国見と彼女とわたし

国見の彼女は独占欲が強い。らしい。
この一ヶ月でそれが嫌って程分かった。
国見に言われたし松川さんにも言われたから近寄らなかったよ!
それでも彼女が嫉妬深いのは分かった。


まず彼女は私が国見と話すのを良しとしない。
いつも途中で話を打ち切られてしまうのだ。
国見とはただの友達なんだけどな。
彼女からしたらそんなのは関係無いらしい。
穏やかな日菜子ちゃんを見習ってほしいよ本当に。
おかげで私は大事な友達を一人失いつつあるのだ。


『国見とクラスで全然話せてない』
「あれは仕方無いよ香坂」
『仕方無くなーいー!』
「部活で話せるから諦めなよ」
『友達が減るみたいじゃん』
「や、別に減らないでしょ」
『納得いかない』
「香坂、だからって国見の彼女に話しかけにいくのは止めなよ」
『何故分かった!?』
「それだけは俺も反対だからな」


金田一がいつになく真剣にそうやって言うから首を縦に振るしかなかった。
なんだよなんだよ。みんなしてどうしてそんなこと言うのさ。
国見の彼女がどうしてあんなに独占欲が強いのか気になったのに。
みんなが反対したから聞けないじゃないか。


「で、気になったから俺に電話してきたの?」
『はい、矢巾さんなら分かるかなぁと』
「まぁ、多分な」
『ではお願いします』
「香坂に分かるように説明は出来ないかも」
『えぇ』
「こっちも色々理由があるんだって」
『なんですかそれー』
「ナイショ」


はじめちゃんにこの手の話をしても有効な解決策をくれるとは思えなかったので矢巾さんに連絡をしてみた。
直ぐに電話をかけてくれたから良かった。
今日は彼女と一緒に居ないらしい。


『内緒ってずるーい』
「いいんだって。んで何で国見の彼女が独占欲が強いのかって話だったよな?」
『そうなんですよ。しかも何故か私にだけ一番厳しい』
「他の女子とは話してるってこと?」
『あんまり良い顔はしてないけど邪魔とかはしてないですもん』
「単にさ」
『はい』
「ヤキモチなんじゃね?」
『は?』
「まぁお前はそう思うよな」
『だって別に国見とはそういう関係じゃないし』
「そうじゃなくともお前と国見って中学から一緒だろ?」
『そうです』
「それって高校から出逢った人間にはどう頑張っても埋めようの無い差だよな」
『金田一の彼女は仲良くしてくれたよ?』
「性格ってのがあるだろうが」
『そうだけどそんな心配することないのに』
「女の勘だろ」
『へ?』
「まぁ全員から言われてるならちゃんと守れよ。俺も金田一達の意見に賛成な」
『はーい』
「またいつでも連絡してこいよ」
『ありがとうございました』


日菜子ちゃんは全然そんなことないのにな。
むしろお昼だって最近は三人で食べている。
金田一とお似合いのかなり良いこなのだ。
国見は彼女のどこが好きなんだろう?
やっぱり美人さんだから顔なのかな?
でも最近イライラしてること多い気がするからなぁ。
ストレス溜まってそうだよなぁ。


『国見おはよ!』
「はよ」
『眠そうだねえ』
「朝は苦手なんだよ」
『早くおーきーてー』
「起きてるから大きい声出すなよ」
『あ、ごめん』
「何でそんな機嫌良いんだよ」
『最近国見と話す時間あんまり無いからさ。朝練前に会えるとは運が良かったよね!』
「あーね」
『少しは国見だって喜びなよ!』
「何でだよ」
『当たり前のことが当たり前じゃなくなってちょっと寂しかったんだぞ!』
「馬鹿じゃないの」
『あ!ちょっと!置いてかないでよ!』


私の歩幅に合わせることなくスタスタと歩いて行ってしまう。
もう!馬鹿とか急に酷いよ!
前を歩いてる国見が小さく「サンキュ」と呟いた言葉は私に届くことは無かった。


「香坂、影山と遊びに行くのいつにする?」
『烏野も今は月曜日が練習休みだから月曜のどっかでいいんじゃないの?』
「確かにな」
「俺、パス」
『なんですと!』
「彼女が煩い」
「あー」
『友達との付き合いもたまにはあるんだぞ!』
「香坂」
『たまにはこっち優先してくれたっていいじゃないか!』
「ちょっと香坂言い過ぎだよ」
『何であのこの言いなりなのさ国見!』
「俺だって色々あるんだよ。分かれよ」


つい勢いで言い過ぎてしまった。
後悔したってきっと遅い。
でも四人で定期的に集まろうってのは前から決まっていてそれすら来ないって国見が言うから我慢出来なかったんだ。
国見に怒られてしまうかもしれないと思って覚悟したのに返ってきた言葉は意外にも冷静だった。


『ごめん。でも前はそんなこと無かったよ』
「そうだな」
『最近イライラしてること多いし』
「香坂、駄目だって」
『前だったら』
「香坂、俺の彼女に対して口出すなよ」
『ごめん。じゃあ三人で遊びに行ってくるね』


国見からこんなにハッキリと拒絶されたのは初めてだと思う。
少しだけそれがショックでそこで話を打ち切って二人から離れることにした。
そろそろ部活の休憩も終わるから丁度良かったかもしれない。
何で上手くいかないんだろう。
金田一とは日菜子ちゃんのことを含めても仲良く出来てるのに国見とは正反対だ。
どんどん関係が悪化してるような気がする。
駄目だ。悪い方向に行ったら絶対に駄目。
部活でしか話せないんだから仲違いしてる場合じゃないもん。
部活が終わったらちゃんと国見に謝ろう。


『てことで謝りにきました私。肉まんでも一緒に食べませんか?』
「金田一の分も奢ってよ香坂」
「や、俺は別に」
『ありがとう国見!』


部活が終わって部員の自主練に付き合って後片づけを急いで終わらして帰る準備をして二人を出待ちした。
先に帰られちゃったら意味無いからかなりかなり急いだよ。
おかげで息が上がってるけどそれを見て国見は表情を和らげた。
良かった、怒ってなかったみたいだ。


「さっきは傷付いた顔してたのにね」
『ん?何が?』
「国見に冷たくされてショック受けてたろ」
『あぁあれね』
「今はもう機嫌良いんだな」
『私が悪かったし。それにさ勿体無いじゃん』
「「?」」
『楽しいことしてたいからさ』
「そういうことね」
「お前ってほんと単純だよな」
『金田一!たまに国見みたいに辛辣なこと言うの止めて!泣いちゃうよ!』
「嘘泣きでしょ」
『国見まで!?』
「国見までって国見は昔からこんな感じだろ」
『すっかり私だけが弄られキャラに』
「影山がいるだろ」
「だから大丈夫だよ」


影山の場合は反応が薄いからつまんないってこないだ二人で話してたの聞いたよ私!
でも今日はもう国見はイライラしてないみたいだった。
やっぱりぎくしゃくするのは嫌だもんね。
話せる機会は昔より減ったけど話せる時に楽しく話せたら別に私達の関係は変わらないんだと思う。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -