたし。
でもそのために二人と同じ中学に入ったのだ。
そうじゃなかったら私立に行っている。


『私、絶対にバレー部のマネージャーなるから。何がなんでも絶対にやるから』


未だに難しそうな顔をしてる二人を交互に見るとにししと笑っておいた。


「これは何か企んでる顔だね」
「お、おう。久々に見たわ」
『二人には迷惑かけないから。大丈夫大丈夫!』


私の顔を見て二人が少し心配そうな顔をしたけど気にはしない。
どうしても二人の近くに居たかったのだ。
1年しかないのだから。


前例がないからと断られるに決まってる。
だったらその前例を作っちゃえばいいのだ。


中学校生活がこれから楽しみだった。

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