太陽と月と影と山ぷらす私

季節は巡る。気付いたらもう二月だ。
ちなみに春高バレーは烏野に再び負けた。
影山達強くなりすぎ。
あの変人速攻ますますヤバくなってるし。
まぁ全国大会で優勝したから許してあげよう。


「で、何しに来たの」
『ツッキー!冷たい!』
「ツッキーって呼ばないでって何回言ったら分かるの?」
『受験勉強の合間に時間を作ってバレンタインのチョコレートを届けにきたんじゃん!』
「へえ、君はまだ大学決まってないんだね」
『まさか!』
「香坂さん、俺達全員推薦組だよ」
『ずるーい!』
「スポーツ推薦貰ったもんな」


忙しい受験勉強の合間に影山の分とついでにこの三年間で仲良くなった三人の分も用意したのだ。ぷらすやっちゃんの分も。
わざわざ烏野まで持ってきたって言うのにツッキーは相変わらずメイワク顔をしている。
そりゃ全国まで行けば推薦貰えるよね!
結局優勝しちゃいましたもんね!
四人とも推薦とかずるくないですか?


『ずるい』
「マネージャーじゃ推薦なんて貰えないもんね」
『やっちゃんは?』
「谷地さんも一般入試組じゃないかな?」
「もう帰ったけどね」


この気持ちをわかりあいたかったのに!
既に帰っちゃってたのか。


『悲しい。やっちゃんにも連絡しとけば良かった』
「谷地さんの分もあるの?」
『そりゃ勿論。山口明日渡しといてくれる?』
「うん、いいよ」
『じゃあはい!どうぞ』
「ありがとう!」
『はい日向のね』
「わ!サンキュ!」
『んで影山の分ね』
「おう」
『はい、ツッキー』
「毒とか入ってない?」
『影山が毒味するから見てて』


山口と日向が渡したチョコレートを丁寧にしまう隣で影山は早速チョコを食べている。
相変わらずだよねぇ。


「どう王様?」
「普通にコイツのお菓子は旨いぞ月島」
「へえ意外だよね」
『ツッキーは相変わらずツンツン具合が凄まじいですね』
「これが月島だからなぁ」
「つーか岩泉さんは?いいのか?」
『何が?』
「これ」


チョコレートブラウニーを指差して影山が言った。
いいのかって何がいいのか?
言葉足らず過ぎません?
キョトンと首を傾げてこっちを見てるけど私がキョトンだよキョトン!


「岩泉さんには渡したのかって意味じゃない?」
『ちゃーんと送りましたとも!本当は渡しに行きたかったけど勉強に集中しろと言われちゃったから』
「あー」
「それで烏野まで来て遊んでたら結局岩泉さんに怒られちゃわない?」
『……別に』
「あ、香坂さん目が泳いでる!」
『日向!止めて!』
「日向が気付くってことは僕も山口も気付いてるからね」
『にゃんですと!』


山口の言うことは当たっている。
学校で国見と金田一と日菜ちゃんにチョコレートを渡すのとは勝手が違う。
バレたら怒られる気がする。


「香坂」
『何、影山』
「電話」
『は?誰から?』
「岩泉さんから」
『はぁ!?』
「さすが王様、やることが早いよね」
「そこで岩泉さんに電話するかなぁ」
「違え。香坂からチョコレート貰ったお礼を岩泉さんにしたら電話かかってきたんだって」
「香坂さん、早く電話出ないと!」
『うん』


何故にチョコレートのお礼をはじめちゃんにしたんだ!
はじめちゃんは別に私の保護者じゃないんだぞ!
山口に急かされたので影山からスマホを受け取った。


『もしもーし』
「お前なぁ。何やってんだ」
『チョコレートを配りに』
「伊達校にまで行ってねえよな?」
『さすがに行きません!』
「受験生だろ」
『はい』
「本当にうちの隣の部屋に引っ越してくんだろ?」
『それはもう!お母さんもはじめ君が隣なら安心ねって言ってくれたし!』
「落ちたら元も子もねえだろが」
『そうですね』
「ちゃんと勉強しろ。んで第一志望にちゃんと受かれよ」
『はい!』
「受かったら好きなとこ連れてってやるよ」
『ほんとに?』
「約束な」


「じゃあな」と言われて電話が切れた。
好きなとこに連れてってくれるってはじめちゃんが言った!
これは本気で第一志望に受からなくちゃいけない。
はじめちゃんの大学の近くの学校でもいいかなとか思ってたけど本気出さなくちゃ!


『ありがと影山』
「怒られなかったみたいだね」
「ニヤニヤ気持ち悪いんだけど」
「つーか何で岩泉さんにお礼言ったんだよ。関係無いだろ」
「岩泉さんと付き合ってんじゃねーの?」
『「えっ!」』
「まだ付き合ってないでしょ。どこをどう見たのさ」
「国見と付き合ってんじゃねーの?」
「日向は相変わらずそっち方面疎いなぁ」
『何故に国見』
「金田一は彼女いるじゃん」


影山にしろ日向にしろ見当違いもいいとこだ。
はじめちゃんとはまだ付き合っていない。
大学受かったらきっと付き合ってもらえるもん。
国見とはお互いにそういう関係じゃない。
それをぜーんぶ説明した。


