出逢い

出逢いはまだまだ小さい頃。確か小学三年生になる年の春休みだ。
引っ越しの挨拶で母方のいとこのトオルちゃんのうちに行った時。
はじめちゃんとはそこで出逢った。


ただ母親の付き添いで来ただけ。
久々に会う二つ上のいとこはこちらに興味津々だったが人見知りだった自分はその視線に恥ずかしくなり母の背中に隠れていた。
久々に会うと言われても自分には覚えがないくらい小さな時のことなのだ。


「徹、お母さん達まだ話があるからみきちゃんと遊んであげて。今日はバレーボールのクラブもお休みでしょ」
「分かった。もうすぐ岩ちゃん来るから公園に行ってくる」
「ほら、みき。徹君が遊んでくれるって」
『やだ』
「徹君が遊んでくれるって言ってくれるんだから行ってきなさい」


母親に強制的にうちから出されたと思う。
勿論隣にはトオルちゃん。
ほぼ知らないと言っても過言ではない人と二人きりにされて半泣きだった。


「及川それ誰だ?」
「あ、岩ちゃん?いとこだって!」


見知らぬ環境に親しくないいとこのトオルちゃん。
そこにもう1つの見知らぬ声。
私は咄嗟にトオルちゃんの背中に隠れた。
親しくないとはいえ肉親だ。
全く知らない人よりは血の繋がりを本能的に取ったのだと思う。


「おいチビスケ、名前は?」
「名前はねー」
「お前に聞いてないから少し黙れ」
「えぇ、酷いよ岩ちゃん」
「チビスケ、名前くらい言えるだろ?ちゃんと自分で言え」


言ってることは凄く横暴だったと思う。
でも言い方は凄く優しかった。
そっとトオルちゃんの背中から顔を出す。
はじめちゃんと視線が交わった。


「みき。香坂みきです」


おずおずと自分の名前を告げた。
そしたらはじめちゃんはよしと言って頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
それがなんだか嬉しくてお兄ちゃんが居たらこんな感じなのかなと漠然と思った。
それから二人は私を連れて公園で遊んでくれたと思う。
今思うと小学五年生にもなる男の子に小学三年生の女の子と遊ばせるのは無理があると思う。
でも二人はそんなことを気にするでもなく遊んでくれた。
バレーボールを教えてもらっただけだけど。
運動音痴の私にバレーボールをやらせるなんて後にも先にもあの二人だけだったと思う。


それがはじめちゃんとの最初の出逢い。
それからは二人の後ろを追いかける毎日だった。

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