「本当に付き合ってもらえるのそれ」
『はじめちゃんは無責任なことしないもん』
「確かに岩泉さんはしなそう」
「及川さんならありそうだけど」
「及川さんもコイツにはそんなことしないだろ」
『影山って何気にトオルちゃんのこと好きだよね』
「は?普通に尊敬するだろ。こないだ白鳥沢に試合で勝ってたぞ」


あ、そうか。
影山から見たらトオルちゃんはずっと尊敬すべき先輩なのか。
それに比べるとトオルちゃんは影山に対してちょっとひねくれてたけれども。
春高バレーの決勝はじめちゃんと見に行ってたもんなぁ。


『お腹空いた。どっか寄って帰ろ?』
「さっき岩泉さんに怒られたの忘れたのかな?」
「帰って勉強する流れだったよね?」
『だってお腹空いたんだもん!それにもう烏野に遊びに来ることないよ!最後だよ!』
「別に卒業してからも遊べばいいだろ?」
「僕は東京だけどね」
「おれ関西!」
『ほら!後制服で会うのも最後だよ!』
「おかげで僕達ずーっと注目浴びてるけどね」
「青城の制服目立つんだよ」
「寒いのにアイツら校門で何してんだよみたいな目で見られてたね」
『こんな寒い日はラーメンだよね!あ、影山はじめちゃんには内緒だよ!』
「分かった」
「おれもラーメン賛成ー!」
「ツッキー行こうよ」
『そうだよ行こうよツッキー』
「僕も寒かったしね。ラーメンくらいならいいよ」


やったぜ!ついにツッキーが首を縦に振ったぜ!
ってことで五人でラーメンを食べに行くことになった。
こっちでラーメン食べることって無いから新鮮だ。


「で、どこに連れてってもらうんだ?」
『悩んでるんだよねーディズニーランドは遠すぎるし』
「それはさすがに無理でしょ」
『そうなんだよねぇ』
「先に受かることのが大事だろ」
『多分大丈夫だもん』
「入試当日までは気を抜かない方がいいよ」
「インフルエンザも流行ってるからね」
「水族館にでも連れてってもらえば?」
「王様、その話はもう終わったよ」
「何でだよ」
「おっちゃん!おれ替え玉追加ね!」
『日向は自由だな』


でも水族館ははじめちゃんと一緒に行ったことない気がする。
影山の案に乗せてもらうことにしよう。
ラーメンを食べた後で嫌がるツッキーを引っ張って一枚だけプリクラに付き合ってもらった。
金田一と国見とは撮ったことあるし影山もあるけどツッキー達とは無かったからね。
制服姿で会えるのは最後だ。
意外にも山口が私の提案に乗ってくれたからそこそこスムーズに撮れた気がする。
出来上がったプリクラにはいつぞやの不機嫌な国見ばりに機嫌の悪そうなツッキーが写っていた。


『ツッキーって国見に似てるよね』
「そうかぁ?」
「不機嫌顔は二人ともよくするよね」
「似てないだろ。国見は月島程性格悪くねえし」
「王様、それって僕が性格悪いってこと?」
「良いか悪いかって言ったらなぁ」
「ツッキーだって優しいよ!」
『意地悪なとことか似てる』
「似てないよ。僕あんなに一途じゃないし」
『ん?』
「何でもない。いい加減に帰りなよ」
『四人とも今日はありがと!』
「落ちたら岩泉さんに怒られるから死ぬ気で頑張れよ!」
「僕も怒られたくないからね」
「またみんなで遊ぼうなー!」
「香坂さん気をつけてね!」
『はーい!ってか影山は方向一緒じゃん』
「そうだな」
「ちゃんと送ってやれよ!」
「分かってるよ。いちいち言うなって」
『じゃあ三人ともまたねー』


三人にさよならして影山と帰路を歩く。
昔はスタスタ歩くことが多かったのに私の歩幅に合わせておる!
会話は相変わらず天然さんだけどこの気遣い誰から学んだんだろ?
爽やか先輩かな?
知らない影山の成長を知れてなんだか嬉しかった。


「まだ付き合ってなかったんだな」
『ずーっと好きなのにねえ』
「俺てっきり中学から付き合ってると思ってた」
『何その長い勘違い。まぁでももうすぐだよ』
「その前に受験な」
『分かってるってば!』
「頑張れよ」
『影山は白鳥沢だっけ?』
「そうだな」
『またライバルだね』
「おう」


てことは牛若?だっけ?牛若さんにトスをあげることになるのか。
またもやはじめちゃん達の壁になりそうだなぁ。
まぁ去年は勝ってるしそうやって切磋琢磨するのがいいんだよねきっと。
影山は本当に家の前まで送ってくれた。
みんなに頑張れって言われた気がする。
はじめちゃんとも約束したしラストスパートで勉強頑張ろう。
これで落ちたら本当に愛想を尽かされてしまう。


結局影山がTwitterにラーメンを食べに行ったことを投稿したせいでトオルちゃん経由ではじめちゃんにバレて次の日の夜に怒られた。
確かに言ってないよ。言ってないけど私の名前も一言も書いて無いけど写メに写ってたら何の意味も無いよ影山!


がっと話を進める予定だったのに烏野組とも絡ませたくて書いてしまったお話。高校編は次かその次くらいで終わる予定です!
2018/05/05

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